Perceptionソフトウェアを使用した電力値の計算

産業用途における電気駆動装置の評価/検査向けや、ハイブリッド自動車および電気自動車向けに、正確かつ極めてダイナミックな電力計測が求められています。ここではまず、分かりやすくするためいくつかの例を使用して、最も重要な電力値について考えます。このレポートは、HBMのGEN2iデータ収集システムを利用して、電力計測用にPerceptionソフトウェアで演算式を使用することに重点を置きます。

はじめに

図1.1:電圧と電流のカウント矢印を使用した2線式ネットワークの回路図

電気モータ等の電気機械は、電気エネルギーと機械エネルギーの変換を行います。エネルギーの流れる方向は、そのモータがどのように使用されているかで決まります。モータとして働いている場合、電気エネルギーが機械エネルギーに変換されます。反対に発電機として働いている場合、、機械エネルギーが電気エネルギーに変換されます。エネルギー変換器は、変換されるエネルギーによって単純に特定されるのではなく、単位時間当たりに変換されるエネルギー量によって特定されます。このエネルギー量を瞬時電力またはp(t)と呼びます。

(1.01)

図1.1に、エネルギー源とこれに対応する負荷装置を含む2線式ネットワークを示します。印加電圧u(t)と消費電流i(t)は、計測点で計測できます。瞬時電力は、これらの変数値の積として算出されます。

(1.02)

図1.1に示すコンシューマのカウント矢印を使用したシステムは、瞬時電力が正(p(t)>0)のときにコンシューマが電力をいかに吸収するかを示しています。一方、瞬時電力が負(p(t)<0)の場合には、コンシューマがソースに給電します。

サイクルTの全期間にわたる瞬時電力p(t)の平均値を、電気工学において有効電力Pと呼びます。

(1.03)

計測した電流曲線と電圧曲線から、Perceptionソフトウェアを使用して有効電力、無効電力、皮相電力を求めるプロセスを以下に示します。


Perceptionソフトウェアにおいて、Perception演算データベースから抜粋した以下の例(1.04)を使用して式(1.03)を実行します。

(1.04)

正弦波のAC電圧システム

Fig. 2.1: Power values in an AC voltage system, calculated with Perception (Perception users have access to the formulas via the Workbench: AC_power_1.pVWB; this file is available for download from the HBM website).

図1.1に示した、線形素子を含む回路を流れる電流と定常状態における正弦波電圧も正弦波です。

電流と電圧の位相のずれは、コンシューマのインピーダンスによって生じます。これらの条件が満たされると、瞬時電力は以下の式で算出されます。

(2.01)

(2.02)

 

図2.1に瞬時電力p(t)のグラフを示します。Perceptionソフトウェアを使用して、時間曲線に加えて他の電力値を計算できます。そして、その結果を「Workbench:AC_power_1.pVWB」で検証します。瞬時電力p(t)は、その平均値に近い値を中心に角周波数ωの2倍(2ω)で振動します。平均値は、負荷装置が吸収する有効電力に等しくなります。

(2.03)

有効電力は、瞬時電力p(t)の平均値を使用してPerceptionソフトウェアで計算できます。この平均値はサイクルTの全期間を基に、周期的に算出されます。@CycleMean( )コマンドを使用してこの作業を行います。サイクルの全期間を正確に検出することが重要であるため、@CycleDetect( )コマンドで電流曲線を分析します。このコマンドによって時間関数Cycleが生成され、変動の正の半分については1が、負の半分については-1が返されます。この方法は、サイクルの全期間が正確に検出されているかどうかを検証するのに便利です。

電気エネルギー技術において皮相電力Sは、伝送装置(ケーブルや変圧器など)や電力変換器(電気機械)を設計するうえでのおおまかな目安になります。皮相電力の計算には、電圧の実効値Urmsと電流の実効値Irmsが必要です。次の計算により、正弦値と余弦値の実効値が得られます。

(2.04)

皮相電力は電圧の実効値と電流の実効値の積より算出されます。

(2.05)

無効電力Qは次式で求められます。

(2.06)

皮相電力に対する有効電力の割合を力率と呼びます。

(2.07)

力率によって、エネルギー変換を評価します。力率の値は、0~1の範囲に収まります。正弦値では、力率λは電圧と電流の位相ずれの余弦cosφに等しくなります。力率λ= 0の場合、有効電力は伝送されません。この状態で流れている電流は、何の機能も果たすことなく、単に電力線やその他の伝送装置に負荷を与えるだけです。力率λ= 1の場合、有効電力のみがコンシューマに搬送されます。この状態において与えられた有効電力の場合、電気機器にかかる負荷は最小となります。

非正弦値の場合の電力条件

図3.1: 有効電力P、基本無効電力Q1、基本皮相電力S1、歪み無効電力D、皮相電力Sを使用した電力直方体
図3.2: 非正弦値に対する電力条件(Perceptionユーザーは「Workbench:AC_HARMONIC_POWER_1.pVWB」を使用して各式にアクセスできます。このファイルはHBMウェブサイトよりダウンロードできます。)

簡単な例による、非正弦値の場合の電力条件を以下に示します。

(3.01)

電源は正弦波です。曲線グラフには、電圧の基本振動調波が含まれます。


(3.02)

電流の全実効値は、各調波振動の振幅または実効値から算出できます。

(3.03)

すでに計算した、余弦波電圧の実効値Urms=û/√2を使用してコンシューマの皮相電力を表すと、次のようになります。

(3.04)

式(2.03)の計算より、有効電力電流の基本波のみによって生成されることがわかります。この場合、電流の調波振動は有効電力に影響しません。

(3.05)

このように特殊な場合の力率は、次のとおりです。

(3.06)

これにより、電流の追加調波振動により得られる力率λは、基本振動の基本波力率cosφ1よりも小さくなることが直ちにわかります。皮相電力Sは、式(3.07)に従って基本皮相電力S1歪み無効電力Dに分割されます。

(3.07)

そして、基本皮相電力S1有効電力P基本振動無効電力Q1で構成されます。

これらの電力値は相互に直交関係にあり、このような関係性を強調するため図3.1に示すような直方体として表すことができます。

例として、これらの電力変数をPerceptionソフトウェアで計算します。この例では、電圧と電流の曲線を以下のように与えます。

(3.08)

これに対応する時間曲線を図3.2に示します。この場合の皮相電力は、次式で算出されます。

(3.09)

基本波電流のみが基本波電力に関与します。

(3.10)

有効電力の計算値は、次のとおりです。

(3.11)

ここで、皮相電力S有効電力Pを使用して全無効電力を計算します。

(3.12)

基本電力は、基本電流振動のみによって生成されます。

(3.13)

全無効電力Q基本無効電力Q1を使用して、歪み無効電力を算出できます。

(3.14)

その結果、力率は次のようになります。

(3.15)

まとめ

この技術資料では、純粋な正弦波の電圧と電流の曲線に対する電力値を示しました。また正弦波電圧と非正弦波電流の曲線を持つ負荷の場合の電力値について、計算例を使用して説明しました。

参考資料

[1]Teigelkötter J.: Energieeffiziente elektrische Antriebe [Energy-Efficient Electrical Drives], 1st edition, Springer Vieweg Verlag, 2013
[2]NN: Analysis Option Perception, Document version 5.0, 2012
[3]www.hbm.com

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