ホール・ドリル法(穿孔法)による残留応力の計測

イタリアのフローレンスに本拠を置く SINT Technology 社は、HBMと提携してホール・ドリル法(穿孔法)による残留応力計測のための自動化システム MTS 3000 開発及び製造しています。

残留応力は、さまざまな原因によってどの機械構造物にも存在する可能性があります。これは、コンポーネントの製造に使用される塑性変形や溶接などの技術的プロセス、あるいは鋭い切欠きまたはショット・ピーニングや表面硬化のような何らかの方面処理に起因する材料の局所的な変形によって生じる場合があります。

残留応力は、構造物の強度に対して一般的な機械的応力と同じ作用を及ぼします。しかし、外部荷重による応力は一定の精度で計算できますが、残留応力は予測が困難です。したがって、表面の損傷を最小限に抑えながら残留応力を直接計測できる、信頼性の高い方法を備えることが非常に重要です。

そのために、ホール・ドリル法(穿孔法)が開発されました。基本的にこの方法では、ロゼッタストレインゲージの中心でコンポーネント 材料に小さな穴を開けます。除去された材料近くの残留応力が減少するため、ストレインゲージによって表面ひずみを計測できるようになります。次に適切な数 学モデルを使用し、計測された変形を元にして提言した残留応力を評価します。

MTS 3000 システムの構成は以下の通りです。:

  • 光学-機械的システム(物理的に穴を開けるため)
  • 電子制御ユニット(光学-器械的システムとHBMの Spider-8-30 アンプによる計測を制御するため)
  • ホール・ドリル法(穿孔法)の操作及び制御ソフトウェア(ホール・ドリルを自動化するため)
  • 再処理ソフトウェア(別の評価方法でデータを再処理するため)

穴は400,000 RPM で回転する空気タービンを使用して開けられるため、ドリル中に残留応力が加わることはありません。

再処理ソフトウェアにより、計測されたひずみから材料中の残留応力を計算できます。


実際の応力状態を最も正確に表現するには、逆算法の選択が非常に重要です。多くの研究者が、ホール・ドリル法(穿孔法)を説明した多くの文献でこれまで貢献してきており、現在も貢献を続けています。

現在、再処理ソフトウェアには、均一応力法、Kockelmannの方法、及び積分法という3種類の逆算法が組み込まれています。

均一応力法 [ASTM 規格 E 837-01]

ASTM 規格 E 837-01 に記載されているこの方法は、応力が部材表面からの距離によって変わらないという仮定に基づいています。したがって、この方法では空間分解能は考慮されま せん。それでも、計測された残留応力が均一であれば、この方法は試験誤差の影響を最も受けにくい為、最善の選択肢になります。

Kockelmann の方法

Kockelmann の方法は、ひずみの微分係数と応力分布の間に、穴の深さの関数として表される相関関係が存在するという理論に基づいています。結合は、応力とひずみを関連付ける1組の係数(Kx と Ky)がシミュレーション・モデル上で計算されて形成されます。

この応力の値から、Mohr の円を使用して主応力と角度を計算できます。

積分法

G. S. Schajer が提唱したこの方法では、ホール・ドリル(穿孔)が深くなる毎に残留応力を解析します。この方法では、全ての深さで計測された合計ひずみ緩和に対する応力の寄与が同時に考慮されるため、他の方法より高い空間分解能が得られます。

Schajer は、残留応力評価問題を単純化するために、応力場はそれぞれの部分的な穴の深さを通じて、値が一定となる階段状の関数を使用して記述できることを提唱しま した。Schajer はこの仮説によって、計算に使用する数値係数を定めました。この方法で使用可能な最大深さは、試験に使用するロゼッタゲージの平均半径0.5倍です。

積分法は、残留応力が深さによって大きく変化することが予想される場合に選択すべきですが、試験誤差の影響を最も受けやすい方法でもあります。

新しい ASTM 規格 E837-08

不均一な応力の計算法が導入された、残留応力に関する新しい規格が制定されました。この計算に積分法が使用され、穴の深さのデータ数が多い場合に、計算した応力に含まれる誤差を Tikhonov の正則化を使用して低減できます。

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