一人は万人のために―二次制御機能付きの汎用型油圧式テストベンチ

© HANSA-FLEX AG Foto: Julia Ahlers

現在に至るまで、油圧式のテストベンチは特殊なタスクや製品を対象として設計されていました。たとえ個々のコンポーネントがすでに試験済みでも、ユーザーの機械上に取り付けない限りポンプと制御システムの間の相互作用をテストすることはできません。

油圧駆動装置用の新しいユニバーサルテストベンチは、こうしたすべてを変えて行きます。このテストベンチでは、コンポーネント間の複雑な相互作用もテストすることが可能です。 QuantumXアンプを含むHBM製の計測チェーン一式により、安全で信頼性の高い計測結果を実現します。 

この特殊なユニバーサル油圧式テストベンチは特注生産で、油圧システムのサプライヤであるHANSA-FLEX社の主導により製作されました。発案は国際油圧アカデミー(IHA)、設計と製造はadt-Rinck社が担当し、Bosch Rexroth社製の二次制御装置とHBM製の最新計測技術を装備しています。

このテストベンチは、コンポーネントごとにテストを行う代わりに、様々な構成を持つ油圧システム全体を検証することができます。IHAと緊密に協力しながら、adt-Rinck社が総合請負業者としてテストベンチ一式の一括契約を提供しました。このジョイントプロジェクトは、ドイツのDresden-WeixdorfにあるIHAの研究開発部門の中に設置されており、優れた実績を上げています。

adt-Rinck社は、オートメーションと情報テクノロジー(IT)を緊密に連携させる特殊目的エンジニアリング部門の中でも革新的な企業です。会社の創立は1999年で、企業向けのデータ集約型オートメーションシステムの開発と製造を行っています。

テストベンチ、ソフトウェアコントローラ、比較システム、あるいは診断システムといった個々の製品によって、旧来のオートメーションと最新のIT技術との間のギャップを埋め、(例えば、油圧コンポーネントの大量生産または自動車産業などの用途で)生産工程に関わるデータの取得、保存、処理を行います。

技術的・記号論理学的なデータの評価と管理を目的とする、特別開発のハードウェアとソフトウェアソリューションは、市販のシステムの補完や市販のシステムからの切替に用いられています。

ソリューションとしての油圧システム

油圧システムは、電動式の駆動装置と比較して原動力と質量が大きいことから、現時点では駆動技術としての使用が一般的です。同じ設置スペース要件で比較すると、発生する出力は電気の4~5倍になっています。

油圧システムは、プレス、建設機械、農業用機器、多目的車両、リフトプラットフォーム、CNC制御の機械ツール内の張力装置などで使用されています。

油圧式駆動装置にとって、低速や高トルクでの運転は難しいものではありません。油圧式の駆動装置は過負荷状態で簡単に停止しますが、電気式の駆動装置は同じ条件下でも過熱によって損傷したり、冷却が必要になったりします。

しかし油圧式の場合、エネルギーコストが著しく高くなることがあります。エネルギーバランスは、システム全体の設定を最適化することで強化できます。したがってレイアウトを最適化するためには、システム内における損失を特定する必要があります。

様々なコンポーネントが互いに完全に適合していなければならず、またその寸法取りが適切でなければなりません。これが可能になるのは、システム内における処理過程が詳細に判明している場合に限られます。

コンポーネントのテストに加えてシステムのテストを行う

今まで油圧式のテストベンチは特殊なタスクや製品を対象として設計されていました。たとえ個々のコンポーネントがすでに試験済みでも、ユーザーの機械上に取り付けない限りポンプと制御システムの間の相互作用をテストすることはできません。

システム一式の中で個々のコンポーネント間の関連を適確に認識し、さらに原因を正確に解析して、その原因を正確に特定することは非常に困難な作業です。今日でも、コンポーネントのテストや交換によって問題が解決することは珍しくありません。

新しいユニバーサルテストベンチのコンセプトを使えば、こうした状況を変えることができます。ただし、適切な計測技術を特定の方法で使用する場合(例えば、ミリ秒の範囲で高度に動的なプロセスが発生する場合)にのみ、これが可能となります。

新しい汎用型テストベンチの目的は、ポンプから負荷の消費装置までを含む駆動トレイン全体の油圧プロセスについて、有益でより正確な見通しを得ることです。

これにより、新しい進展があった時にも、メーカー中立的なシステム評価を使用して生産プロセスの最適化を行うことができます。さらにこの種のテストベンチは、特定のトラブルシューティングや既存システム内での故障の解析にも役立ちます。

