現在、鉄道車両のメーカーは、新型車両の設計と旧型車両の改造のすべてにおいてコンピューターのシミュレーションを実施しています。設計や改造を製造工程に進める前や、性能上の問題を診断する際には、今でも線路上で試験を実施しています。その理由は、シミュレーションが100%正確なわけではなく、線路上の試験によってのみ、設計が性能仕様を満たしていることを実証できるためです。

そのため、North American Freight Serviceでは、使用するほとんどの新型車両に対して線路上試験を実施しています。試験では、鉄道車両の危険箇所に複数のセンサを設置して、力と加速度と変位を計測します。そして、これらのセンサをデータ収集システムに接続して、試験対象の車両にテストコースを走行させて数値を記録します。テスト走行が終了したら、計測値を解析して鉄道車両が性能仕様を満たしていることを確認します。

こうした試験には、非常に多くの費用がかかります。費用を抑えるためには、信頼性が高く、正確で使いやすく、さらに悪条件でも操作可能なデータ収集システムが必要です。データ収集システムの不具合により、試験をやり直すようなことは避けなければなりません。

インディアナ州ハイランドのSims Professional Engineers(SPE)社は、新型のトレーラーに対する一連の試験に使用するため、HBMのデータ収集システムSoMat eDAQを導入しました。SPE社の技術者のCody Kasten氏によると、eDAQはこの用途に最適でした。eDAQは頑丈で信頼できるだけでなく、多様なセンサに対応し、セットアップや操作が簡単です。

 

 

厳格な試験仕様

アメリカ鉄道協会(AAR)の標準規格M-1001、「Design, Fabrication, and Construction of Freight Cars」は、実施する試験と必要な試験条件について記しています。この標準規格は、AARのManual of Standards and Recommended PracticesのパートIIのセクションCにあります。

M-1001の第XI章「新型貨物車両の走行適性試験および解析」は、以下の項目を含む認証試験について規定しています。

  • 蛇行(車両の横方向不安定性)
  • 一定曲線走行
  • らせん
  • ねじれ、回転
  • 縦揺れ
  • 偏走、横揺れ
  • 動的曲線走行

このトレーラーは、道路を走行するだけでなく鉄道線路での輸送用としても設計されていたため、M-1001の第IX章の記載に従い、鉄道互換車両の要件を満たす必要がありました。

試験システムの中心としてSPEが考案したのは、2台のSoMat eDAQデータ収集システムを使用した試験でした。このシステムの他の構成要素は、以下のとおりです。

  • 2台の同時ハイレベルレイヤ (EHLS),これによってeDAQは同時に32個の差動アナログ入力(1ユニットにつき16チャンネル)のサンプリングを実施できます。
  • 14個のSoMatスマートモジュール。これは1/4、1/2、およびフルブリッジのひずみゲージシグナルコンディショニングを行います。
  • 6個のSoMat ICPシグナルコンディショニングモジュール

 

eDAQは、写真に示すように、移送用の平台型貨車に取り付けられた耐候性NEMAボックス内に設置されました。平台型貨車の前方にはエンジンがあり、レール上のシステムに動力を供給します。平台貨車には、試験するトレーラーとボギー車が取り付けられます。トレーラーが線路上を走行できるようにするため、トレーラーの後ろにボギー車を取り付けます。実際の運行をシミュレーションする試験では、ボギー車付きのトレーラーを1台またはそれ以上、列車に取り付けることができます。

SPE社は、種類の異なるセンサを複数使用して、重要なパラメーターを計測しました。3個の垂直加速度計を使用して、レールの摂動、衝撃、あるいは他の現象による垂直方向の励振を計測しました。また、3個の水平加速度計を使用して、水平方向の加速度が第XI章に規定の要件を満たしているか判断しました。

SPE社は、たわみを計測し、そこからユニットと平台型貨車の横揺れを特定するため、6個のポテンショメーターを使用しました。ボギー車の牽引プレートからトレーラー接続部までの縦荷重は、特殊なロードピンを使用して測定し、このデータを使用してシステム全体の縦荷重を測定しました。

