計測チェーンの校正 計測チェーンの校正 | HBM

取り付け作業中は、フォースワッシャに常にプレストレスを与えていなければなりません。これは、 CFW 圧電型フォースワッシャ の場合も同様です。取り付けの完了後、フォースワッシャはフォースシャント(力の分路)の中で機能します。つまり、力の一部はセンサを通過せず、代わりにプレストレス導入装置(例えばプレストレス導入エレメント CPS など)を通過します。

計測チェーンの感度は、プレストレス導入装置の設計によって異なります。一例を挙げると、HBM製のプレストレス導入エレメントCPSセットを使用する場合、CFW圧電型フォースワッシャの感度が7~12%ほど低下します。フォースワッシャの取り付け後は、信頼性の高い感度の決定が可能になるようフォースワッシャの校正を実行する必要があります。

 

校正済みの力変換器を使用して校正を実行する

センサを校正する方法の一つとして、校正済みの力変換器を使用する方法があります。この方法では、力変換器に加えてアンプも必要となります。ストレインゲージを使用した参照力変換器(C18、Z30Aシリーズ)は、この方法への高い適性を持っています。

工業アプリケーション用の力変換器(例えばHBM製の S9M )も、この目的に使用することができます。

参照変換器を選択する際には、後に獲得可能となる精度が校正時の精度(言い換えると基準計測チェーンの精度)を上回る可能性がない点に留意してください。

計測チェーンを校正するための3ステップ

上述のように、センサとして圧電型フォースワッシャ(CFW)を含む計測チェーンは、センサを取り付ける際に必ず校正を行う必要があります。つまり校正手順の実行後は、機械的な取り付け条件が変化してはいけません。この点は、プレストレスについても同様です。

計測チェーンを校正するために必要な3ステップ:

  • センサを取り付けてから感度を決定する。 : N単位で表した力、kgまたは同様の単位で表した質量を、この力をかけた時に圧電型フォースワッシャが生成した電荷を使用して、同時に計測します。感度は、電荷を力で割ることによって容易に計算することができます(感度=電荷/力)。
  • チャージアンプを設定する。:CMD600デジタルチャージアンプでは、計測範囲およびゲインを自由に調整することが可能です。上述の方法で計算した感度をAssistantソフトウェアに入力します。最適な分解能を確保するためには、計測範囲を合理的な値に設定する必要があります。
  • 調整したパラメータを検証する。: 最後にもう一度、計測チェーンを基準計測チェーンと比較することを推奨します。

本稿の以下の各セクションでは、お使いのセンサの取り付けおよびプレストレスの導入が適切に行われていることを前提としています。プレストレスは、フォースワッシャを使用して直接計測することができます。この目的のため、本稿には製造証明書が含まれています。必要に応じて CMD600 上で感度を調整し、プレストレスを希望する値まで増加します。最小値は、フォースワッシャの公称(定格)力の10%です。

CMD600チャージアンプを使用する時は、まずPCに接続してから、CMD Assistantを使用して設定を実行します。CMD600の取扱説明書に記載されている注意事項を順守してください。センサの感度を1に、単位をpCに設定します。この設定を使用することで、アンプは電荷をpC単位で計測します。

上述の方法でCMDを設定します。感度は1とし、センサ信号をpC単位で計測します。これが正しい校正手順の開始方法です。

ステップ1:センサを取り付けてから感度を決定する

チャージアンプにセンサを接続します。計測チェーン全体が周囲環境と同じ温度になっていることを確認してください。校正は必ずチャージアンプの運転開始から2時間が経過してから実行し、慣らし運転プロセスを回避します。

力の流れ全体が変換器内を通過するように基準力変換器を配置します(これによりフォースシャントを回避)。

フォースワッシャ校正作業の一例。ストレインゲージを使用した力変換器を、プレストレス導入済みのCFWと並べて配置します。力センサとして使用しているS9Mから信号が供給され、これをMGCplusによって増幅します。極端に高い精度が要求される場合は、基準変換器の使用をお勧めします。CFWフォースワッシャにはプレストレスが導入されており、S9M力変換器と同時にCFWにも負荷が適用されています。ただし、この方法はほんの一例に過ぎません。実際には、多くの校正方法があります。例えば、ウェイトを使用する方法や、機械的に力を生成し、これをCFWを使用して監視する方法などがあります(プレス、溶接機など)。

また、正しい計測範囲を選択することも重要です。この目的のため、計測チェーンの校正用として使用したい力の値に4 pC/Nを掛けます。フォースシャントに取り付けた圧電センサでは、これが習慣的な感度値となります。この結果におよそ20%を追加し、この電荷の値を物理的な計測範囲としてCMD Assistantソフトウェアに入力します。上述の例では、約500 Nの力で校正が実行され、4 pC/Nの感度では約2,000 pCの信号が得られると予想されます(4pC/N*500 N=2,000 pC)。今回は計測範囲は2,500 pCに設定しました。

校正に使用するは、適切な精度を確保するため、CFWを使用して計測される最大値の30%以上となるようにしてください。また、センサに過大な負荷をかけることは絶対に避ける必要があります。圧電計測チェーンをリセットし、基準計測を開始する直前に基準計測チェーンの風袋計測を実行します。

計測装置に負荷をかけ、基準計測チェーンを使用して力を計測します。CMD Assistantを実行しているPCの画面上には電荷も同時に表示されます。


センサの感度(pC/N)は、以下のように計算することができます。:

当然ながら、力以外の計測量(質量、トルクなど)に対しても同様に校正を行うことができます。

今回の例では、以下の結果が得られます。:

計測チェーン全体の校正には、 CMA シリーズのアンプを使用するよう推奨します。この目的では、チャージアンプの出力電圧を直接計測してください。結果として得られる計測チェーンの感度は以下の値になります。:

ステップ2:アンプを設定する

ここで、感度CMD Assistantに入力することができます。入力には“Sensor sensitivity(センサの感度)”入力欄を使用してください。

次に、“physical input range(物理的な入力範囲)”を指定します。これが計測範囲となります。この欄には、計測したい力の最大値を入力します。万が一、これより大きな力の値が後になって生じた場合、CMDがその電圧出力に力の値を出力することが出来なくなります。

CMAシリーズのアナログチャージアンプを使用する場合は、後に続くエレクトロニクス上でスケーリングを実行する必要があります。

ステップ3:検証

すべての設定が完了した時点で、もう一度、計測チェーンを参照計測チェーンと比較することを推奨します。計測装置をもう一度装着して、両方の計測チェーンを比較してください。