圧電式力センサの設置に関する5つのルール
工業用のアプリケーションにおいて、 圧電式力センサ(フォースセンサ) は、非常に優れた特長を持っており様々な分野で使用できます。
- 非常にコンパクト
- 圧電式計測チェーン(センサ・ケーブル・アンプから構成)は(適切に設置された場合)過負荷に対する許容値が極めて高く、また負荷による変位量はほぼ無視できる
- 高剛性なのでダイナミック計測に最適
Piezoelectric force transducer: 5 rules for installation and mounting
工業用のアプリケーションにおいて、 圧電式力センサ(フォースセンサ) は、非常に優れた特長を持っており様々な分野で使用できます。
ワッシャ型圧電式力センサCFW は、非常に薄型ですが、プリストレスがかかっておらず取り付けの際にはプリストレスが必要です。
このワッシャ型圧電式力センサは取り付けた状態で校正をする必要があります。
ワッシャ型圧電式力センサのプリストレスは、センサの直線性と構造的な耐久性を確保するために必要です。
このプリストレスは、別の機械的構成要素(エレメント)が力センサに並行して取り付けられることを意味します。
ワッシャ型圧電式力センサには、少なくとも設置時に公称(定格)力の10%のプリストレスをかけることを推奨します。ワッシャ型圧電式力センサ自身は決められた初期負荷で使用することができます。
計測負荷の一部はプリストレス・エレメントにより分岐されています。プリストレスとフォースシャント(力の分岐)は設置状況の影響を受けるため、ワッシャ型圧電式力センサは設置後に校正を行うことが必要です(センサの出力信号を既知の力に対して校正)。計測結果の精度は、主に校正の精度に依存します。
圧電式力センサのチャージ出力は、チャージアンプに入力され電圧値に変換されます。
圧電式力センサは、動的な計測用途に最適です(例:ゼロ点に依存しない計測)。
圧電式力計測チェーンのドリフトはとても小さく、精度への影響はありません。
チャージアンプのブロック図
ドリフトはチャージアンプから発生します。取り付けと接続が正しく行われていれば、センサ自体はドリフトしません。
計測チェーンの最大ドリフト値は、センサの材料にクォーツが使用されている場合は0.1 pC/s または 25 mN/s で、リン酸ガリウムが使用されている場合は 13 mN/s です。
ドリフトを極力小さくするために、次の2点に留意してください。
1. チャージアンプのウォームアップ
チャージアンプは、少なくとも計測開始の1時間前には動作させてください。
2. コネクタ接続部は清潔に保つ
センサとチャージアンプ間の絶縁抵抗が低くなりすぎると、計測チェーンから電荷が放電されます。圧電式力計測チェーンのドリフトを極力小さく維持するためには、常に全てのソケットを清潔に保つことが必要です。
必要な絶縁抵抗を下げることになるので、コンタクト面を手で触ることの無いようにご注意ください。
更に、センサ、チャージアンプの保護キャップ(標準添付品)は接続するまではずさないようにしてください。はずす場合は保護キャップを元に戻してください。
圧電式力センサは高品質な同軸ケーブルでチャージアンプと接続されている必要があります。この要件を満たすには、HBMのケーブル1-KAB143/3 (発注コード)をご使用ください。この種のケーブルは修理できないので、破損している場合は取り替えてください。
もし、計測チェーンのケーブルが常に接続されており、センサも常に保護キャップで覆われていれば、基本的に接続不良は発生しません。
注意していてもソケットが汚れてしまう場合があり、その際は次のような手順で洗浄できます。
ケーブルプラグは洗浄できないので、ケーブルが汚れてしまった時などは、汚染されていないものと交換してください。
ひずみゲージの貼付ポイントの洗浄に使用されるHBM クリーニング剤RMS1 は、圧電式力センサの洗浄には適さないので、ご注意ください。
出力特性に対する温度の影響:
圧電式力センサの感度に対する温度の影響は0.2% / 10K と非常に小さく、ほとんどのアプリケーションにおいては無視できるレベルです。
温度変化は熱負荷となります。 加えて、プリストレスを行うエレメントの係数Eも温度に依存します。
重要なのは出力信号は温度が変化した場合にのみ変動するということです。静的状況では電荷は発生しないので、温度による影響も起こりません。
よって以下のことを遵守すれば、温度影響は最小化できます。
ドリフトと温度変化による影響はとても小さく、特に計測時間が数分といった長い時間で比較的大きな力を計測する場合は、計測精度への影響はありません。
圧電式力センサにおいて、計測素子は力のかかる方向に沿って配置されます。計測素子(クォーツまたはGaPO4)は、想定できる最大の垂直負荷で設計されています。
センサに曲げモーメントがかかると、素子の片側により大きな負荷がかかり反対側は解放されるので、センサの過負荷として現れる可能性があります。
最大機械負荷は、素子の曲げモーメントによる負荷と計測軸方向の負荷応力の和になります。最大許容表面圧は、いかなる状況においても仕様値を超えないように注意してください。
出力信号は圧電素子のセンサの公称(定格)力に依存しないので、過負荷を避けるためにより大きい定格のセンサを選択できます。次のグラフは垂直応力と最大許容曲げモーメントの関係を示しています。最大許容曲げモーメントは、フォースワッシャの垂直応力が定格の50%であるときに許容されます。
もし曲げモーメントにより横力が発生すれば、最大許容値は小さくなります。
曲げモーメントによる計測誤差は、素子の片側にかかる高い応力が、その反対側の小さい応力により補正されるので、小さく保たれます。
もし、ワッシャ(1-CFW/50kN)に曲げモーメント100Nmの負荷をかけると、-2.3N の出力信号が発生します。最大横力はデータシートをご参照ください。
圧電式力計測チェーンは、センサ、チャージアンプ、接続ケーブルで構成されています。
もし計測されるべき最大力がわかっている場合は、CMAシリーズのアナログチャージアンプを選択することも可能です。
HBMのデジタルチャージアンプCMD600は、計測範囲を自由に選択できます。さらに、ストリップ・チャート、計測値の保存、ピーク値/リミット値、計測範囲の自動ティーチイン(„Sensorteach function“) などの機能が追加されています。
出力信号が定格負荷に依存しないので、過負荷の最大許容値と構造上の要件に従いセンサを設計できます。
CMD600は1台で全ての計測範囲をカバーでき、特に指定が必要なオプションはありません。