3つの方法

力センサで力を計測すると最高の精度が得られます。しかし、場合によってはフォースシャントを利用して力を計測した方が良い結果がでることがあります。このような場合には、それに適した特殊センサがあります。この技術レポートはフォースシャントで力を計測する3つの方法を紹介します。

校正された力センサを使用するメリットは、校正で得られたと特性曲線(加えた力に対する出力信号の比率)が、現場設置後も容易に再現できることです。これは、力センサが力の軸方向に配置されていて、分岐(シャント)していないことが前提です。計測する力すべてがセンサを通過する必要があります。

力センサの特性(剛性や動的挙動など)によりセンサの設計が決まり、大容量の力センサの場合はサイズが非常に大きくなります。

力の計測は、対象となる構造体の変形に基づいて行ないます。 以下の三つの異なる方式があります:

  • ひずみゲージの設置
  • ねじ込み式のひずみセンサの使用(電子回路が組み込まれている場合があります)
  • ワッシャ型センサの使用(ひずみゲージ式や圧電式力計測技術を使用)

以下の表は各方式の長所と短所を示しています:

ひずみゲージの設置 ひずみセンサの使用

ワッシャ型センサ

の使用

メリット

 
  • 小さな力がはたらく、高度に線条細工の構造に向いている。過度にフォースシャントなので、他の方法がない場合に使用

  • 最小のスペースで設置可
 
 
  •  既存の構造体に、ねじ止めで簡単に設置できるため、導入しやすい
  • 複数のセンサを並行接続したときにおこるひずみの影響を補正できる
  • 電子回路を組み込んだモデルは、設置後に直接校正できる
 
 
  • ボルトやネジ上に設置でき、高い保護レベルを確保できる
  • 事前準備が不要
 
デメリット
 
  •         設置が煩雑(接着、配線、保護コーティング)

  • フォースシャントに対する校正が必要
 
 
  • フォースシャントに対する校正が必要(電子回路を組み込んだモデルでは操作がより簡単)
 
 
  • フォースシャントに対する校正が必要
 

構造物上で力を計測するひずみゲージの使用

図1: ひずみゲージVY41。配線簡略化で4ゲージ式回路として簡単に接続。45度のアライメントマークを使用した設置は必須

直接ひずみゲージを計測対象の構造物に設置できる場合は、利点がいくつかあります。ひずみゲージ(SG)を接着した場合は、計測対象の構造物に影響がないこと、構造物の動的挙動や剛性に全体として影響がでないこと、があげられます。線条の構造体は、わずかな力で変形を起こすため、ひずみゲージによる力計測には特に向いています。

設置例では、4ゲージ式ひずみゲージが使用されています。適正なゲージが選択できれば、寄生応力(例: 曲げやねじれ)を補整でき、もしくは寄生応力の度合い[1], [2] を計測できます。

引張や圧縮負荷が曲げ方向の力なしに構造物にかかると、4ゲージ式のひずみゲージが理想的な選択となります。例えば、45度の角度で設置するHBM のVY41が適しています。

このような計測ブリッジの出力信号は、使用するひずみゲージのゲージ率やひずみの度合、及び、材料のポアソン比だけに依存します。その計算式は次のようになります。

 

ここでは:

 

U/U0 計測ブリッジの出力信号
k 

ひずみゲージのゲージ率

 
εひずみの度合
µポアソン比

 

鋼でできた構造体に20 MPaの機械ストレスがかかっていて、100 µm/m のひずみが生じている場合、ゲージ率2であると、この数式より出力信号は0.13 mV/V となります。

この計算からは接着式のひずみゲージの弱点を見ることもできます。定格剛性を持つ構造体では、出力信号非常に小さいくなります。

さらにこのタイプのひずみゲージは現場で設置する必要があり、保護コーティングが必要です。そのうえ接続を慎重に行う必要があり設置に時間がかかります。ひずみゲージの設置方法は接着剤とコーティング剤に同梱される取扱説明書に記述されています。またHBMより提供される文献やセミナーも参考になります。

構造体の部品強度を調整することにより、計測ブリッジの出力信号を簡単に増加できます。しかし剛性に影響が出るため、動作や安定性には影響が出ます。

 

 

力計測にひずみセンサ(ひずみ変換器)を使用

図3: SLB スプリング構造体: ひずみゲージが配置された、ひずみ部分
図2: ひずみゲージを利用したひずみセンサSLB700

ひずみセンサは既存の構造体に設置できるセンサです。この変換器は4ゲージ式のひずみゲージを組み込んだスプリングエレメントを使用しています。

 

写真が示すように、このひずみセンサはシリコンコーティング(センサの白い部分)されていて、湿度からの保護に加え、機械的にも保護されています

ひずみセンサはひずみ変位の原理に基づいています。ひずみゲージが設置されたエリアのひずみは、2か所のねじ留め部分の間のひずみよりも大きくなります。3SLB スプリング構造体を示しています。 変換器(ひずみセンサ)にかかるひずみは、ひずみゲージが設置されている箇所を中心にかかるようなっています。この箇所は剛性を大きく減少させています。 極大化したひずみの増加量は以下の式で示すことができます:

 

 

各変数の意味は::

 

εSGひずみゲージ直下のひずみ
εObjectネジ留め部分間のひずみ
lStrain sensorネジ留め間の距離
lStrain zone構造上の剛性を弱めた部分の長さ 

この観測には、いくつかの理想モデルが含まれています。

ひずみを計測するゾーンはひずみがないことを前提としています。もちろん、厳密な意味では、真実ではありません。ひずみセンサの感度はひずみゾーンの長さと、2か所のネジ止め部分の間の距離の比で、調整可能なことは明らかです。原理上、非常に高い感度が達成できますが、実用的には、出力信号としては500 µm/mに対して 1.5 mV/V が適切です。これによる感度は、上で述べた4ゲージ式のひずみゲージと比べて230 %向上します。

