風力タービンロータープレード用の損傷を早期検出

風力タービンロータープレード用の損傷の可能性を早期に検出して経済的損失を最小限に抑えるためには、適切なセンサ技術を採用する必要があります。

センサは、厳しい設置環境に耐えるだけでなく、常に利用可能でなければなりません。このセンサ技術をサポートする評価システムは、まず構造体の重要部分に発生した損傷をできるだけ早期に検知し、次にその損傷箇所を明瞭に表示する必要があります。こうした構造体へルスモニタリング(SHM)システムにとって間違いは厳禁で、間違いが起こればシステムの目的が達成できなくなります。

近年ドイツにおいては風力発電の急速な普及がすすんでおり、ドイツ連邦政府が目指している国のエネルギーの30%を2020年までに再生可能エネルギーで賄うという目標に近づいています。しかし風カタービンのローターブレードはすでに長さ60mを超えており、このブレード部分が風カタービンの性能のカギを握っています。コストを節減して効率性をさらに改善するため、より小さなブレードの設計についても継続的な最適化が行われています。風力タービンのローターブレード製造は、ほとんど自動化されておらず、ロータブレード製造後に、仕様上の製造不良や誤差の一部が特定されるだけでした。今日までの風力発電の歴史の中で、現場で使用後に構造的損傷が初めて発見され、その原因が製造時にまでさかのぼることができるケースがありました。適切なセンサ技術により、十分に早い段階で損傷を検出し、経済的影響を最小限に抑える必要があります。センサは、厳しい設置環境に耐えるだけでなく、常に利用可能でなければなりません。このセンサ技術をサポートする評価システムは、まず構造体の重要部分に発生した損傷をできるだけ早期に検知し、損傷箇所を明瞭に表示する必要があります。こうした構造体へルスモニタリング(SHM)システムにとって間違いは厳禁で、間違いが起こればシステムの目的が達成できなくなります。

ローターブレード用の新しい計測技術

口ーターブレードに使用する計測技術は、多くの厳しい要件を満たす必要があり、基本的な要件だけでも、短時間で大きく変化する温度や湿度、センサにかかる極端に大きな動的機械ストレス、落雷を受けやすい設置環境などがあります。こうした困難な条件にもかかわらず、長期にわたる稼働期間中も計測の不確実性は最小限に抑えることが当然であると考えられています。

たわみセンサ

特別開発のたわみセンサは、ローターブレードや長く延長された構造体での使用に適していると思われます。このセンサは、落雷による影響を全く受けないように設計されています。落雷は、たとえ構造体に損傷を与えなくても、口ーターブレードに取り付けた一般的なセンサは大きな損傷を受けてしまいます。センサは、ブレードの製造時に取り付けられる場合も、また既設のブレードに後付けされる場合も、同様に図1に示した動作原理を使用します。ここでは、グラスファイバ強化プラスチック(GRP)製のワイヤが、2つの固定ポイント間に張ってあります。一方の固定ポイントはブレードの内部にあって、実際の「計測ポイント」(パッシブセンサユニット)を形成して、もう一方の固定ポイントは、ブレードの付け根の部分にあって「計測するポイント」(アクティブセンサユニット)を形成します。図1は、ブレードのメインリンクが、たわみセンサの取り付け箇所として理想的であることを示しています。パッシブセンサユニットの設置個所におけるブレード運動の大きさにより、アクティブセンサユニットでのGRPワイヤの角度が変化します。

この角度の変化は直行配列された2台の力センサによってたわみ信号に変換されます[1]。このシステム概観は図2に示されています。センサの感度はワイヤの張力によって規定されており、この張力は機械式パネの働きで一定に保持されています。GRP製のパッチはリンクにラミネート加工されており、図3と4に示すように、センサはパッシブ側とアクティブ側の両端に取り付けられています。

図3: たわみセンサのアクティブセンサユニット 図4: ブレード内の固定場所(計測ポイント)

アクティブユニットはローターのハブエリアにしっかりと密閉されているため、十分な落雷保護が確保されています。これ以外のブレード内センサ部品はすべて非金属なので、落雷の危険性はありません。アクティブセンサユニットからパッシブセンサユニットまでの距離が20mで、ワイヤの張力が300Nで一定している場合、たわみに関連した特性値は右下のようになります。


