高精度は高効率 高精度は高効率 | HBM

特に精度の高い変換器を使うと新しく用途分野が拡がる理由

高精度の変換器を使用することで、力計測技術にとって全く新しい用途での使用が可能になります。その理由は、例えばHBM製の S9M S9Mのような製品では、計測結果の有意な効果に影響を及ぼすことなく計測チェーンの過負荷を非常に高く設定することが可能になるからです。

他にもまだメリットがあります。力変換器は多くの異なる計測タスクに合わせて柔軟な使用法が可能です。このことが、高精度の力変換器は単なる技術的な傑作であるばかりではなく、確実な経済的メリットも与えてくれることを示しています。力の計測中に発生する可能性のある誤差の原因を詳細に調べてみると、これが明らかになります。

高精度の力変換器を使うメリット

HBM製のS9Mのような最新の力変換器は、最高レベルの精度を実現しています。直線性誤差相対可逆性誤差温度の影響は、終値と比較して0.02%未満となっています。たとえ計測する力が小さくても、こうした優れた数値が変換器の使用を魅力的なものにしています。:

  • 計測チェーンは、例えば力変換器への損傷の防止などの目的で、高過負荷用に設定することができます。S9M力変換器は、公称(定格)力の20%のみを使用している場合でも、ほとんどすべての条件下で有意な結果を得るのに十分な精度を実現しています。精度クラス0.1%は仮想的な終値と見なすことができます。
  • 上記の考察に基づいて、用途範囲拡大することができます。具体的には、センサを変更することなく様々な計測タスクをこなすことが可能となり、設置や配列にかかる時間を低減します。これは、1台の変換器で、低いパーセンテージから公称(定格)力の最大限まで広範な力スペクトルを扱うことができるからです。

考えられる誤差の発生源

「なぜこんな結果が出るのだろうか?」と感じた時、その原因を理解するためには、考えられる誤差の発生源を力計測の実行中に見つけ出すことが重要です。ストレインゲージに基づいた力変換器(S9Mなど)の場合、発生可能な誤差グループが2種類あります。:

  • 負荷に依存しない誤差:加えられた力に依存しない特定の出力信号を生成する誤差
  • 実効値に依存した誤差:誤差の大きさが評価時に加えられていた力に比例するもの

ゼロポイントに対する温度の影響は、負荷に依存しない誤差の一例です。この計測偏差は、計測された力の値とは無関係に特定の値を出力します。特定の誤差が出力信号と相対的な関係にあると考えられる場合、公称(定格)力のほんの一部だけを使用している時には、常にゼロポイントに対する温度の影響(TKZero)が特に大きくなるという現象が見られる可能性があります。絶対値は常に同じです。しかしこの状況では、相対的に割合が小さく有用な信号によって絶対値が増大します。

TKZeroに加えて、直線性誤差も終値と相対的な関係にあります。

実効値と相対的な関係にある誤差(実効値に依存する誤差)は、実際に適用された信号に対して相対的に算出されます。これには例えば、感度の温度に対する依存性(TCS)やクリープだけでなく、実施された可能性のある校正の許容誤差さえ含まれます。

誤差を評価する時は、個々の誤差が幾何学的に追加されます。つまり、計測精度における大幅な改善が実現するのは、個々の誤差のうち最大のものが改善される場合に限られます。多くのケースでは、TKZeroと直線性が極めて重要です。これらの誤差は終値、つまり公称(定格)力をすべて利用した時の出力信号と相対的な関係にあるため、これらのパラメータの改善は特に有効です。さらに、いわゆる部分負荷領域における力変換器の使用、つまり公称(定格)力の信号を部分的に活用することが可能になります。

HBM製のS9Mの登場で力計測の新しい用途が拡がる

HBM製の力変換器S9Mは、TKZeroを提供する他に、終値に対して200 ppmちょうどの線形性を提供します。このような力変換器を公称(定格)力の20%で使用した場合、加えられた力と相対的な関係にある、直線性またはTKZeroが原因で発生する誤差は、かろうじて0.1%になります。このことは、S9Mのような力変換器を選択した場合、結果の有意性に関する大きな不利点を受け入れることなく、計測チェーン高い過負荷に設定することが可能なことを示しています。

より高い公称(定格)力では、 U10 のようないわゆるパンケーキ型の力変換器が選択肢となります。このタイプの力変換器は、公称(定格)力に対して300 ppm以上の相対可逆性誤差と、非常に有利なSG配置によってわずか150 ppm/10KとなるTKZeroを実現しているからです。

図1に、精密な力計測のための追加的な考察を示します。品質管理を目的として計測される力は、X軸上に表示されています。生産された部品の数は、Y軸上に表示されています。生産部品の分散は、ガウス分布の釣り鐘曲線にしたがって分配されています。許容誤差を示す緑色のラインはグラフ内に入力され、力計測値の計測の不確さは、で示した限界の左側と右側に見ることができます。


図1:高精度および低精度の力計測システムを使用したプロセスのモニタリング

プロセスを評価するためには、変換器の計測精度を推測する必要があります。良否の評価を実行するには、そのコンポーネントが、計測許容範囲(グラフ上に青い斜線の付いたラインで示した範囲)より低い、セットポイントの範囲内にある場合にのみ「OK」と評価した方が良いでしょう。

計測精度が高くなると許容水準の部品の数が増えるということは簡単に分かりますが、これは言い換えると、不合格になる部品の数も力計測チェーンの計測精度に依存しているということです。

HBM製のS9MまたはU10Mのような最新の力変換器は、このクラスの標準を優に上回る高い精度を実現していますが、これは特に、終値に依存した計測不確実性に対する影響要因という点に関して顕著です。さらに、部分的な負荷領域での運転を通して計測チェーンを使用することも考えられ、その場合は過負荷に対する許容範囲が大幅に増大します。その結果、信頼性の向上が実現します。何よりも、ゼロポイントに対する温度の影響が最小限となることで同じセンサを様々な計測範囲で使用することが可能になり、また高い精度によって優良部品の割合が増大する可能性もあります。