トルクセンサT40FMが機械駆動のガス圧縮機を制御 トルクセンサT40FMが機械駆動のガス圧縮機を制御 | HBM

トルクセンサT40FMが機械駆動のガス圧縮機を正確、かつ効果的に制御

ガスパイプラインに沿って作られた膨大な出入口の数から生じる圧力変動や、ガス輸送中に起こる圧力損失、また温度変化、並びにガスの品質変動は、圧縮機ステーションで監視し補償する必要があります。その際、できるだけ少ないエネルギーを使用することが重要です。

いろいろな種類のコンプレッサが輸送するガスを圧縮するために使用されています: コンプレッサは、ガスタービンやガスエンジンあるいは電気モーターで駆動されています。これらはパイプラインから直接供給される燃料を使用しています。

プロセスパラメータ

多数のプロセスパラメータの監視をすることにより、常に変動している(時には急変する)運転状況に、高い効率を維持すると同時に、システムの性能を適応させています。これは、機械的推進システムとしては、特に大きな課題である。最も重要なプロセスパラメータの一つは、ガス圧縮機への推進力である。負荷が急に変動しても、圧縮機の運転を維持する必要最低限のパワーが恒久的に維持されるように、この推進力を制御することが不可欠になります。同時に、過剰な推進力を発生するとエネルギー効率が下がり、さらに、汚染物質の発生(特に機械的推進システムの場合)が増加します。 また危機的運転状況(特にガスエンジンを使用した機械的推進システム)になる場合もあります。それゆえ、このようなシステムの推進力の永続的な監視と制御においては、回転速度に加え、圧縮機へ伝達するトルクの計測が必須となります。

直接実装ができ比較的簡単な回転速度計測とは反対に、トルク測定を実施することはかなり困難です。この目的のために、シリンダ圧力と温度などを補助量として、トルクおよびパワーを計算する基礎として使用することがよくあります。この方法は、長年にわたって使用されており、永続的に改良されてきていますが、トルクが大きくなると、パラメータの数の大きさにより計測の不確実性が急激に増加するうえ、通常納得いくような証明ができません。制御のための許容値を大きくすると、必然的に最適な運転パラメータから、より大きく逸脱します。これは、特にガスエンジンの場合、望ましくない影響が出ます。これを次の図で示されます。

Operating range of a gas engine
Source: Wärtsilä Corporation

これは、正味平均有効圧力(BMEP)と空気対燃料比の関係を示しており、ノッキングとミスファイヤが起きる範囲を可視化しています。エンジンの動作点がノッキングやミスファイヤの領域でないことが重要であり、また、エンジンに損傷を与えるので、いかなる場合にもノッキング領域に移行しないようにすることが不可欠です。

最適な運転領域はノッキングとミスファイヤの間で、上部に向かって狭くなっている領域です。これは、ガスエンジンを有害物質の排出を低く抑えながら、最大パワーで運転することが可能ですが、許容値範囲が小さいので、感度の良い制御が必要なことを意味しています。その逆で、動作点とノッキングやミスファイヤ領域までの距離を大きくするために、許容値が大きいエリアで運転すると、最大電力は小さくなることを意味しています。同時に、短い時間内で大きな圧力変動が圧縮機におこるので、非常に高速の制御が必要になります。この圧力変動は、エンジンの負荷変動として検知されます。 圧力が安全な運転領域にとどまれるように、この変動は迅速かつ正確にエンジンによって補償する必要があります。 次のグラフは、負荷変動が、数秒以内にシステム容量の約50%に達することを示しています。

  ガス圧縮機セットでの負荷変動 (Wärtsilä社提供)

トルク決定の間接的方法

 

以前に説明した方法の他に、圧縮機に伝わったトルクを決定する方法があります。これはトルクが加わった時に起きる入力軸の弾性ねじれの評価を利用します。 これには、様々な方法があり(例えば、ひずみ、変位、角度、周波数測定)、すべて、補助的物理量の計測と、それらを使用したトルクの計算に基づきます。これは、ドライブトレイン上に実装されているとすると、間接的方法とみなされます。この場合においても、パラメータの許容値(例:材質やシャフトの形状)を考慮に入れると、トルクの計測値は比較的高い計測の不確実性を持ちます。

入力軸の弾性ねじれに基づいた間接的なトルク測定方法は、測定されたトルクに対して測定システムを校正することにより直接トルク計測に変換することができます。上記の説明ように、補助的物理量の校正では十分ではありません。このためには、計測システムにセットされている入力シャフト部分がトルク校正マシンンで校正されていて、かけられたトルクと計測システムの出力信号の正確な相関関係が決定していることが必要です。 しかし、この方式には、多くの問題があります。

  • Ÿ 校正マシンにシャフト部分を設置調整
  • Ÿ 入力シャフトの設計方針によりシャフト部分の弾性値が低く、計測システムの感度が悪くなる。
  • Ÿ 校正が無効になるので、校正の後で、シャフト部分から計測システムを取り外せない。

トルクセンサを使用する利点

トルクセンサを設置(ドライブトレインの途中に、特別に軸部かアダプタに適合させた形で)することが、圧縮機に伝達されるトルクを直接計測する洗練された方法です。この方法を使用することは、計測システムは、被測定体(ゆえに、軸部)の不可分な一部分なので、両者は、当然一緒にしか校正できないことを意味します。

トルクセンサは、高い信頼性で、最大限のトルクを伝達するように設計されているうえ、同時に、高感度です。生産者が、トルクセンサをトルク校正機で校正して、必要なトルクに対して認定証を発行します。

ドライブトレインや校正機に対して、簡単に着脱できるように設計されています。計測信号は、入力シャフトと一緒に回転しているトルクセンサから評価ユニットに無線で送信されます。逆に変換器に信号を送る場合も同様です。

トルクセンサを使用すると、直接、非常に正確なトルク計測ができるうえに、次のような利点があります:

  • Ÿ非常に短い信号伝播遅延は:非常に高速な制御を実現
  • 動的トルク信号(6 kHzまで)のバンド幅が広い:エンジンやシャフのトレイン上の動的挙動が検証可能
  • Ÿベアリング、ブラシの接触、スリップリング、バッテリ等はすべて不要:完全にメンテナンスフリー
  • Ÿ非常に長いサービス時間、MTBF 20年以上:サービスまでの時間がシステムと同じ
  • 各アプリケーションに対して最適化しており、ATEX認証をうけています: 追加の設計や認証は不要

トルクセンサは過去数十年にわたって自動車用パワーテストスタンドで主に使用されてきました。エネルギーコストの上昇、これまで以上に厳しい排出値規制、さらに駆動技術関連の発展により、他の産業、例えば、石油·ガス、海洋産業でもこの技術を採用するようになりました。

この分野での応用における運転コストが高くなるにつれて、古典的なパワーテストのアプリケーションに加えて、ますます制御分野に使用されるようになっています。

参考資料

1. Transient response behaviour of gas engines
Position paper by the CIMAC working group Gas Engines, April 2011

2. Wärtsilä 20 Dual Fuel (DF) Engine Presentation
Wärtsilä Corporation, 2010

3. LNG based concept development
 Tomas Aminoff, Wärtsilä Corporation