EtherCAT を活用した産業用の高速リアルタイム計測 EtherCAT を活用した産業用の高速リアルタイム計測 | HBM

EtherCAT を活用した産業用の高速リアルタイム計測

課題

産業全体にコスト削減の要求が広がるにつれて、様々な産業アプリケーションに対して、より高速のリアルタイム計測を実施する需要が大きくなっています。 一般の企業で導入されている標準Ethernetベースの通信システムはすでに普及していますが、その有効な帯域の大部分は使用されておらず、多くの場合非効率になっています

この非効率の原因は2つあります:

  • Ÿ 小さな量のデータしか一度の送信で送れない
  • システム上のクライアントやマスターデバイスがデータを要求したときにのみ、メッセージが発信される: これは、標準Ethernetが、ハーフデュープレックス(半2重通信)システムとしてしか使用できないことを意味します。

ソリューション

 

この問題を解決するために、Beckhoff Automation GmbHが、標準Ethernetプロトコルの低い帯域利用効率を改良してリアルタイムで運用できるフィールドバスシステムを開発する研究を行いました。

その結果登場したのがEtherCAT (Ethernet Control Automation Technology) 高性能の産業用通信プロトコルです。これはIEEE802.3Ethernet標準フレームを拡張して、データを予測可能なタイミング正確に同期してデータ転送します。

EtherCATでは、Ethernetパケットは各デバイスで受信・解読・処理・記録されません。EtherCATプロトコルは標準Ethernetフレームを使用して、その基本を変えることなく、データを直接送信します。

しかしながら、EtherCATスレーブデバイスは、フレームがデバイスノードを通過する際に、そのデータを読みとります。 また入力データを同時に処理でき、数ナノ秒の遅延しか発生しません。 EtherCATフレームは、送信と受信モードの両方で運用している数多くのデバイスからのデータで構成されているので、使用可能なデータレートは90%以上になります。 100BaseTXのフルデュープレックス(全2重送信)が十分に利用可能になり、有効データレートが >100 Mbit/s になります。

 

もう一つの利点

EtherCATのもう一つの利点は、CANopen familySercosドライブプロファイルの全体がサポートされていることです。EtherCATネットワークを、特定のアプリケーション用に事前に設定された基本プロファイルを変更することにより簡単に構築 できます。さらにEtherCATは、ほぼすべての接続形態をサポートすることができるので、標準のスイッチベースEthernetのスター型ネットワーク接続を含む幅広いアプリケーションに利用できます。配線の面で非常に柔軟なシステムになり、異なる種類のケーブルでも簡単に使用できます。このようにして、Ethernetスイッチやメディアコンバータとの組み合わせで、Ethernetネットワークの全帯域を活用できます。

ゲートウェイモジュール

EtherCATを使用して、リアルタイム計測値の収集効率を最大化するために、HBMではQuantumXシステムの一部とし CX27を実用化しました。CX27はEtherCAT接続ができ、デジタル入出力や非同期データ通信向けのチャンネルから構成されています。これにより、チャンネル構築用にSDOプロトコルまたプセスデータ割り当て用にPDOプロトコルを使用して、個別のチャンネルの構成と設定を可能にします。

König PAシステムに基づくEtherCAT StudioかBeckhoff方式を使用するTwinCATのどちらかを使用して、構築が簡単にできます。構築はまたQuantumX System CD、またはHBMのホームページから適切なソフトウェアをダウンロードすることにより行えます。ネットワーク検索やEEPROMのメモリを使用して構築することもできます。このようにCX27の構築は簡単にいろいろな方法で行えます。


 

注目すべき点

広く分散したプロセスで同時にいくつものアクションが要求される際、重要な点はネットワークのすべてのノード(要素)のタイミングが正確に同期されていることです。

これは、全スレーブに対してマスタークロックからタイミングを送信することにより行い、分散クロック同期方法(IEEE 1588)を用いて、オフセット遅延を補正します。EtherCATのグルーピングでは、マスタークロックスレーブデバイスの中にあります。標準部品から意図的にマスターが割りあてられるからです。このようにして、すべてのノードは、1ミリ秒未満の誤差で同期させることができます。

CX27には、Device Description File (DDF)の中のオプションとして、分散したクロックを起動したり停止したりできます。デフォルト設定では、分散クロックは起動状態にあります。分散クロックが起動している場合は、タイミングマスターが時間情報をQuantumXスレーブに送り、さらそのタイミングがモジュールに送られます。分散クロックを使用すると、Ethernet経由で複数の計測が同時進行している場合に同じタイムスタンプを参照できます。

HBMのCX27 をEtherCATスレーブとして使用すると、多チャンネル や 高いサンプリングレートが使用できます。 高性能データ収集システムQuantumXのフィールドバスを使用して、最大199個の時間同期信号を最高サンプリングレート1,200Hzで、もしくは、30チャンネルの信号をサンプリングレート4,800Hzで収集できます。

 

まとめ

EtherCATはEthernet向けの、非常に高性能で展開が容易な、オープンプロトコルです。これをHBMのCX27に使用することにより、様々なアプリケーションに対して全帯域を利用しながら、同期機能をフル活用できます。 特に多数の計測モジュールが同期をとる場合に有用です。