ホール・ドリル法(穿孔法)による残留応力の計測 ホール・ドリル法(穿孔法)による残留応力の計測 | HBM

残留応力計測システム MTS3000

外見上何も見えない場合でも、部品の強度や挙動は残留応力による影響を受けます。ひずみゲージにより解放応力を測定し、その計測値をベースに残留応力を計算します。

本システムは35万回転/分のエアタービンドリルを使用し、そのドリルは高精度なステッピングモータで制御され、段階的に試験片を穿孔していきます。穿孔により解放された応力は本システム用に開発されたロゼットひずみゲージを使用して計測されます。

信号処理はデジタルで行われます。システム制御に加え、ソフトウェアには4種の評価アルゴリズムが提供され、機械的応力が計測チェーンにより算出されます。計測プロセス全体がPC制御され、信頼性、再現性の高い計測が確保されます。

残留応力:内部応力の演算

残留応力は外部応力が全くない場合でも材料内部に存在している応力のことをいいます。鋳造部品の冷却工程が安定していない場合や、溶接、鍛造部品、機械加工ののプロセスで残留応力が発生します。ひずみゲージを利用した残留応力の評価方法は、リングコア法とホールドリル法の2種類です。

2つに共通する特徴は、試験片にロゼットひずみゲージを貼り付け、機械的な加工を行う点です。この加工で内部応力が解放され、その解放応力をひずみゲージで計測、さらに計測したひずみデータから残留応力を計算します。

リングコア法の場合、ひずみゲージの周りにリング状の溝ができます。一方SINT Technology社のMTS3000ではホールドリル法が採用されています。35万回転のエンドミルが穿孔速度、穿孔深さをステッピングモータで制御 されます。段階的に穿孔する途中で変化する解放応力をひずみゲージが検出します。

MTS3000シリーズならびに残留応力の演算のいずれも、世界で唯一の残留応力に関する規格であるASTM E837 standard version 2013に準拠しています。

残留応力解析システム:MTS3000+QuantumXシリーズ:

均一応力法 [ASTM 規格 E 837-01]

ASTM 規格 E 837-01 に記載されているこの方法は、応力が部材表面からの距離によって変わらないという仮定に基づいています。したがって、この方法では空間分解能は考慮されま せん。それでも、計測された残留応力が均一であれば、この方法は試験誤差の影響を最も受けにくい為、最善の選択肢になります。

Kockelmann の方法

Kockelmann の方法は、ひずみの微分係数と応力分布の間に、穴の深さの関数として表される相関関係が存在するという理論に基づいています。結合は、応力とひずみを関連付ける1組の係数(Kx と Ky)がシミュレーション・モデル上で計算されて形成されます。

この応力の値から、Mohr の円を使用して主応力と角度を計算できます。

積分法

G. S. Schajer が提唱したこの方法では、ホール・ドリル(穿孔)が深くなる毎に残留応力を解析します。この方法では、全ての深さで計測された合計ひずみ緩和に対する応力の寄与が同時に考慮されるため、他の方法より高い空間分解能が得られます。

Schajer は、残留応力評価問題を単純化するために、応力場はそれぞれの部分的な穴の深さを通じて、値が一定となる階段状の関数を使用して記述できることを提唱しま した。Schajer はこの仮説によって、計算に使用する数値係数を定めました。この方法で使用可能な最大深さは、試験に使用するロゼッタゲージの平均半径0.5倍です。

積分法は、残留応力が深さによって大きく変化することが予想される場合に選択すべきですが、試験誤差の影響を最も受けやすい方法でもあります。

新しい ASTM 規格 E837-08

不均一な応力の計算法が導入された、残留応力に関する新しい規格が制定されました。この計算に積分法が使用され、穴の深さのデータ数が多い場合に、計算した応力に含まれる誤差を Tikhonov の正則化を使用して低減できます。

Flyer Residual Stress Measurements