図5: 計測用電子機器を取り付けたHBMたわみセンサ
 
  • 非直線性: < 0.1%

  • センサの温度定数

  • ゼロ信号 (TK0): < 3*10-5/K
  • センサの温度定数

  • 感度 (TKC): < 3*10-5/K
  • 感度: センサ長20mあたり20μm

  • Ÿ計測範囲: ±200mm

  • 分解能: 1:104

センサの評価エレクトロニクスも、超長期間の安定性を確保できる要件を満たしており、またEMC電磁波耐性に関しても対応する保護レベルを保持しています。図5に見られるように、これらの部品は、たわみセンサ内に直接取り付けられています。デジタルセンサのエレクトロニクスと無線データ通信システムとの間の信号接続にはデジタルインターフェイスを使用しており、最新の基準に適合しています。

ひずみセンサ技術

ブレードの構造的な健全性を評価する第2番目の入力量は、「ひずみ」、またはそこから派生した機械的ストレスです。この種のストレス解析試験には、ここ何十年の間、ひずみゲージ(SG)が常に必要不可欠なツールでした。

しかし光ファイバ式ひずみゲージは、ファイバ複合材料のローターブレードでの使用に非常に適しています。その理由は、電子式のひずみゲージと比較して、光学方式であるためEMCや高電圧の影響に対する耐性が非常に優れており、その疲労強度と耐久性は、ローターブレードが受けるひずみレベルと負荷サイクルの回数(損傷の蓄積)の影響に十分耐える能力を持っています。

光ファイバ技術における大きな技術的進歩は、特に遠隔通信上のニーズに後押しされたものですが、微細構造向けの光学センサの開発も進んでいます。いわゆるブラッググレーティングは、結晶ファイバの中核において屈折の光学的指標が周期的に変動する領域であり、外的な負荷による影響を受けるとその波長特性が変化します[2]。その様子を図6のグラフに示します。測定に使用されるブラッググレーティングは、ひずみの結果として、グレーティング(格子)の部分で反射されるスペクトルの波長を変化させます。

図7: 光学式線形ひずみゲージおよび光学式ロゼット

光ファイバーは、センサエレメントとしての役割に加えて、センサ信号用の伝送媒体としての役割も同時に果たしているので、ユーザーにとっては、設置にかかる費用、堅牢性、信頼性の面で追加的なメリットがあります。市販の光学ひずみゲージを図7に示します[4]。

以下で説明するSHMシステムは、8個の光ファイバ式ひずみセンサ(4個の温度補正)と2個のたわみセンサからなるセンサネットワークを使用しています。信号解析にはハイブリッド計測システム[4]を使用していますが、これはパケット無線システムによってマスタ/スレーブの原理でネットワークステーションに接続されています。このため、インターネット接続を計測データの多値解析用として使用することが可能となります。

損傷にたいする早期警報

損傷の早期警報システムの性能に関する要求レベルは、そこで使用する計測技術と同様に、非常に高いのが理想です。基本的にいかなる誤報も許されないからです。それが原因で修理や保守作業のために発電を停止することは、経済的損失になるので避けるべきです。システムはまた、損傷に対処するのに十分な時間を、作業者に与える必要があります。これは、損傷の可能性が十分に初期段階で検出されされなければならないことを意味しています。発電を直ちにシャットダウンすべきか、あるいは監視を続ける時間がまだあるのかを判断する必要があります。ここで提示された損傷の早期警告は、総合的なSHM方式を使用します。

ハノーバーのライプニッツ大学の構造分析学部(ISD)のステファン・ツェルブスト氏は、「光ファイバ式ひずみゲージは、電子式のひずみゲージと比較すると疲労強度の点で非常に優れている」と述べています。

これは、構造の全体的な状態を検知するのに、ローターブレード全体を最小限の数のセンサで監視できることを意味しています。この場合、センサはホットスポットモニターとしてではなく、グループとして一緒に作用するものと見なされます[7, 8]。ここで、「比例方式」が有効となります。この方法では、最大振動速度と最大動ひずみ(応力)が固有振動時に比例することを利用します[6]。

ブレード構造体上の規定された位置で励起される固有振動の方向に従って、これら2つの相互に関連した計測量が検出・比較されます。この場合、振動速度の大きさは、たわみ信号と区別されます。損傷を受けていない構造体から検出された基準定数「PSystem」を基準として、新しく計測された「PSystem」比例定数は常に比較されます。観測された比例定数が、その開始レベルから恒常的に離れている場合、損傷が始まっていることを示します。「PSystem」比例定数は、材料特性、保管条件、断面の形状など、構造体のすべての特性を含むシステム定数です。したがってこの定数は、損傷を判断する指標として非常に優れています。

