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印刷プレスにおける力計測でのデジタルの利点 - FTDコンテナおよび Device type Managers を使用した資産管理

輪転印刷プレスでは、常にできる限り一定の張力で用紙を保持する必要があります。この方法によってのみ、紙がしわになったり折れ曲がったり、あるいは裂けてしまうことを防ぐことができます。それだけでなく、巻き取り紙(ペーパー・ウェブ)が正しい範囲内にあると仮定した場合には、これこそ最高品質の印刷結果を得るための唯一の方法となります。世界最大の印刷プレス製造メーカーの一つである Koenig & Bauer 企業集団がHBMの計測技術に依存する理由は、まさにここにあるのです。

 

 Koenig & Bauer AG (KBA) は、新聞や広告印刷用の輪転印刷プレス、枚葉給紙式オフセットプレス、およびデジタル印刷と特殊用途プレスの製造を行っています。KBAグループは、世界 中で約8,300人の従業員を擁しており、ドイツのヴェルツブルクにある本社では、開発チームが既存の印刷プレス技術を継続的に改善するために努力してい ます。KBAはプレス印刷機を世界各地に供給しているため、継続的な開発作業では試運転の簡略化や遠隔メンテナンスの可能性といった課題に重点を置いてい ます。KBAでは、昨年になってようやく計測技術をアナログからデジタルに転換しましたが、現在では同社に適合した Device type Manager (DTM)およびFDTフレームアプリケーションの導入によってさらなる最適化が実行に移されており、プレスのモニタリング精度の大幅な向上と効率的な資 産管理が可能になっています。

 

計測の原理

 

 巻き取り紙の張力は、印刷プレス内の、いわゆるガイドローラーの位置で計測されます。このため HBM製ストレインゲージ(SG) はガイドローラーが取り付けてあるベアリングジャーナルに固定されています。巻き取り紙からガイドローラーに伝達される力によってベアリングジャーナルが変形すると、ストレインゲージ が信号を生成します。ストレインゲージの接続部は、信号アンプ に並列で接続されています。この方法によって両方のベアリングジャーナルの ストレインゲージ 信号を決定することが可能となり、信号アンプが出力信号を供給し、その信号を使用して結果の制御を行います。

 

 

新型デジタルアンプ

 

 この目的には HBMのdigiCLIP DF30DPデジタルアンプ を使用します。このアンプが供給する絶対力値は、巻き取り紙の幅やガイドローラーのラップ角など既知の幾何学的な変数と共に、巻き取り紙の張力(巻き取り紙の幅に関連する)に直接変換することが可能です。KBAの計測技術部門の責任者であり、巻き取り紙の張力計測の開発を担当する Holger Engert氏は、「この新技術の最も大きなメリットは、手間のかかかる機械的な校正作業を完全に排除できることです。」と言います。これによって試運転中の貴重な時間と経費を節減することができます。

 Holger Engert氏は次のように要点をまとめています。「校正済みの ストレインゲージ が付属した完全に組立済みのベアリングジャーナルをHBMから取得できたことに、私たちも初めは驚きました。しかも以前のサプライヤより価格が安かったのです。」

 

 

制御コンセプトへの簡単な組込み

 

この アンプ では Profibus DPインターフェースが使用可能なため、印刷プレスの一次制御コンセプトにとても容易にアンプを組み込めます。それぞれに巻き取り紙ごとに4箇所の計測ポイントが設置されています。1台の印刷プレスには最大で12個の巻き取り紙を収納することができるので、計測ポイントの最大数は48となります。コンピュータ技術に基づいた制御レベルでの通信はEthernet経由で実行されます。

 これにより、例えばVPNなどを使用した印刷プレスの遠隔管理も可能となります。デジタルアンプはこの目的のためには理想的だと言えます。一次制御は、巻き取り紙の張力に関する制御パラメータをいつでも読み出すことができます。また、従来のアナログ技術では不可能なことでしたが、遠隔管理のために一次制御にアクセスすることも可能です。

  Holger Engert氏は、「私たちは世界中に当社製の機械を販売していますので、リモートコントロールでそうした多くの機械の保守ができることはとても大きなメリットです。」と強調しています。例えば機械に問題が発生し、ドイツからプロセスパラメータやプロセスステータスを点検しなければならない場合にも、サービスにかかる経費を節減することができます。サービスエンジニアはVPN経由で機械制御への完全なアクセスができますから、計測や制御コンポーネントのための診断をほんの数分で実行することが可能です。したがって、考えられるどのような障害でも現場で特定して解決することができるのです。長期的には、設置作業の量を削減するのに役立つでしょう

 

 

Device Type Manager

 最初に触れたように、新しく導入した Device type ManagerdigiCLIPアンプ用としてHBMが特別に開発)にも有益な部分はあります。DTMは、プリンタのドライバがコンピュータに対して果たす役割とほぼ同じ方法で作用します。DTMには、digiCLIPアンプ のパラメータ化に加えて、運転や診断に必要な機能がすべて含まれています。Bosch Rexroth からのKBA製IndraWorksが、FDTコンテナ(Field Device Tool)として使用されており、すべてのDTMがこの上で実行されます。サービスエンジニアは、現在ではDTM上でダブルクリックするだけで、取り付けてあるすべてのdigiCLIPアンプのステータスレポートをセントラルポイントで受信することができますから、詳細な診断を直ちに開始することが可能です。FDTコンテナとDTMを使用した試験はほぼ完了しており、印刷プレスの試作品が高い信頼性で作動しています

 Holger Engert氏は、DTMのメリットについて次のように述べています。「私たちは、巻き取り紙の張力測定ポイントのパラメータ化と モニタリングを行うために、プログラムコードを一行も書くこともなく、製造メーカーに依存しないFDTフレームアプリケーションの中で、HBMソフトウェ アの ”digiCLIP Assistant” に含まれる機能をすべて完全に利用することができました。」

 最後にHolger Engert氏は「試作品段階の実施中、HBMの担当チームから受けた有効で適確なアドバイスは、新技術への移行を問題なく行うために大変役立ちました。」と述べています

 

 

digiCLIP アンプ

 

 HBMの digiCLIPアンプ  は、産業環境でのオートメーション用途にまさに理想的だと言えます。この計測技術は雑音がなく安定しているという点でモジュール形式の特徴を示しており、計測の質も非常に優れています。キャリア周波数モジュールは力、ひずみ、トルク、圧力といった変数について、信頼性が高くノイズのない計測値を提供しれくれます。ユーザーはたった数秒で失敗なくセンサ技術をアンプに適応させることが可能です。各モジュールに通信用の ProfibusDPインターフェース が付属しており、パラメータ化や計測値の取得、さらに遠隔診断およびバックアップなどに利用することができます。別売りのProfibusアダプタモジュールも用意されており、これによりProfibusとの標準接続が可能です。

 各モジュールには、制限値、瞬間値、あるいはピーク値といった計測信号から得られる実用特性量を計算するためのデジタル信号プロセッサが内蔵されています。この強力な信号処理は自己監視機能を 備えており、後続のオートメーションシステムにかかる負担を軽減します。これは、分散型構造を実現するための簡単な方法の一つです。現在、この Device type Manager (DTM)は無料で使用することが可能で、取り付けられているすべての digiCLIPアンプ のパラメータ化や操作、診断などの作業を、セントラルポイントから行うためのグラフィックユーザーインターフェースも備えています。