ひずみゲージ(SG)から正確な計測を得るためには、SG測定対象に適切に貼付する必要があります。本文は正しい接着剤の選択方法と使用方法を説明します。また、接着剤の種類、接着表面の準備、SG貼付方法について述べます。

接着剤101: 重要な計測ポイントに接着

ひずみゲージを計測対象へ接着する最も一般的な方法は、接着剤です。しかし十分に高品質な接着を行い計測対象のひずみを完全にひずみゲージに伝える必要があります。計測対象とひずみゲージ間の接着箇所で、ひずみ現象の一部を「ロス」して計測に誤差が生じます。

計測対象のひずみをゲージに確実に転送するためには、正しい接着剤を選んで、適切にゲージを貼付します。

粘着性のオプションの説明

最も正確な計測を達成するためには、計測対象とアプリケーションに対して最良の接着剤を選ぶ必要があります。そのため利用可能なオプションを理解する事が大事です。

単一VS多成分系接着剤

  • 単一成分の接着剤は、チューブから押し出すだけで使用でき、複数の成分を混合する必要がありません。
  • 多成分系の接着剤には、通常、使用前に混合する必要がある2つの成分があります。また、この接着剤には「ポット寿命」があり、混合後に接着剤が使用できる時間が限られています。それは数分間から数時間です。

室温硬化型接着剤vs加熱硬化型接着剤

  • 室温硬化型接着剤は、被計測物上にひずみゲージを室温で貼付できます。
  • 加熱硬化型接着剤は、硬化させるために加熱します。しかしながら、この方法は計測物をオーブンに入れる必要があり、接着剤を加熱している間、被計測物は熱い温度に耐える必要があることを意味します。また、計測物がオーブンで加熱接着される間は、ひずみゲージを計測物に密着させる必要があります。 この接着剤は、加熱して硬化させるので、より高い動作温度に耐えることができます。 この接着剤は変換器の製造にもよく使用されます。

硬化時間

接着剤は、種類によって硬化時間が違います。 硬化時間は環境温度にも依存します。気温が低いと長くなり、高いと短くなります。

動作温度

接着剤の動作温度範囲は種類により異なります。接着剤の動作温度範囲はデータシートに記述されています。指定の動作温度範囲外に計測対象とひずみゲージがある場合は、ひずみ測定に誤差が生じる可能性があります。例えば、接着剤の動作温度が最大200℃の場合、200℃以上の環境でSGを使用すると、接着剤はクリーム状になり、ひずみ測定値は悪影響を受けます。

また、温度だけでなく、一部の接着剤には湿度パラメータがあります。

粘着性

接着対象に応じて粘着性の度合を決めるので、接着剤は異なった粘着性で作られています。

  • 薄い接着剤は、接着層を厚くせずに、ひずみゲージを測定対象に固定できます。 一般に、厚い接着層は被計測物とゲージ間の距離を大きし、ひずみ値を歪曲する可能性があるので、薄い接着層が推奨されます。 ベンディングひずみゲージ(計測のベースとして中立層を使用)を使用している場合は、厚い接着層は計測値の誤差を悪化させる可能性があります。
  • 厚い接着剤が、多孔質の有孔体に使用されます。 例えば、単に薄い接着剤はコンクリートの中に吸収されるので、より厚いペースト状の接着剤が必要です。 しかしながら、接着層はできるだけ薄くするのが原則です。

接着剤の選択に関する詳細はTechNoteの「ひずみゲージ貼付時の正しい接着剤の選択」を読んでください。

HBM接着剤

HBMは広範囲な種類の接着剤を提供しています。以下に、接着剤のリストの一部を紹介します。

Z-70: 実験応力分析向け標準タイプの瞬間接着剤「スーパーグルー」

  • 一液式
  • 室温硬化型
  • 親指圧を使用する1分硬化型
  • 静的測定(ゼロが非常に重要)での動作温度は55℃~100℃です。 動的測定用の接着剤は、最大120℃までです。 湿度は30%以上が必要です。
  • 低粘度(薄い接着剤)

X60: メタクリル酸混合物

  • 多成分系--- 粉と液体を含む2液式接着剤
  • 室温硬化型
  • 硬化時間2~5分
  • 動的測定用には動作温度は-200℃~80℃
  • 高い粘着性(厚い接着剤)--- 接着層の厚み65μm

