力センサ | 力変換器の設置 力センサ | 力変換器の設置 | HBM

力センサ | 力変換器の設置

 

近年、力センサの技術水準は高いレベルに達しています。センサが高い精度を発揮できるようになった要因の1つに、校正の可能性が向上したことが挙げられます。多くの場合、力センサはロードセルとは異なり、例えばアプリケーション内での校正ができません。良好で信頼できる計測結果を得るためには、実際の使用時の状況を校正された設置状況に可能な限り近づけ、偏差の量を有効な技術仕様の範囲内に抑えることが重要です。

力センサの計測精度は、設置状況に大きく依存します。好ましくない設置状況は、計測精度だけでなく、計測チェーンの動力学的特性や電磁場の影響に対する感度にも悪影響を及ぼします。

1. 力の方向の影響

例えばHBMの力センサ C2など、力センサの取扱説明書には、「力センサに作用する力は、できるだけ計測方向に正確に与えてください」と書かれています。

これにはいくつかの理由があります。まず、力センサは計測方向の力のみを計測するため、系統的な計測誤差が生じます。横方向からの力は一般的には計測の対象ではないため、計測方向に対して斜めに与えられる力の計測結果には、大きな誤差が発生します。

 

この例では、計測したい力Finが変換器に対して角度αの方向から加えられています。印加された力のベクトルは、2つの成分FzFxに分解され、Z方向の力(印加された力より小さい力)だけがセンサで計測されます。

ここで、以下の式が成立します。

Fz = Fin ⋅ cos(α)

したがって、計測結果はcos(α)が掛けられる分だけ、実際よりも小さくなります
さらに、このような場合には、横方向からの力が加わります。これは、以下の式で計算できます。

Fx = Fin ⋅ sin(α)

角度が5度までの場合の力の計測誤差を以下の表に示します。

1° = 0.015 %

2° = 0.06 %

3° = 0.14 %

4° = 0.24 %

5° = 0.38 %

これらの値と比較して、最新の力センサ(S9MS2M)の最大個別誤差は、0.02 %です。

2. 横力、曲げモーメント、トルクの影響

a. 横力

横力は、変換器の計測方向に対して垂直に印加される力です。ドイツの標準規格VDI/VDE2638では、荷重点に作用する力として定義されています。

こうした横力は、例えば、取り付け部品の固有の重さによるか、あるいは荷重が斜めに加えられることにより発生します。一般的に、横力がひずみゲージ(SG)の設置された高さで作用することはほとんどないため、常に曲げモーメントが発生します。その結果、変換器の横方向の感度に応じて、追加の誤差が生じます。この誤差は、横力がFzの10%の場合、ほとんどの変換器において計測方向の力(Fz)の1%未満になります。

b. 曲げモーメント

力が加わる際の角度誤差が大きいと、変換器が壊れる可能性があります。曲げモーメントは、多くの場合、計測する実際の力に重なって作用します

上図は、こうした状況を示しています。力に加えて、変換器には曲げモーメンもかかります。曲げモーメントは、例えば変換器が水平に取り付けられたときに、力の発生源である部品自体の重量などによって、荷重点に横力がかかることにより発生します。また、曲げモーメントは、偏心荷重が加えられることによっても発生します。

上図の例では、トルク(時計回りに回転)が変換器の左側にかかる荷重を軽減し、右側に荷重を加えます。回転対称型力センサ(C2、U2B、またはU10M)は、周方向に分配された複数の計測点を使用して曲げモーメントの影響を補正しているため、曲げモーメントの影響を特に受けにくくなっています。力センサU10MとU10Sは曲げモーメントのアライメント機能を搭載し、曲げモーメントの影響を0.01 %まで抑えます。この機能は、個々の計測点を組み合わせたときに生成される結果が常に平均値になることを利用しています。

また、これとは別に、大きな曲げモーメントは力センサを破壊する可能性があります。前述のとおり、曲げモーメントは表示されないことに注意することが重要です。

さらに、多くの場合、曲げモーメントは変換器に横力を加えることにも注意してください。以下の図をご覧ください。

 

荷重が偏心して加えられたため、曲げモーメントが左側に発生しています。この場合、横力はありません。

ここでは、荷重適用部の固有の重みがレバーの作用をするため、曲げモーメントが左側に発生します。重心から力センサまでの距離が、レバーの長さになります。この単純なケースでは、重さはそのまま力に変換されます。モーメントは、力とレバーのアーム長さを掛け算することにより得られます。さらに、重さによる力は横力として変換器に作用します。これら両方の寄生効果を考慮に入れる必要があります。

c. トルク

圧縮・引張荷重用に設計された力センサは、雌ネジ (S9, S2, U10) あるいはネジ付きボルト (U15, Z4, U2B)を備えています。変換器を取り付ける際には、こうしたネジによる接続部を適正なトルクで取り付け位置に固定することが重要です。取り付け時には、往々にして最大トルクを超えてしまうことがあります。ネジ接続部を確実に固定し、変換器にはトルクがかからないように注意してください。最大トルクの制限値を超えると、変換器が永久に破壊されます。そのため、最大トルクについても注意してください

使用時には、トルクは変換器本体の幾何学的形状とSGの設置場所により大きく補正されます。

d. すべてのモーメント、トルク、および横力の相互作用

最大荷重制限に関しては、変換器に公称(定格)値の力がかかる際には、寄生効果による荷重も加わる可能性があることを常に理解しておく必要があります。複数の効果が力センサに同時に作用する場合、以下の点に注意する必要があります。

