トルク計測における遠心加速度の重要性

「ジェットコースター」、「脱水機」、「遠心分離器」― 回転トルクの計測技術から見てこの三つに共通しているものは何でしょうか?その答えは、驚くなかれ、「遠心加速度」なのです。回転数と回転半径の組み合わせによって遠心力が得られます。遠心力に実際の質量を掛けると強い力が生まれるので、これに対応するためには安全な構造体が必要となります。

ジェットコースター内での遠心力は、健康に与えるリスクを避けるため大きくなりすぎないようにすることが必要ですが、しかしその一方で、重心を相殺して無重力状態を引き起こすためには十分な大きさの遠心力が必要です。脱水機は実際のところ遠心分離器なのですが、これがどのような原理で作動するのかは誰でも知っているでしょう。脱水機の内部では異なる物質が分離されるのです。

しかし、日常生活の中で発生する遠心加速度は、トルク計測の実行中に発生するものと比較するとごく小さいものです。

  • 脱水機内での遠心加速度は約400 g≒4,000 m/s2ほどで、これはドラムの直径や回転速度によって異なります。
  • ジェットコースター上では、遠心加速度は約5 g≒50 m/s2となります。
  • 一方、回転トルク変換器内では、遠心加速度は数千g(またはm/s2)となります

重力加速度が校正の精度に影響を及ぼす

重力加速度gは、地球の重力場によって物体上に発生する加速度です。地球上の異なる場所における平均値で約9.81 m/s2になりますが、この値は地球中心部の遠心力や地球の扁平率、地域ごとの環境の違いによって変化します。人間が永続的なダメージを負うことなく耐えられる加速度はどの程度なのか、これを特定することは簡単ではありません。文献では、訓練を受けたテストパイロットが保護服を着用した場合の値で9 gと言われており、またドイツのDIN 4112規格では、人間が耐えられる垂直加速度6 gとしています[1]。

正確な校正器のほとんどものにはレバーアームがあり、また載荷重量(質量)がかかる仕組みとなっています。したがって、重力加速度を知ることはトルクの計測値を正確に表示して転送するためにも非常に重要です。ドイツの校正認定機関であるGerman Calibration Serviceによって認定されたHBMの校正試験所では、この重力加速度を正確に決定することが可能です。計測の不確さを0.000005 m/s2とした重力加速度の値は、9.810285 m/s2となっています。

遠心加速度および回転速度

パワートレイン(伝動機構)用テストベンチに装備されているトルクフランジは、角速度で回転する一つのシステムです。このため、遠心加速度は直径回転速度に依存することとなります。

この遠心加速度に質量または質量ポイントを掛けることにより、遠心力を求めることができます。設計にも依存しますが、こうした遠心力によって許容最大回転速度が制限されます。例えば臨界回転速度など、その他の影響要因についても考慮することが重要です。

遠心加速度は、角速度の二乗に半径rを掛けた値です。





したがって以下の結果が得られます。

(m/s2単位の数値、m単位の数値r、rpm単位の数値nを含む方程式)

下の表1は、様々なトルクフランジならびに選択した直径において発生する遠心加速度を示しています。

表1:回転速度および設計によって生じる遠心加速度

回転速度が及ぼす影響が、直径の影響を大幅に上回っていることは一目瞭然です。方程式の中では回転数が二乗の値として扱われるのに対して直径は一次の数値ですから、この結果は当然だと言えます。

各フランジの公称(定格)回転数の関連性は、目的とする用途が異なることに起因しています。rpm単位で示した回転速度[3]について、それぞれの典型的なアプリケーション例を下のリストに示しました。:

  • 球体    約0.000694
  • 船のスクリュー(大型の商業用航洋船舶)    70~150
  • ヘリコプターのメインローター    最大400
  • 小型航空機のプロペラ    2,500
  • 50 Hzの電源を使用する2極式誘導電動機    約3,000
  • 50 Hzの電源を使用する2極式発電機(例:欧州)    3,000
  • 60 Hzの電源を使用する2極式誘導電動機(例:米国)    3,000
  • ディーゼルエンジンの最大回転速度    約5,500
  • ガソリンエンジンの最大回転速度    約9,000~最大18,000
  • ガスタービン    3,000~最大10万回転
  • 内燃エンジン用のターボチャージャー    10万~最大30万回転

回転速度および設計に依存した遠心加速度

トルクフランジが、その公称(定格)回転速度で使用されることはそれほど多くありません。
T10FS トルクフランジの例で、様々な回転速度や設計による影響を説明します。


図1:回転速度および設計に依存した遠心加速度

両対数グラフを使用すると、得られる曲線の配列[4]によって、選択された半径における遠心加速度を容易に求めることができます。

例えば、10,000 rpmの回転数と250 mmの半径から求められる遠心加速度は、273,878 m/s2≒27,918 gとなり、約30,000 gであることが分かります。

図2:円経路の配列パラメータ半径r

質量に影響を与えない限り、加速度はそれほど重要ではありません。しかし実際にはそうならないため、遠心力は決定的な重要性を持っています。したがって、角速度/回転速度で回転している構造体を考える場合、加速度自体ではなく、加速度に起因して発生する力を考慮することが必要不可欠です。

良く知られている「力は質量と加速度の積に等しい」という関係

は、以下のように回転する物体にも適用されます。

ここで、遠心力Fzは下の等式によって与えられます。


(N単位の数値Fz、kg単位の数値m、m単位の数値r、rpm単位の数値nを含む方程式)

7.5・10-3 kgの重量を持つ1ユーロのコインと、T10FS/100 N・mのトルクフランジを考えた場合、n=24,000 rpm、r=59.5 mmとなり、この効果をはっきりと示す好例になります。

地球の重力場の中では、この値は約287 kgに相当します。これは、50キロのセメント袋6個分の重量です。そのようなコインは、財布に入れて持ち歩くには重すぎることでしょう。

結 論

加速度にはいくつかの種類があります。回転によって作り出される遠心加速度は、私たちの日常生活の中で発生する加速度の何倍も大きな値となります。回転によって生成される加速度、その結果として生じる力とエネルギーは、想像するのがなかなか困難です。したがって、人身の負傷や物質的な損害を防ぐためには、個々の構造体がこうしたエネルギーに安全に耐えられるようにしなければなりません。これは製造メーカーとユーザーの両方に関わる問題です。

参考文献

[1] Gunter Gebauer: Kalkuliertes Risiko: Technik, Spiel und Sport an der Grenze, Bibliografische Information der Deutschen Bibliothek

[2] Rainer Schicker, Georg Wegener: Measuring Torque Correctly, ISBN 3-00-008945-4, Published by Hottinger Baldwin Messtechnik GmbH, Darmstadt, www.hbm.com

[3] de.wikipedia.org/wiki/Drehzahl

[4] www.siart.de/lehre/zentrifuge.pdf

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