良好なエネルギーバランスを備えたシステムテストベンチ

このテストベンチは、電気油圧駆動システムと試験装置から構成されています。駆動システム側では、合計3台のBosch Rexroth製二次制御駆動システムが、速度/トルク制御用電子機器(CANバス接続付きHNC100-SEK)によって動作しています。

これらの極めて動的なアキシアルピストンポンプは、一般的な、独立した作動油タンクを備えた油圧閉回路上で作動します。ATOS製の補助ポンプ、合計4つのテストデスク上の試験片には、第二作動油タンクからオイルを供給しています。adt-Rinck社が専売特許を持つ、顧客仕様のテストベンチソフトウェアが、制御キャビネット、PLC、周波数コンバータ、潤滑油空冷システム、様々な計測技術コンポーネントを装備した複雑な油圧システムを完全に制御しています。

オペレーターは、移動式のオペレーター保護シールドの背後や離れた場所にあるコントロールルームから、試験片の付近にあるテストベンチソフトウェアを実行することができます。

IHAの研究開発部門は、この汎用型テストベンチを使用することで、油圧システムの製造メーカーやオペレーターに対して、開回路または閉回路内のポンプ、油圧コンポーネントと油圧マニホールド、制御装置などを対象とした革新的なアイデアを提供することができます(テストベンチの特性:最大160 kWのパワーアップ。最高シャフト速度2,200または3,200 rpm、トルクは最大750 Nm)。

Principle secondary controlled system test rigPrinciple secondary controlled system test rig

Principle secondary controlled system test rig

荷重エネルギーは、二次制御システムによってその方向を変えることができます。荷重による駆動エネルギーをすべて圧力バルブ経由で熱に変換する代わりに、荷重エネルギーの60%を戻すことが可能です。圧力と効率損失だけが熱として失われます。その結果として、普遍的な配置が可能で優れたエネルギーバランスを誇るシステムテストベンチが得られます。

用途上の様々なオプション

このテストベンチ上では、油圧コンポーネント、閉回路または開回路内のポンプ、制御マニホールドのテストを行うことができます。二次制御式の駆動装置により四象限運転さえ実行可能です。これは、自動車駆動用エンジンのエミュレーションも可能なことを意味しています。

車両を前方に運転すると上向きのプラスの荷重が生成される場合、下向きの運転ではマイナスの荷重が生成されます。これは逆向きの移動でも同様です。これら4つの荷重ケースがそれぞれ4つの象限に対応しています。テストベンチ上で個別の駆動プログラムを使用してこれらの各荷重ケースを設定し、そのプログラムを動的に実行することができます。ディーゼルエンジンの速度トルク特性をシミュレートすることさえ可能です。

計測技術

Operating mode pump test open circuit

Operating mode pump test open circuit

総合効率は、機械的な効率と油圧システムの効率を合計したものです。

機械的な損失は摩擦によるものですが、油圧システムの損失はオイル漏れやスロットルによる制御が原因です。また、油圧システムの損失は流速と圧力損失に依存します。

体積効率は、外部漏れを計測することで決定できます。内部漏れは、ポンプの実効注入速度を計測することで検出可能です。そのためには、幾何学的な(理論上の)注入速度から、外部漏れと実効注入速度を差し引く必要があります。

個々の抵抗値は、システム内の様々なポイントにおける圧力測定によって決定することが可能です。流速が判明している場合、局所出力損失を計算することができます。油圧システムに起因する最大の損失は、荷重速度を制御するために体積流量のスロットルを絞る時に発生します。

試験設備内の損失を追跡するには、適切な計測技術は必須の条件です。この目的のためポンプシャフト上の機械的な駆動出力を計測し、その結果を油圧出力と比較します。 近似的には駆動出力はトルクとポンプシャフトでの速度との積であり、油圧出力は体積流量と圧力に基づいて決まります。