  • 複数の負荷要素が同時に最大許容値に達すると、変換器が壊れます
  •  複数の影響が同時に変換器に作用すると、これらの要素は足し合わされます
    合計が
    100%を超えないようにしてください。例えば、許容トルクの50 %、許容曲げモーメントの40 %、および許容横力の10 %を同時に付加することは可能です。その場合、負荷の合計が100%になるため、変換器は最大荷重の状態になります。

3. 凸面で力を受ける引張力用力センサ

押圧方向の力のみを記録できるように設計された変換器には、通常、荷重を加えるための凸状のアタッチメントが装備されています。

多くのモデルにおいて、このロードボタンに力の印加するための補助部品として、ロードアプリケーションエイドが用意されています。これには、例えば下図に示すスラストピースが含まれます。

この種のスラストピースは、荷重点に直接配置します。スラストピースと力センサの間には異物が挟まらないように注意します。スラストピースには回転軸受が設けられているため、変換器に対する角度が変化し、変換器に曲げモーメントとトルクはかかりません。

この種のスラストピースを使用せずに力センサを設置する場合、凸状の力の印加領域に接触するコンポーネントは以下の要件を満たす必要があります:

  • HBMは43 HRC以上の硬度を推奨します
  • 加工物は接地するものとします
  • 取り付けは、合わせ部品を持ち上げないようにし、変換器が衝撃を受けないようにします
  • 可能であれば、合わせ部品を回転できるようにして自在軸受を備え、曲げモーメントとトルクが発生しないようにしてください

力センサは通常、用途に合わせた取り付け用の構造内に配置されます。したがって、力は、力センサの下にある構造の内部へと導かれます。しかし、水平方向の取り付けも考えられます。その場合、変換器は構造に対して確実に固定します。

いずれにせよ、変換器の底部を取り付ける構造要素は、力を受けたときの変形がわずかで済むように設計しなければなりません。そのため、十分な剛性を確保する必要があります。

また、表面を均一にすることも重要です。許容できる最大の不均一度は、0.005 mmです。土台となる面を均一にすることで、力センサの変形量は、メーカーが保証する計測精度を達成できる範囲内に抑えられます。

 

土台となる構造は変形しにくく、力センサよりも径を大きくする必要があります。下部構造が著しく変形したり、表面が小さすぎたり、あるいは力の印加が不均一だったりすると、変換器の設計時に想定していない状況が発生します。これにより、感度や線形性やヒステリシスに関連する技術データが変化する可能性があります。

4. ネジ式の接続部を介して力を印加する引張・圧縮力用力センサ

圧縮力に加えて引張力を計測する場合、凸形状部を介して荷重を適用することはできません。

したがって、引張力専用または引張・圧縮力に対応した力センサにおいて、力を変換器に印加するコンポーネントは変換器に対してネジで取り付けます。例えば、Z4AやU2Bなど一部の力センサは、上部に雄ネジ、底部に雌ネジの接続部を備えています。U10MおよびU10Sシリーズの力センサには、両面に雌ネジの接続部が設けられています。

雌ネジは、寸法が格段にコンパクトであることから、平らな形状にしなければならない力センサに適しています。雄ネジの場合、ネジ接続とSG設置部分の間の距離が自然に大きくなり、計量上の各種の特性(ヒステリシス!)に関して望ましい効果をもたらします。そのため、精度と再現性について非常に高い要件を課せられる引張・圧縮荷重用の力センサには、一般的に雄ネジが使われ、雌ネジは重要度の低い面でのみ使用されます。

雌ネジに関して:

力センサのボルト接続部では、ナットを使用して力センサに十分な表面圧を与える必要があります。これを行うには、以下の2つの方法があります。

a.   最大作動力を超える力によるボルト接続

  • 接続要素を力センサの両面にネジで留めます
  • 力センサに使用時の荷重を超える荷重を加えます(最大制限値は超えないようにしてください)
  •  ロックナットを手で締めます
  •  これで力センサが力を受け取ることができます。センサが正しく取り付けられています

要求される過負荷については、取り付け方法の説明を参照してください。

b.適切なトルクによる取り付け

  • 接続要素をネジで留めます
  • 取り付け指示で指定されたトルクに従ってロックナットを締めます

取り付けに必要なトルクは、決してセンサに通して加えないでください。壊れる可能性があります。

雄ネジ付きの力センサに関して:

接続する部品を、ロックナットで固定してください。ただし、純粋な静的力計測の場合は、その限りではありません。締め付けトルクは、力センサのマニュアルに記載されています。

Z4A ()は雌ネジにのみ固定されます。U2B ()の雄ネジに対しては、常にナットによる固定が必要です。HBMでは、引張・圧縮力に対応したほぼすべての変換器用にナックルアイを提供しています。ナックルアイを少なくとも1つ使用して力センサを取り付ければ、変換器にねじりモーメントがかかることはありません。ナックルアイを2つ使用する場合、力センサに対して曲げモーメントや力を斜めに加えないでください。

 

500 kNの最大能力を備えたU10Mの校正用に使用する2つのナックルアイ

ナックルアイは、軸受の遊びが時間と共に増加して計測誤差を引き起こすため、通常、動力の計測には適しません。また、ナックルアイで使用できる周波数領域は約10 Hzに制限されます。そのため、動的な要件を伴う用途では、柔軟な接続部材を使用して力を印加することをお勧めします。