多くのドライバーにとって夢の車 - ウイングドア SLS AMG

ウイングドアを備えたメルセデス・ベンツ SLS AMG は、確かに多くのドライバーにとって夢のような存在です。Mercedes-AMG 社では、その新型スーパースポーツカーを「魅惑の車」そして「最高レベルのハイテク」という言葉で表現しています。しかし、ハイテクが要求されるのはウイ ングドアの製造だけではありません。生産および品質管理全体にも最高レベルの基準が適用されます。一例を挙げると、DURA Automotive Systems Reiche 社が製造するステアリングカプリングは手作業で取り付けられ、それと同時に厳しい品質管理の対象となっています。ここで使用されるのが、HBM の新しい計測技術です。

420 kW の最高出力を生み出す SLS AMG の 6.3 リッターエンジンは、スポーツカーとしては重い 1620 kg の車体をたった 3.8 秒で時速 100 km まで加速させます。時速 317 km のトップスピードでは、電子制御が働いて速度を制限します。

ウイングドアを装備したアルミ製のスペースフレームボディ、7 速ダブルカプリング駆動装置、そしてアルミ製ダブルウィッシュボーンアクスル、これらすべてが一致して優れたドライビングダイナミクスを実現しています。

SLS AMG は、Mercedes-AMG 社が単独で開発した車としては最初のモデルであり、同社の 40 年の歴史の中でも最高傑作と位置づけられています。

手作り生産

ウイングドアカーの最終組立作業は、Sindelfingen 工場で行われています。

生産現場でも高い基準が設定されています。17 万 7310 ユーロという価格もあって、このウイングドアを装備したスポーツカーの生産台数は 1 日あたり 25~30 台に限定されています。アルミ製スペースフレームの製造、エンジンの製作、そして最終組立の工程でも、職人の技能が発揮されます。

グラーツにある Magna Steyr Fahrzeugtechnik 社ではシャーシとボディを製造し、アファルターバッハ(Affalterbach)にある AMG Motorenmanufaktur 社がエンジンを供給し、そしてジンデルフィンゲン(Sindelfingen)にある組立ラインと生産設備には、SLS AMG を組み立てるために最新の設備が整っています。

下請け企業では、生産量が少ないために職人の技能を目にする機会が多くなります。例えば、ステアリングカプリング(新しい SLS AMG システムの中核をなすコンポーネント)は、Lage にある DURA Automotive Systems Reiche 社で生産と取付けが行われています。

Lage の施設に約 100 人の従業員を擁するこの自動車部品サプライヤは、米国に本社があり国際的に事業を展開している DURA Automotive Systems Inc. の一部となっています。Lage で製造されている主なアイテムは、ステアリングコンポーネントとクラッシュ・アブソーバです。

このサプライヤが製造する主な製品グループの 1 つが波形チューブと呼ばれるもので、長いセクションの全体にわたって直径が周期的に変化する部品です。車の前面衝突が起きた時は、この波形チューブが指定通りの変形によって衝突エネルギーの一部を吸収します。

この原理により、衝突時にステアリングカラムが運転席に押し込まれることによる負傷からドライバーを保護します。波形チュー ブは、特殊な成形工程で製造されています。成型エレメントおよび内部の圧力支持を使用し、プレスに似たツールで波形を作り出します。Dura Automotive Systems Reiche 社が開発した波形成形機では、この成型プロセスを比較的低い圧力で実行することが可能です。

ステアリング組立のシームレスな監視

Lenkungskupplung

新しい SLS AMG のステアリングは、 Daimler AG 社が、Mercedes-AMG および DURA Automotive Systems Reiche GmbH 社と共同開発したものです。ステアリングの上部は、Daimler 社がハンブルグ工場で製造しています。

Dura Reiche 社は、Lage 工場でステアリングカプリングを作っています。この部品は、前述の波形チューブに加えて、円滑チューブ、ダブルユニバーサルジョイント、および Lage 工場製または他社から購入した様々な部品から構成されています。ここで使用しているジョイントは等速ジョイントと呼ばれており、ステアリングの精度に決定 的な影響を与えます。

組み立て作業は、特別に設計された仕事場ですべて手作業で行われます。まず最初に、ステアリングカプリングの両方のチューブ を接続するジョイントを点検します。DURA Reiche 工場での、このプロジェクトの責任者である開発エンジニアの Ralf Strothmann 氏は、「ジョイントに使用するテストベンチは、このプロジェクトのために、Reorg 社が当社の仕様にしたがって特別に製作してくれました」と説明しています。

2 つの運動方向におけるジョイントの曲げトルクは、テストベンチ上で計測しますが、ここでは HBM 製の PW4M プラットフォームロードセルを使用しています。テストベンチのプロセスコンピュータが計測データを記録し、曲げモーメントが指定された許容範囲内に収まっ ているかかどうかを判定します。

