シャント信号とゼロポイントを使用してHBM製トルクフランジをチェックする シャント信号とゼロポイントを使用してHBM製トルクフランジをチェックする | HBM

シャント信号を使ったHBMトルクセンサのチェック方法

多くのユーザーから、「長期間にわたって使用しなかったトルクフランジをそのまま使用し続けて良いのか」というご質問をよくいただきます。これに配慮して、HBMはトルクフランジの挙動を徹底的に調査しました。

絶対確実な方法は、DKD(ドイツ校正サービス)が認定した校正試験所(HBMなど)でチェックして校正する方法です。しかし多くの場合に求められるのは、それほど重要でない計測値に対して迅速な評価を得ることです。

この技術情報では、 T10F トルクフランジ を例にとって説明し、シャント信号ゼロポイントを使用してトルクフランジをチェックするための実用的なヒントをユーザーの方にご提供します。中心周波数に関しては、すべての計測フランジに対して必要な変更を加えるステートメントを適用します。下流にある電子機器の設定は考慮されていないため、区別して対応する必要があります。

シャント信号

非接触で計測信号転送を使用するすべてのHBM製トルクフランジ (例えば T10F...、 T40...、 T12) は、シャント信号を有しています[1]。これは公称(定格)計測範囲の約50%であり、型式銘板や製造証明などに記載されている絶対値(N•mなど)です。

このシャント信号をトルクフランジのチェックに使用する場合、実際のシャントは計測シャフトのローター上で実行されることになります。これは、固定された抵抗が、ホイートストンブリッジ回路のブリッジアームと並列に接続されることを意味します。

その結果として生じるブリッジの不平衡値は、当社が認定した校正器で行う機械的な校正から得られたデータを使用して、型式銘板上で指定されているシャント信号に変換されます(図1を参照)。一般に、得られた値は「不均一」であり、シャント信号はそれぞれの変換器ごとに異なります。

シャント信号は以下の2つの目的を果たします。:

  1. 下流にある電子機器の調整および個々のトルク変換器への適合
  2. ゼロポイントモニタリングと併用したトルク変換器の点検および監視

シャント信号とゼロポイントの関連 ― T10Fを例にした場合

厳密に言えば、シャント信号はローター上で生成されるため、その適用対象となるのは周波数またはデジタル出力のみとなります。T10Fトルクフランジの±10V出力では、ステーター上のアンプ設定をすべて考慮に含める必要があります。

さらにシャント信号も接続されます。したがって、シャント信号を有効にする時は計測フランジに負荷を与えないことを推奨します。

 

T10Fのチェックとモニタリングにシャント信号とゼロ信号を使用している時に、以下に示す変化が発生した場合、点検のためにT10FをHBMへ返送することをお勧めします。:

  • 変換器が取り付けられていない時に±0.8%(±40 Hz)より大きなゼロ信号の偏差が見られる。つまり中心周波数が10,000 Hzの時にゼロポイントが9,960 Hzから10,040 Hzまでの周波数範囲に入っていない。
  • 変換器を取り付けると±3%(±150 Hz)を超えるゼロ信号の誤差がある場合。
  • 変換器の取り付けによって生じた±1%(±50 Hz)を超えるゼロ信号の変化を平衡させた後に、ゼロ信号に追加的な変化が見られる場合。
  • 型式銘板や製造証明などに記載されている値と比較してシャント信号の偏差が±0.1%を超えている場合

これらの値は、安定した基準温度条件および変換器のウォームアップ段階(15分間)に適合します。変換器が取り付けてある場合、シャフトトレインの歪みなどによる追加的なトルクがかかっていないか確認することが非常に重要です。シャント信号は追加的に接続されています。したがって少しでもゼロポイントがシフトすれば、必ずこれを考慮しなければなりません。

 

シャント信号の決定や使用は、電気的手法に過ぎません。理論的には、抵抗値または拡張クロイツァー回路(弾性係数の補正)が変化せずにストレインゲージが離脱すると、記録されない可能性があります。ただし実際的経験では、正しく製造されたストレインゲージがこのように離脱するケースはまずありません。

したがって一般的には、異常な運転状態(計測ポイントの破裂など)の結果としてのみ発生します。製造工程および校正作業中には、すべての製品に対して計測値を取得し、ストレインゲージが正しく製造されていることを確認します。

 

シャント信号とゼロポイントを使用すると、T10Fトルクフランジが仕様の範囲内で正しく機能しているかどうかを簡単に見極めることができます。曲げモーメントや半径方向の力による過負荷の結果として発生するローターの塑性変形は、正しい設置作業によって解消することが可能です。こうした過負荷は常にゼロポイントまたはシャント信号によって反映されるとは限らないからです。

分路または校正

シャント信号を使用した分路および点検には多くのメリットがあります。機械的な検査の労力は大幅に低減され、場合によっては不要にさえなります。しかし用途や品質基準によっては、例えば試験用機器のトレーサビリティ(追跡可能性)などの観点から、一定の間隔で行う機械的な校正を指示する要件が存在する場合もあります。

コンポーネントのサプライヤとしてのHBMは、当然ながらそうした要件を保留しておくことはできません。さらに、使用条件に関する要件と知識に基づいて校正の実行間隔を規定できるのは、ユーザー自身に他なりません。

 

HBMでは、変換器については2年間の校正間隔、また電子機器については1年間の校正間隔を推奨しています。DIN 51309 [2]の規定では、トルク計測用機器の校正証明の有効期間は最長で26ヶ月間となっています。

特殊なトレーサビリティ要件あるいは品質保証基準を満たすために、さらに短い校正間隔を採用することが妥当な場合もあるでしょう。トルク計測用機器は、以下の場合に再校正が必要となります。

 

  • 過負荷の影響を受けた後
  • 修理作業の後
  • 不適切な取り扱いを行った後

結 論

要約すると、トルクフランジ点検および適合にシャント信号を使用することは可能ですが、用途によっては、実際の機械的な校正代用とすることはできません

参考文献:

[1] Rainer Schicker, Georg Wegener: Measuring Torque Correctly, ISBN 3-00-008945-4
Published by Hottinger Baldwin Messtechnik GmbH, Darmstadt

[2] DIN 51503, Werkstoffprüfmaschinen – Kalibrierung von Drehmomentmessgeräten für statische Drehmomente,
DIN Deutsches Institut für Normung e.V., exclusive sale of standards by Beuth Verlag GmbH, 10772 Berlin

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