部品の温度膨張は、電気回路上の対策により補償されています。

さらに、電子回路を組み込んだひずみセンサを使用すると、設置した状態で校正を実施することができるので、計測チェーンの大幅な効率化が図れます。

電子回路なしのひずみセンサは、700Ωの高いブリッジ抵抗を持っています。これにより、いくつかのひずみセンサを並行設置した場合でも、過度に大きな電流を必要としません。

この手法により、取り除くべきひずみの影響に対する補償が可能になります。例えば、円柱状のコラム上で圧縮力を観察する場合に、必要なひずみ量のみを取り出すことができ、引張や圧縮方向の負荷だけを計測できます。

2個のひずみセンサを円柱の表面上の両側に、並行して、同じ高さで、かつ、正反対の位置関係になるよう配置した場合を考えてみてください。円柱を曲げる方向の負荷がかかった場合、片側のセンサがより大きなひずみを計測し、もう一方のセンサは、同じ量だけ小さい計測をします。全体としては、引張や圧縮方向の負荷からくるひずみだけを計測できます。曲げる方向の力は補正されます。

HBM のひずみセンサSLB4個のM6ネジで設置できます。ペイントやコーティングがなく、被計測体の素地が表れている面だけを必要とします。センサをネジ止めする際には、推奨の締め付けトルク値がありますので、ご参照ください。

力計測にワッシャ型力センサを使用

図5: ワッシャ型圧電式力センサ CFW、定格力20~700 kN。写真の例は330と700 kN
図4: ワッシャ型力センサ KMR、最小設計、定格力20 kN
図6: 工具の監視、ワッシャ型力センサはネジにより接続している部分の力を計測

ワッシャ型力センサにはひずみゲージ式や圧電式技術を使用したものがあります。使用原理にかかわらず、ボルトネジの両方に使用できます。このため内径は、メートル法のネジ山の外径に対応した大きさになっています。

ワッシャ型が平行なスプリング構造体の機能としてボルトやネジ上に設置された場合は、フォースシャントによる力の計測となり、計測システムの感度が下がります。この場合は、約10%値を考慮しなければなりません。 このためワッシャ型センサは現場校正ができません。上で述べた2つの方法と同じく、シャントの校正が常に必要です。

再現性を確保するために、ワッシャに予備的負荷を加えることが必須となります。その大きさは、センサの公称値(定格)と計測する力の大きさに依存しますが、負荷が50%のときに、最大の曲げのモーメントがかかるとします。理想的には予備負荷は、予備負荷と実際の圧力の総和が平均でワッシャの定格値の50です。この推奨値は、特に、ワッシャ型圧電式力センサに当てはまります。[3].

ワッシャ型は保護性能が高く、納品後そのまま設置できます。この点は、ひずみセンサと同じです。ワッシャ型はまた定格力に関係なく感度が高く、これは圧電式でも同様です。

HBMのひずみゲージ式力センサには、ワッシャ型があり、様々な計測環境において、安定した力の計測ができます。ワッシャが使用できない場合は、センサとの接触面を硬く(43 HRC)し、かつ、表面平滑性が20 µm以下になるよう研磨する必要があります。

フォースシャントを計測チェーン内で校正

ここで述べている3方式で共通しているのは、計測チェーンをセンサ設置後に校正する必要があることです。これは、少なくとも力のレンジ内の既知の力をかけた2点で計測する必要があります。これを利用して、センサの出力信号を力に関連づけます。センサの挙動は狭いエラー許容範囲でのみ直線近似できます。この方式は高精度計測には使用できませんが、一般的には2点式校正で十分です。

ひずみセンサに組込まれた電子回路は、この理論に従っています。校正はゼロ点での計測して制御インパルスを電子回路に送るだけです。最大力が使用される場合は、制御インパルスがもう一つ必要です。電子回路が、自動的に調整します。ゼロ点補正は、もちろん、単独で可能でゲインは、変更せずに行えます。

ひずみゼロは1 Vで、最大ひずみは9 Vですが、出力レンジは 0~10 V を使用して、10 %の範囲で過負荷や負のひずみを表示可能にしています。同様な方式で、電流での出力も可能で、この場合は出力レンジが4~20 mAとなります。

フォースシャントによる力の測定-まとめ

この記述の概要:フォースシャントによる力の測定にはいくつかの有用な方式がある。測定対象の機械的挙動に影響はないか、あってもわずかである点が全方式に共通しています。

しかし、精度重視の場合は、ひずみゲージや圧電式技術を使用した力センサ推奨します。

理由は以下のとおりです:

  • Ÿ 設置後に調整する必要がない。センサ自身はすでに高精度に校正さ済。フォースシャントでの力計測は、現場で、実物を使用しての校正が常に必要。
  • Ÿ 計測の不確かさが明確で、センサモデルの選択により適切な仕様を選べる
  • 高品質の力センサの使用(例: HBMのS9Mは精度0.02 ) により、フォースシャントの測定では達成できない高精度計測が可能

参考資料

[1]Karl Hoffmann, “Eine Einführung in die Technik des messens mit Dehnungsmessstreifen”, Hottinger Baldwin Messtechnik GmbH, 1989
[2]Stephan Keil, “Beanspruchungsanalyse mit Dehnungsmessstreifen”, Genius Verlag, 1995
[3]T. Kleckers, „Piezoelektrische Kraftaufnehmer : 5 Regeln für Installation und Montage“, HBM Homepage, 2009

 

 

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