ポンプシャフトにおける機械的な入力は、トルクと速度の計測値によって決定されます。HBM製の T40 トルクフランジ はポンプの駆動シャフト上に常設で取り付けてあり、速度はHNC100-SEKのCAN信号から取得します。

adt-Rinck社のプロジェクトリーダーであるTorsten Sigmund氏は、「極度に動的な二次ユニットを使用した当社のアプリケーションに関しては、2台の汎用的なHBM製の Quantum MX840 アンプにもそれぞれCANポートを装備することが最善です。デジタルの使用により損失のない、HNCから業務用PCまでを対象とした直接的なCAN信号のモニタリングによって、Ethernet経由で有意な計測結果を計測技術用ラップトップに転送するために、速度、トルク、旋回角度などの重要で極度に動的なパラメータを提供することも可能です。」と説明しています。このソフトウェアは、このテストベンチ用にadt-Rinck社が特別に開発したものです。

多種多様な信号変換器に対応するため、それぞれのMX840アンプに合計8個の入力チャンネルが装備されています。体積流量とトルクの記録に加えて、IHAのオペレーターが様々なポイントでの必要条件にしたがってHBM製の圧力変換器P8APやP3ICPタイプを使用して圧力を計測します。

adt-Rinck社は、油圧テストベンチでHBM製の圧力変換器を長年にわたって使用してきました。テストベンチ上の計測チェーン全体は、センサの他、汎用型と移動型のMX840アンプ2台、直感的なソフトウェア catman®Easy に加えて、計測結果をリアルタイムで表示し、そのデータを保存して評価するためのラップトップなどから構成されています。adt-Rinck社では、このテストベンチに計測技術一式を適応させています。

Torsten Sigmund氏は、HBM製のソフトウェアcatman®EasyとEasyMathモジュールを使用する理由を以下のように説明しています。「HBM製のソフトウェアを使用するとデータの取得が容易ですし、取得したデータの視覚化や解析も強力です。それになにより、操作が簡単で直感的ですね」。

証明されたテストベンチ

テストベンチは、無効電力補償キャビネットから油圧空冷システムまでの長さが12 m、高さは4.5 m、幅は6.5 mあります。

重量は、2つのオイルタンクに入った3,000リッターの作動油も含めると25トンあります。見本の試験中に金属部品が飛んだりオイルが激しく飛び散ったりした場合、adt-Rinck社が開発した厚さ10 mmのMakrolonパネルを使用した移動式の人員保護シールドがオペレーターを保護します。運転には最大400バールの非常に高い圧力を使用しており、油圧駆動装置が100 ms未満の短時間でシャフトを0から2,000 rpmまで加速します。

自前のテスト用設備を持たないユーザーの方でも、現在では、ドレスデンにあるIHAのテストベンチで自社製のコンポーネントやシステムを検証してもらうというメリットを受けることができます。このテストベンチと計測システムは、顧客ごとに個別にカスタマイズされることになります。オンラインの計測結果を使用して正確なテスト手順を規定し、その後は規定通りに計測を実行します。

IHAの研究開発部門の責任者であるDierk Peitsmeyer氏によると、MX840アンプの容易に使用できる計算チャンネルが特に有用であることはすでに実証済みです。現在までのところ、この新型の汎用型テストベンチで得られた経験は非常に良好です。結果は再現可能で、IHA特製のソフトウェアや特定の機能の動作も安定しています。それでもなおIHAは、新しいアイデアを次々と組み込み、テストベンチのさらなる開発を進めています。

移動式の計測技術

テストベンチとは異なり、関連する計測技術は移動式なので、必要に応じて現場にあるユーザーのシステム上で計測を直接実行することも可能です。

非常にコンパクトなMX840計測ボックスは、テストベンチから引き抜くことができるため、計測用のソフトウェアやラップトップコンピュータをIHAから顧客の下へ簡単に持って行くことができます。これは移動して使う際に理想的な前提条件となります。 小型で手軽な P8AP 圧力変換器と P3ICP 変換器 は、取付け位置がどこであろうと、ごく限られたスペースでも使用することができます。また圧力計測の結果は、Ethernet経由で高速転送しラップトップ上で解析することが可能です。

The decision for HBM

"We have been using HBM measurement technology in our national and international test benches for over 10 years and have always had the best experiences with it. The technical properties of the products, their reliability and quality convinced us. We place great value on reliability, accuracy, high signal quality, versatility, comfortable and powerful data logging software. In addition to special product characteristics, advice and services are also important to us. We provide turn-key-solutions and for this the complete HBM package is a perfect fit. It is often an express wish of our end customers that HBM measurement technology is used in our projects."

Torsten Sigmund, project leader at adt-Rinck.

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