損傷検知アプリケーションにおける数値シミュレーション

ローターブレードタイプの数値モデルは、疲労試験中に発生する可能性がある様々な典型的な損傷パターンを考慮しています。前述のように接着による接合部の損傷は、極端に大きな負荷が長期間かけられた結果、起きることがほぼ確実視されています。多くの新型ローターブレードの基本的な構造を見ると、いわゆる「ブラインド接着ジョイント (blind adhesive joints)」が、損傷の可能性が最も高い場所となっています。これは例えば、リンク上の特定の接着ジョイントであり、そのような位置にあるために組立の段階で品質を十分にテストすることができない部分です。しかし、上部シェルと下部シェルのジョイントも高い動的負荷の下では損傷する可能性があります。損傷は、ロータープレードの数値モデルに取り込まれ、同時に行われる現実の試験で実際に取り付けられているような仮想センサの構成を使用して検出できます。

ここでシミュレートされるのは、2つのメインリンクに沿って取り付けた2つのたわみセンサと、4つの光ファイバ式ひずみセンサの配置であり、これによってブレードの付け根エリアにおける長手方向のひずみを、90°間隔で記録します(図8参照)。

ブレード後縁のジョイントは、いわゆる移行プレートエリア(transition plate area)の部分で特に複雑な形状になっています。この部品をこの位置で使う必要があるのは、ブレードをハブに接続する部分の円筒形から、ローターブレードの空気力学的な形状に移行する際に、この部品が効果を発揮するからです。

「ジョイント障害(Joint failure)」による破損は、モデル内にあるシェルエレメントの2つの一致系列を選択し、その特性を変えることによって対処します。損傷したエレメントの特性には、主として弾性率の大幅な低減が含まれます。その次の図では、ローターブレードの後縁に起きたジョイント障害は移行プレートの上に組み込まれています(図9)。この損傷は、ハブから7m離れたところから始まっており、当初の長さは1mであったが、3mまで拡大しました。ブレードの励振は、実際の疲労試験の場合と同様に、エッジ方向とフラップ方向で別々に発生しています。

図10は、逓増的な損傷の結果として、2つの比例定数に見られる変化を示したものです。ここでは、ローターブレード上における測定ポイントの設置間隔を決定するため、長さの異なる2つのたわみセンサをシミュレートしています。最適な設置場所は、ブレード長の約3分の2の位置にあることが実証されました。

ブレードのフラップ方向の運動を考慮する際に後縁で増大する損傷は、エッジ方向で見られるよりも、はるかに顕著な比例定数の変化を発生します。また、特定方向の固有振動数に見られる変化がほとんど無視できるレベルである点も注目に値します。このことは、ロ―ターブレードの構造的な変化に対しては、固有振動数よりも比例方式の方がはるかに敏感に反応することを意味しています。

テストベンチでのローターブレードに対するSHMシステムテスト

このSHMシステムを開発するにあたり、ローターのテストベンチで、実際にこの測定法を疲労試験に使用しました。フラップ方向に数100万回の負荷サイクルのテストを行いましたが、負荷中断を含み約2.5カ月かかりました。上で説明したセンサー配置を使用して、ブレードにセンサーを取り付けました。ブレード接続部から23m離れた箇所に4個の光ファイバセンサーを設置する構成で、2個のたわみセンサがフラップ方向とエッジ方向のブレード位置ずれの大きさを検出しました。これらのひずみセンサーは、湾曲ひずみを検出するために常に90°のオフセットでブレードの縦方向に並べて設置されます。テストの目的は、認証機関の必要事項に従い、定義された位置でひずみ幅を計測してローターブレードの構造を検査することでした。

 このような構造体は、指定された負荷サイクルの範囲内で動的応力に耐える強度が必要とされます。疲労試験を正式に終了させてから、故意に損傷をブレードに与えて、テストを繰り返しました。このブレードの損傷を度量衡学的に検出することに成功しました。次に、損傷個所を修理して構造上の変更を行った後に、テストを再開しました。比例方式に基づく方法論に従った分析は図11と12に示されています。

