有限要素解析を補完するには実物での試験が必要

ほとんどの電気系エンジニアはひずみ計測に、大きな関心を示しません。彼らは、構造体の完成度より電気的信頼性について興味を持つのが普通です。しかし、航空宇宙用の部品や、半導体処理装置を開発するほとんどのエンジニアにとって、ひずみは重要な計測項目です。もし、構造体が形状を維持できないような設計がされた場合は、電気系統がどんなによくても、意味がなくなります。

構成要素数の増加や構造的・機械的要素の高度化は、ひずみ計測のさらなる高度化を求めています。伝統的なストレス・ひずみ方程式はシリンダーやビームなど、単一の材料でできているものには適応しやすいのですが、変則的な構造物や複合材料でできているものでは問題が生じます。

さらに、生産者が製品のサイズや重量を小さくする傾向にあるので、構成部品は強度限度近くまでストレスがかかりがちです。このため、計算やコンピュータモデリングで得られた強度限界に対するエラー許容度が小さくなるので、実際に高精度な物理的計測の必要性が高まっています。

自動車、医療用機器、半導体処理装置、スポーツ器具などの設計や試作品の作成においては、近年、ひずみ計測をミクロン領域の分解能(測定距離1mm当たり1mmの100万分の1のひずみ)で行うことが必要になっています。航空機フレームやトラックのシャーシなどでは、以前は10~100µst(microstrain)のひずみ計測を50か所でやっていたものが、今日では、1~10µst領域のひずみを150か所で計測するようになってきています。

HBMが経験のある2つの例があります。1番目の例は、半導体の結晶生成䡎においてロードセル上にひずみゲージを使用して、成長するクリスタルの重量変化を計測しています。ここでは、ひずみ計測分解能は1.06µstが必要です。 2番目は、飛行機の着陸装置のリムに対して、新期設計の軽量部品の性能確認に、同様なレンジのひずみ計測分解能を必要としています。重量対強度比を最適化するために様々な壁厚みを試すうえに、形状が非常に変則的なので、このリムのストレスを重要ポイントで数値化するモデル化や演算処理ができないことがあります。この場合、実際に高精度なひずみ計測をすることにより、部品重量を数百グラム削ることができました。

 

試験装置の設計

それでは、高精度なひずみ計測で、良好な結果を得る方法は? まず、試験で何を知りたいのかはっきりすることです。これは、当たり前のことですが、意外と実行されていない場合があります。

例えば、セラミック股関節インプラントの設計者は、試作ソケットのひずみ計測用に、ひずみゲージとアンプを注文するためにHBMに相談しました。どの方向のひずみに最も興味を持っているのか尋ねると、方針が決まっていなかったので、我々は最終的に、一度に3方向のひずみを測定できるロゼットを選択しました。

知りたいことが確認できたら、以下の3つの基本ステップを参考にして、ひずみ計測システムを構築してください:

Ÿ  正しいひずみゲージを選択

Ÿ  正しいアンプを選択

Ÿ  全てを適切に設置

もし、股関節のような複雑なプロジェクトの場合は、早い段階で相談することをお勧めします。間違ったスタートを避けることにより、時間と費用の節約になります。

 

ひずみゲージの選択

単独のミクロン領域のひずみ測定で、唯一の現実的な選択は、フォイル型の抵抗ひずみゲージです。半導体ひずみゲージが安定した条件の下で正常に動作しますが、特に温度変化または照度の変動など数多くの原因で計測エラーが生じやすい面があります。

フォイル型ひずみゲージは長さの変化に比例して抵抗値が変動します。ホイーストンブリッジでは、抵抗値の変動は非常に高精度で安定した比例信号を発生します。抵抗体は通常コンスタンタンですが、CrNiの場合もあります。ひずみゲージはまた様々な抵抗値、長さ、形状のものがあります。

以下の8個のガイドラインがほとんどのよくある問題点をカバーしています:

Ÿ 複合材料やその他の不均一な材料でできているものに対しては、できるだけ長いひずみゲージを選択してください。長さが長いほど、測定対象全体に対して、真のひずみを得る確率が上がります。

Ÿ 湿度の高いアプリケーションに対しては、可能な限り低い抵抗値を選択してください。より低い抵抗は、湿度による断熱材の膨潤に起因する誤差を相殺します。

Ÿ 凹凸やストレス集中領域の周りのひずみ測定では、できるだけ小さいひずみゲージを選択。ひずみが集中している部分のより高い真値が得られます。

Ÿ 環境温度のアプリケーションに対しては、コンスタンタン製のひずみゲージを選択。200℃を超える場合は、CrNiゲージを使用。ゲージが配置されている、周辺温度でなく表面の温度に注意してください。22℃の気温の日でも、日光にさらされた金属面は温度が高くなります。

