幾多の要件に対しても、ソリューションは1つで十分
ケネディ宇宙センターのあるフロリダは赤道に近いため、発射位置としては理想的です。つまり、地球の自転力が発射に際して効果的にロケットを後押しする形になるため、宇宙空間に到達するまでの燃料が節約できるのです。しかし残念ながら、フロリダは発射基地としての課題にも頻繁に直面します。その理由は、単位面積当たりの落雷放電の発生率が米国内で最も高いのがフロリダであるからです(フロリダはアメリカの「雷首都」と呼ばれています)。こうした危険性に立ち向かうため、ケネディ宇宙センターでは、落雷保護システムと平行して作動する落雷監視システムが必要になりました。宇宙船の発射プログラムの進行中は、これら二つのシステムがすべての重要ポイント上で有効に作動しなければなりません。宇宙船は、最初に「Vehicle Assembly Building(スペースシャトル組み立て工場)」と呼ばれる巨大な建造物の中で、組み立てられます。完成した宇宙船は「Mobile Launcher Platforms(移動式発射装置プラットフォーム)」と呼ばれる特殊な重量輸送装置に載せられて、発車前の最終準備作業と任務確認が行われる発射台まで輸送されます。
宇宙船は、スペースシャトル組み立て工場を出た瞬間から最終的に宇宙に向かって発射されるまで、常に落雷の被害を受けやすい状態にあります。この期間中は、地域内の落雷から誘発される電気的過渡現象によって問題が発生する可能性があるので、そうした問題の発見を支援するため、宇宙船の中と外にある数多くのポイントを継続的に監視することが重要です。
これを実現するため、HBMがケネディ宇宙センター向けに開発したシステムは、120もの計測ポイントで誘導電流と誘導電圧を計測するものでした。多数のポイントを監視することにより、高い誘導電流が発生している場所を特定することが可能になり、さらに損傷が起きているかもしれない場所も決定できます。落雷監視システムを開発する時は、多くの要素を考慮する必要がありました。ケネディ宇宙センターでは平均周囲温度が高く、華氏90度(摂氏32度)を超えることもしばしばです。同時に湿度も非常に高く、監視システムは腐食と湿気に対して非常に高い耐性を備えていなければなりません。もう一つの要素は、宇宙船の発射時に発生する大きな衝撃と振動により損傷を受けるリスクが非常に高いことでした。したがって監視システムは、特定の標準的な軍事仕様を満たす必要があります。さらに、送信器の入力をDC(直流)のみとする点も非常に重要だと考えられました。これによりバッテリー稼働が可能となるため、落雷がすぐ近くで起きても完全な絶縁が達成されます。これと同様に重要な点は、監視作業を継続するため、嵐が通過したら、送信器上の遠隔操作の出力スイッチを使用してDC充電回路内でバッテリーの充電状態を維持するように切り替えることです。こうしたケネディ宇宙センターの要求をすべて満たすために選択したソリューションは、
HBM製の Genesis HighSpeed HBM製のGenesis HighSpeedとPerceptionソフトウェアでした。これは箱から出してすぐに使える高分解能DAQシステムで、最大で64のチャンネルを、25 MHzのバンド幅を使用する一つのメインフレームで監視することができ、最大100 MS/sまでの記録性能を備えています。さらに、どのチャンネルからもウィンドウトリガが可能になっています。
テストポイントに装備された機器には、14ビットの分解能と25 MHzのバンド幅で100 MS/sの送信速度を実現する7600光ファイバ送信機が1台含まれていました。この送信機は、ステンレス鋼304(ミズーリ州セントルイスにあるゲートウェイアーチに使用されているものと同じ材料)のハウジングに収納されています。この材料は、通常のステンレス鋼のように簡単に錆びたり腐食したりすることがありません。多くの計測ポイントをつなぐために12 kmもの長い距離が必要だったため、光ファイバケーブルが選択されました。HBM製の機器は、800 mを超える距離でも0.1%の最大測定限界精度を持っており、さらにクロスチャンネルスキューを防止すると同時に、自動ケーブル長補正というメリットもあります。