最後に、ボギー車とトレーラーの両方にひずみゲージを取り付けました。各ひずみゲージの位置は、設計形状に対して有限要素法解析を実施して決定しました。SPE社の技術者は、この解析で14カ所の特に重要な部位を特定しました。そのうち4カ所はトレーラー上に、10カ所はボギー車に設定されました。

 

 

移送用の平台型貨車に取り付けられたSoMat eDAQs
SoMat TCEソフトウェアでシステムの各チャンネルを迅速かつ簡単に設定できる

可搬式電源を提供するソーラーパネル

 

SPE社は、システムに電力を供給するため、2台のSunWize SW90Cソーラーパネルを平台型貨車に搭載しました。ソーラーパネルは、それぞれ最大90 Wの電力を供給します。ソーラーパネルは3個のバッテリーからなるバッテリーバンクを充電します。このバッテリーバンクは、データ収集システムに接続され、電力を供給します。

SPE社が、この試験システムで大型バッテリーの代わりにソーラーパネルを使用することを決めたのは、小型のバッテリーを使用した方が費用効果が高く、気象条件が悪い場合にバッテリーを交換する必要性がないためです。一部の試験は冬期に行われますが、バッテリー寿命は低温では短くなります。

ソーラーパネルによって、試験の実行中にバッテリー容量をチェックする必要性もなくなりました。試験中は、バッテリーに十分な電力が供給され、充電状態が維持されます。ソーラーパネルによって十分な電力が確保され、懸念事項が一つ解消されました。

 

試験システムを組み立てると、設置担当者がセンサを所定の位置に取り付けました。SPE社の技術者は、ノートPC上でSoMat TCEソフトウェアを実行して、システムをプログラミングしました(写真を参照)。このソフトウェアにより、技術者はシステムの各チャンネルを迅速かつ簡単に設定することができました。これには、各センサの校正が含まれます。セットアップが完了すると、コンピューターの接続を外して、データ収集システムのみを実行させました。

線路上での試験は、ミネソタ州セントポールとワイオミング州スペリアの間を走るカナダ太平洋鉄道の約150マイルの線路で行われました。試験は約2週間にわたり、無載荷と載荷の試験をそれぞれ2回ずつ実施しました。センサの表示値は、200 Hzのサンプルレートで読み込みました。無人であったにもかかわらず、試験は滞りなく行われ、データ収集システムは毎回2~4ギガバイトのデータを記録しました。

 

 

容易なデータ解析

 

試験が完了すると、SPE社の技術者はノートPCを再びeDAQシステムに接続し、解析用に生の試験データをダウンロードしました。データ解析には、SoMat Infieldを使用しました。最初の処理は、AAR M-1001の規定に従い、15Hzのカットオフ周波数でバターワースフィルターを使用してデータをデジタルフィルタリングすることでした。データをフィルタリングする目的は、試験データからノイズを除去することです。

試験データ解析の最終処理は、AARの規格で設定される制限値を超えるひずみ、加速度、たわみがないか確認することです。この処理は、SoMat Infieldソフトウェアの統計機能を使用すれば、非常に簡単に実行できます。この試験のデータ解析は比較的単純なものでしたが、Infieldソフトウェアは、より複雑な解析も実行できます。例えば、計測値の最大値と最小値を識別できるだけでなく、平均値や標準偏差、rms値も計算でき、さらにはレインフロー、time at level、周波数解析も行えます。

データの解析後、SPE社は、平台型貨車/トレーラー/ボギー車の組み合わせが試験に無事合格したことを報告しました。SPE社は、記録した最大値を示す表を含む報告書を作成し、その値をAARの規格の許容値と比較し、安全余裕率も示しました。この報告書は顧客に提出され、承認を受けるため、顧客から他の文書と併せてAARと連邦鉄道公社に提出されました。

Kasten氏は、このプロセスを通じて、HBMによる技術サポートが大いに役立ったと述べています。ハードウェアにせよソフトウェアにせよ、使い方に困ったときには、「HBMはいつでも技術サポートを提供してくれた」と同氏は語っています。

 

 

HBMへのお問合せ HBMやHBMの製品について「もっと詳しく知りたい」、「わからないことがある」、「こんな製品を探している」などございましたら、お気軽に下記お問合せフォームでご連絡ください。