Ÿ 長期期間の繰り返しひずみテストにはCrNiひずみゲージを使用。CrNi はコンスタンタンより長寿命です。

Ÿ カプセルに封入されたゲージを使用。 カプセル化でゲージが保護され、不用意な取扱いによる破損を防げます。

Ÿ 配線済みのゲージを使用。半田付けや設置時間を節約して、ゲージ設置時の破損リスクを減少させます。

Ÿ 主たるひずみの方向がわかっている場合は、一軸ゲージを使用。わからない場合は、ロゼットやサイド·バイ·サイドゲージを使用。両方とも、一軸、二軸、および、せん断ひずみをポイントで計測します。

 

アンプの仕様について

正しいひずみゲージを選択するのと同様に重要なのは、アンプの選択が、高い精度を得るためには非常に重要です。ひずみ計測の精度はゲージの信号を処理するアンプの精度を超えることはありません。(しかし、ゲージ選択や設置上のミスはアンプで補正できません)

アンプの使用を注意深く比べると、大きな違いが分かります。その違いが性能を大きく左右します。以下に、最良のアンプを選択するヒントを述べます:

  • Ÿバスの周波数と分解能が最重要仕様項目です。高速バス周波数により過渡現象を捕捉できます。分解能は、ひずみゲージからのアナログデータの保存精度を決めます。アンプの分解能特性がひずみ計測の精度に一番影響をもたらします。

    最高の計測精度得るには、分解能24ビットで高速バス周波数を使用してください。例えば、19.2-kHzのアンプは 航空機体の1ms の瞬間的な過渡現象を記録できますが、遅いアンプでは完全に見逃します。ほとんどの輸送用構造物の過渡現象はこれぐらいの高速で起きています。

    Ÿ 汎用性を得るには、搬送波とDCモードの両方が使用できるアンプを使用してください。可能ならかならず、搬送波モードでひずみテストを行ってください。このモードは、長い配線からくる損失や電気的・熱的要因などによるノイズ源の影響からデータを自動的に防御します。より正確なデータを記録や分析に使用できます。

    Ÿ アンプが2線式、3線式、4線式の連結(図1参照)を処理できることを確認。このような配線処理は、配線距離が長い時に精度を改善します。(配線に関する詳細は、次の、システムの設置を参照)

    Ÿ 堅牢性を比較。アンプにはいろいろあるので、可能なら堅牢な構造を持つアンプを選択。フレームの作りを見る。カードを出し入れする。長期間現場での厳しい環境に耐えることのできるアンプが必要です。

    Ÿ 設定を簡略化するためには、組み込み式の表示や制御部を持つアンプを選択。 現場で、状況を監視するためにアンプで直接情報を得る。この段階では、PCを使用しない。

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システムの設置

可能な限り頑丈に作られていても、ひずみゲージは慎重に取り扱う必要があります。特に、平面を維持し、ゲージの上には何も置かないでください。設置に際して、心に留めておくべき4つの注意点を以下に述べます:

Ÿひずみゲージとアンプ間の長いアナログ配線は、電気ノイズや配線ロスの影響を受けやすく、エラーが生じる可能性があります。ケーブルの長さは、できるだけ短くしてください。 3または4線式結線だけでなく、中間にアナログ・デジタル変換器の使用を検討してください。

Ÿ設置面の調製は、ひずみ計測(図2)を意味のあるものにするために必須です。表面が完全にクリーンで滑らかである(16マイクロインチ仕上げを推奨)ようにして、ゲージが直接、計測する材料部分に接触していることを確認してください。そうしないと、期待通りの計測をすることはできません。ツールマークや類似の凹凸は、ゲージを変形させて破壊したり、エラーを生じたりする可能性があります。材料本体に対して、サンダー仕上げやグリットブラストで表面研磨をすることをお勧めします。

常温硬化接着剤は便利であり、常温での短期間のテストに適しています。しかし、複数ヶ月間におよぶ連続テストを計画したり、ゲージがインストールされている箇所が加熱されたりする可能性がある場合は、熱硬化性接着剤を使用してください。

Ÿリード線を接続する場合は、過熱でひずみゲージを傷つけないように注意してください。接合点を調べて適切にハンダ付けされてことを確認してください。 不良はんだ接合部は、抵抗による誤差をうむ可能性があります。

 

結露を検出

所定の位置に適切な機器を設置した後でも、測定に影響を与える可能性のある要因に気を配る必要があります。最近、我々は顧客とともに、屋外にある航空機の翼に対する負荷とひずみテストを準備して、翌日に試験開始をするプランを立てました。 すべてのひずみゲージは、所定の位置に設置され、アナログケーブルは長さを低減できるように適切に配線され、精密計測用アンプへの配線をすべて完了していました。しかし、翌朝、システムは負荷がないにもかかわらず、ゆがみの変化を記録していました。それは一晩で翼表面に結露が生じて、その重量による、ひずみを測定していたことが判明しました。

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