図11:左側センサ(トレーリングエッジ)の時間経過に対する比例要素の変動 図12:右側センサ(リーディングエッジ)の時間経過に対する比例要素の変動

2個のたわみセンサと関連の光ファイバひずみセンサーにより決定された比例要素の変動の結果が観察できます。図が示すように、テストでは2日間記録をとりました。その少し前では、2つの比例要素が、明らかに始めのレベルから赤いラインを越せるまで上昇しているのが観察できます。これは、故意に導入された損傷によるものです。点線によって示された短期間の閉鎖後に、テストは、2でマークされるように、再開されました。閉鎖の期間中に導入された損傷は修理され、トランジション・プレート部分に構造的変更を行いました。テストはそれ以上の予定外の中断なしで終了しました。テスト再開後に、比例要素レベルが大きく変化しました。この理由はトランジション・プレート部分の重要な構造変化です(その構造変化はブレードの動的パフォーマンスを根本的に変更しました)。これに加えて、テストがいったん再開されると、要素はゆっくり減少します(これ明らかにクリティカルではない構造変化によって説明されます)。基本的に比例要素は時間の経過を考慮に入れるべきです。これが変化を確実に検出する唯一の方法であるからです。個別の数値だけでは有効性に限界があり、損傷の進行を論理的に示すことができません。

終わりに

この進化した計測技術は、たわみセンサ、 光ファイバ式ひずみゲージ、電気的・光学的な計測情報のデータ処理、無線ネットワーク接 続、バッテリによるバックアップ付の電源などから構成され、ロータープレードで使用できるように最適化されています。センサの取り付けについては、第一に断面の楕円化を検知可能にするため、また第二に冗長システムを形成するため、二つ一組で行うと効果的です。この冗長システムは、ステータス解析の信頼性を向上させるもので、シミュレーションの結果とロー夕ーブレードのテストベンチ上で計測した実際のデータは、センサ技術とその方法論にはロー夕ーブレード用の損傷の早期警報や監視システムとしての将来性があることを示しています。このシステムは、間もなく稼動中の風力タービンのローターブレードに取り付けられて、第一回目の運転を開始する予定です。システムに関係している数々のパートナー企業は、近い将来に、この製品を市場に出すことができると確信しています。

技術資料

[1] Patent pending PCT/EP 2008/000942
[2] Hoffmann, K.: "Eine Einführung in die Technik des Messens mit Dehnungsmessstreifen" (An introduction to measurement using strain gages) Hottinger Baldwin Messtechnik, Darmstadt.
[3] VDI/VDE/GESA 2660: Experimentelle Strukturanalyse; optischer Dehnungssensor, basierend auf Faser-Bragg-Gitter. Grundlagen sowie Kenngrößen und deren Prüfung (Experimental structural analysis; optical strain sensor, based on a fiber Bragg grating. Basics, characteristic quantities and their testing). www.beuth.de
[4] Hottinger Baldwin Messtechnik GmbH product catalog. Experimental stress analysis. www.hbm.com
[5] Haase, K.-H.: AIAS – Associazione Italiana per l‘analisi delle sollecitazioni XXXVIII Convegno nazionale, 2009, Politenico di Torino: Benefits of Using Fiber Optics Strain Gages in Experimental Stress Analysis. www.pcm.unifi.it/AIAS2009/memorie/memoria-aias2009-198. pdf
[6] Gasch, R.: Eignung der Schwingungsmessung zur Ermittlung der dynamischen Beanspruchung in Bauteilen, Berlin 1968 (Suitability of vibration measurement for determining dynamic stress in structural elements).
[7] Zerbst, S.; Haake, G.; Reetz, J.; Lynch, J.; Rolfes, R.: Integral SHM-System for Offshore Wind Turbines using Smart Wireless Sensors, Proceedings of the 6th International Workshop of Structural Health Monitoring 2007, Volume 2, p. 1889-1896, San Francisco, Sept. 11-14, 2007.
[8] R. A. Swartz, J. P. Lynch, B. Sweetman, R. Rolfes and S. Zerbst: Structural Monitoring of Wind Turbines using Wireless Sensor Networks, Smart Structures and Systems 6, pp. 183-196, 2010.

Acknowledgements

The authors are grateful to the Bundesministerium für Umwelt und Reaktorsicherheit (BMU) (Federal Environment Ministry), and Projektträger Jülich (PTJ ) (Jülich Project Management) for their support in a combined research project.

The authors:

Dr. Karl-Heinz Haase is the Product and Application Manager at HBM, Hottinger Baldwin Messtechnik GmbH, in Darmstadt.

Dipl.-Ing. Stephan Zerbst is a Scientific Assistant and Coordinator of the Services & Measurement Techniques department at the Institute of Structural Analysis (ISD) of Leibniz University in Hanover,

Dr.-Ing. Martin Knops is Divisional Manager for Rotor Blade Development at REpower Systems AG in Osterrönfeld,

Prof. Dr.-Ing. habil. Raimund Rolfes is the Managing Director of the Institute of Structural Analysis (ISD) at Leibniz University in Hanover.

Wind Turbine Testing with HBM

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