実証された事実: ひずみゲージ(ストレインゲージ)でAMZレーシングカー部品の設計安全性を確認

「Academic Motorsports Club Zurich」(AMZ)は、世界各国で開催される「Formula Student」に長年にわたり参加しています。Formula Studentは、学生が、自分たちが製作したレーシングカーで競い合うレースです。速度だけでなく、車両がいかにインテリジェントで革新的な構造であるかが競われます。

AMZは何度もポールポジションを獲得しており、特にエンジニアリングについては高い評価を受けています。チューリッヒ出身のこのチームは、2013年に開催された4回のFormula Studentレースすべてで「ベスト技術賞」を受賞し、記録を樹立しました。

学生たちが成し遂げたこの高いエンジニリング性能は、完全電動の車両に関する総合的な計画と試験に基づいています。そして、モデル化と有限要素法(FEM解析)によるシミュレーションの妥当性について、AMZチームが信頼しているのが、HBM製のひずみゲージを用いた包括的な試験です。

課題: モデル化と有限要素法によるシミュレーションの妥当性確認

その理由を考えてみましょう。多くの部品の有限要素法によるシミュレーションから導き出される結果は、モデル化に直接的に影響されるからです。モデル化する際に既に数多くの簡略と仮定が含まれているために、エラーが累積します。こうしたエラーがシミュレーションに直接含まれるため、完成部品の形態にもダイレクトに影響を及ぼすことになります。

さらに有限要素法(FEM解析)によるシミュレーションには、動的負荷の挙動や材料の不確実性による複雑さに起因する数多くの未知数が含まれています。経験の浅い技術者は、有限要素法解析の結果から安易に誤った結論を出してしまい、その結果、要求を満たすことのできない部品を採用することになります。要求に合致しない部品は、AMZの場合、車両そのものが危険にさらされるばかりではなくドライバーにも危害が及ぶことになります。

これまでは、AMZが使用するモデルは実証されませんでした。そのために実際に試験を行っていました。もう一つの理由は、空気力学的なダウンスラスト係数の実証にあります。車両のウィングは最初に、開発段階においてコンピュータ上で計算流体力学(CFD)シミュレーションを用いて試験が実施されます。ここで問題となるのは、レーシングカーが実際に製作されないと部品全体の実証ができないということです。

次世代のレーシングカーを空気力学的に改良するためには、開発された部品がいかに優れているかを効果的に評価できるよう計算結果を実証することが極めて重要になります。部品は風洞試験される一方、ひずみゲージによる試験にてレーシングコースにおける車両の正確な特性を明らかにすることができます。風洞試験は、均一な条件下における各種設定を直接比較するには適していますが、レース走行中におけるダウンスラスト値を正確に測定するにはあまり適していません。これらのパラメータは、走行中のプッシュロッドの力が把握できれば直接算出することができます。

こういった理由がひずみゲージを用いた適切な計測を実施する動機付けとなりました。空気力学的なダウンスラスト値の決定に必要なモデル化におけるエラーとプッシュロッドの力は、ひずみゲージを用いた試験と実験応力解析を行うことによって得られました。

計測の流れ

ひずみゲージによる計測過程一式は、AMZのFormula Studentプロジェクトを成功に導くために重要なものでした。計測結果が実際に意味を持つものとするためには、少なくとも機械的な手作業が慎重に行われることが前提となります。何よりも重要なのはひずみゲージの貼付です。試験の前日には、ひずみゲージは十分に校正されました。

試験プロセス

妥当性の確認に必要となる種々の力を把握するためにHockenheim Ringにおいて以下の4種類の試験が実施されました。

  • カーブ走行
  • ブレーキ操作
  • 自動車レース
  • 直線走行

カーブ走行試験では、3種類の異なったカーブ(曲率)を有するコースを走行しました。これにより異なった横加速で走行することができます。ブレーキ操作試験では、車両を最高速度まで加速した後に力いっぱいブレーキをかけました。また、自動車レース試験では、高速自動車レースコースを走行しました。このコースでは、Formula Studentレースに実在し、かつ試験運転に求められる不可欠な全要素が確保されます。入るときにブレーキ操作が必要となる急カーブのスラロームや、車両を最高速度まで加速することができる直線部分、その他にも細かな要素が含まれ、長さは442mです。最後には、コースの直線部分を利用して一定速度で試験が実施されます。

負荷条件の妥当性を確認するため、歪み勾配に対する補助的な情報として加速度曲線を計測する必要がありました。これは車両に組み込まれた複数の加速度検知センサで直接計測されます。これらセンサの計測値は個別の計測用PCに記録されるため、2つのモジュールの時間同期を行う必要がありました。この同期は、各計測の開始時に、毎回4回アクセルを踏むことで実施されます。

 

こうすることにより、ひずみゲージに発生した歪みとスプリングダンパ・ポテンショメータの変化を記録することができ、データ解析時に両モジュールを同期させることができました。

 

シミュレーション結果との重要な相違

コンパクト・データ収集システム QuantumXシリーズ:CX22-WおよびMX1615

これらの計測によって、サスペンションの負荷条件とダウンスラスト係数の両方の妥当性を確認することができます。

 

負荷条件としては、路面走行時の負荷で計算値よりも15%大きな負荷が計測されました。負荷が大きくなった理由は、シミュレーションでは考慮されなかった路面の凹凸に起因する車両の振動によるピーク応力でした。これらのピーク応力を踏まえ、故障に対するセキュリティ強化を実現するために、サスペンションに対する安全係数は負荷条件の妥当性確認結果に基づいて適切な値に調整されます。

路面走行時のダウンスラスト係数の値は、風洞試験で計測された値よりも10%小さくなりました。この差は上記と同様に、車両の振動と路面の状態よるものであり、風洞実験での環境条件とは異なっていることに起因します。

全体としては、ひずみ計測によりレーシングコースにおける車両の挙動についての理解が深められ、得られたデータによって、来シーズンに向けた新型レーシングカーが設計しやすくなります。

このAMZによる調査や試験では、HBM製のひずみゲージのみならず、ひずみ計測を行うためのデータ収集システムQuantumXシリーズ MX1615、計測されたデータのローカルストレージに使用されるデータレコーダCX22-Wにも信頼が寄せられました。

ブリッジアンプQuantumX MX1615は、1台あたり最大16チャンネルのひずみゲージを接続することができます。搬送波周波数技術のおかげで、厳しい適用条件下でも、確実な計測結果を得られます。

 

 

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