PW4M プラットフォームロードセル、変位変換器、およびプロセスコントローラ MP85A を使用した、曲げモーメントのプロセス監視およびネジ付きスリーブの圧入

テ ストベンチは、品質をチェックする生産範囲内の他のステーションのデータも取得します。ジョイントの点検後、チューブにはネジ付きの挿入部が取り付けられ ます。挿入部はチューブの末端に横方向に配置された孔に圧入されますが、ここでもHBM の新しい計測技術が使用されています。

圧入の手順は、プロセスコントローラ MP85A(ボックスを参照)を使用して監視されています。この手順により、圧入プロセス実行中の力と変位を記録します。このプロセスコントローラについ てRalf Strothmann 氏は、「私たちにとって特に印象的だったのは実績のある MP85A のウインドウ技術です」と興奮気味に語ってくれました。

計測データは、プロセスコントローラ内で直接評価されます。これにより、計測値が指定されたウィンドウの範囲内に収まっているかどうかを確認します。

組み立て作業の監視は、次の段階(各コンポーネントのネジ接続)でも行われます。DSM Messtechnik 製のドライバを使用して手動でねじ込むネジの、締め付けトルクと回転角を計測して記録します。最後の段階では、組立が完成したステアリングカプリングの長 さに加えて、接続インターフェース相互のトーション角が計測されます。

すべての計測値は、テストベンチを制御する PC が記録および監視を行っています。Ralf Strothmann 氏にとって、プロセスコントローラをテストベンチ環境に統合するというシンプルな選択肢が重要な判断基準でした。「プロセスコントローラは、ステータス、 つまり製品が合格か不合格かという情報と計測値の両方を、Ethernet を経由して中央 PC に送信してくれます。」

100% の追跡可能性

Lage にある Dura Automotive Systems Reiche 社の工場を出て行くすべてのステアリングカプリングには、それぞれ固有の番号が与えられます。Ralf Strothmann 氏の説明によると、「この番号に基づいて、組立作業中に組立と計測が行われた時間を正確に判定することができます」。

このことは、顧客に対して完全な追跡可能性が保証されていることを意味しています。SLS AMG のステアリングカプリングに使用するアセンブリやテスト機器類は、主として Dura Reiche 社 が設計と製造を行っています。Reorg 社が完全に供給しているのは、ジョイントの曲げモーメントを計測するためのテストベンチ(制御用 PC とソフトウェアを含む)のみです。

他のステーション上での試験用設備の製造、およびそれに続く組み込みは、Dura Reiche 社が実施しました。自動車部品のサプライヤがコンポーネントを選択する際に重視するのは、試験システムとの接続が複雑でないことです。

Ralf Strothmann 氏は、MP85A の使用を決定したことについて以下のように説明しています:「過去に HBM 製の小型プロセスコントローラを使用したことがあって、すでに良い印象を持っていました。」

現時点では、平均して 1 日当たり約 25 個のステアリングカプリングが Lage の工場から出て行きます。次にこれらのカプリングは、ハンブルグにある Sindelfingen 工場で製造された部品と一緒に SLS AMG のステアリングシステムに組み込まれます。

最新の HBM 製計測技術のおかげで、このウイングドアカーを運転するドライバーは、自分のスポーツカーに使われている安全関連部品が最高の品質と精度で生産されているという事実に信頼を寄せることができます。

圧入プロセスを監視する

生産および組立工程の中で、HBM 製のプロセスコントローラ MP85A は、圧入プロセスの監視にも使用されます。接続されている変換器から計測値を取得し、その値を直接コントローラ内で評価します。これにより、生産段階の品 質に関する直接的な説明書(訳注:direct statement)を作成することが可能になります。

このプロセスコントローラは、フィールドバスインターフェースまたは Ethernet を経由して、上位のシステムにシームレスに組み込むことができます。全体的なステータス(製造した部品の合否)に加えて、例えば圧入プロセスの完全な分布 曲線や、最大 9 個までの評価ウィンドウを送信することができます。データは、ウェブブラウザからリアルタイムで確認することが可能です。

これにより、機械のある場所に直接人員を配置することなく、圧入プロセスをライブで監視することができます。また生産中に問 題が発生しても、迅速に対応することが可能です。エラーメッセージが出力されると、生産の責任者には SMS または電子メールで自動的に情報が通知されます。

こうした迅速なエラー評価により、製品品質を向上させることが可能になり、その一方でリコールに関わるコストを低減することができます。

計測値のトレンドの判定などを目的として、データを詳細に解析することも可能です。これにより、不良品が生産される前に、初期段階で問題に対応することが可能となります。さらにデータはすべて長期の保存が可能なため、製造した部品のシームレスな追跡可能性が保証されます。

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