X280:エポキシ樹脂

  • 多成分系--- 簡単な混合用容器で2成分を混合して使用
  • 規定の圧力下での、加熱硬化か室温硬化
  • 室温で硬化時間8時間、95℃までの加熱で、硬化時間1時間
  • 動作温度:静的測定用には最大200℃、動的測定用には280℃
  • 高い粘着性(厚い接着剤)---接着層の厚み40μm

EP150:エポキシ樹脂

  • 一液式
  • 加熱硬化型
  • 160℃で、硬化時間6時間、190℃、硬化時間1時間
  • 動作温度は最大150℃
  • 低い粘度:変換器製造によく使用されます

EP310S: エポキシ樹脂

  • 多成分系---ポットライフ1カ月
  • 加熱硬化型
  • 200℃で、硬化時間の30分、変換器製造には6時間 120°C
  • 動作温度は動的測定用には-270℃~310℃
  • 低い粘度:変換器製造によく使用されます

BCY01

水分で硬化するタイプのスーパーグルーZ70は、低い湿度を補うために硬化促進剤を使用できます。 注意: 促進剤は急激に作用して位置が微調整できなくなるので、ひずみゲージの位置決めは最初から正確である必要があります。 促進剤を使用せずに、接着面に息を吹きつけて湿度を加える方法もあります。

他のHBMひずみゲージ製品に関しては、 hbm.com/strainをご参照ください。

測定対象の接着表面を整える方法

ひずみゲージを被計測物に接着するには、接着面を清浄にする事が非常に重要です。 もし、土、グリース、ペンキ、さびなどが接着面に付着している場合は、接着を効果的に行えません。 最初に、スクレーパーかグラインダーを使用して、ひずみゲージが被測定物に直接接着するのを防げる物を取り除いてください。

第2のステップは、削り落としや研摩などの時に作成された残骸をとりのぞいて、接着面をなめらかにします。 最終的に、HBMのRMS1などの洗浄用溶剤を使用します(RMS1は接着表面を整えるために特別に作成された溶剤です)。

注意: ひずみゲージの貼付面に酸化被膜が生じないようにするため、接着面を清浄にした直後にひずみゲージを接着してください。 清浄にした直後にひずみゲージを接着できない場合は、一時的に粘着テープを張って酸素やほこりから接着面を保護してください。

表面を徹底的に清浄にした後は、被測定物の表面を粗くします(有効な接触面積の増加による結合力を強化します)。 使用する接着剤に対応させて、紙やすりの180~300番やサンドブラストを使用できます。 推奨の粒度に関しては、接着剤のデータシートをご覧ください。 次に、面を荒くした後は、再度表面を掃除してください。 接着面を荒くする工程で汚れが付着する可能性があるので、このステップを省略しないことが重要です。

接着剤用に、特定の被計測物の材料表面を整えるためのヒント

ひずみゲージの貼付品質は、測定誤差の大きさに直接影響します。 以下は、特定の材料に関する表面処理のヒントです。

金属

一般に、金属(アルミニウム、銅ベリリウム、銅、鉄鋼など)は標準のクリーニングと表面処理(粗くする)が行えます。 通常、上記で紹介した接着剤のいずれも使用できます。

わずかな例外を除き、金属上では接着剤を簡単に使用できます。 チタニウムは、接着剤が酸化被膜を金属に発生させる可能性があるので、ひずみゲージの接着は迅速に行います。

 

プラスチック

機械的磨耗によるラフンニングでプラスチックを表面粗化するのではなく、Tetra-Etchによるケミカルエッチングを利用することができます。 また、ハンドヘルド式アプリケータを使用した酸素プラズマでポリエチレンを加工することもできます。 プラスチックに適応しない接着剤もあるので、接着剤のデータシートを必ず読んでください。

ひずみゲージを設置

接着面のクリーニング、表面粗化、再クリーニングが完了すれば、選定した接着剤でひずみゲージの設置を開始できます。 最初に、ひずみゲージを取り付ける被測定物の計測点に印をつけます。 インクを取り除いた空のボールペンを使用してください。

禁止事項:

  • 先のとがった針で表面に傷をつけない。 部品を破損する可能性があります。
  • 接着面に接触禁止。 清浄な指でも小量の汗や脂肪分がつき、接着に悪影響が出ます。
  • 息をかけないでください。 息により接着面に湿気がつき汚染物質を引き付ける可能性があります。

接着面に印を付けた後は、最終クリーニングを行います。 RMS1脱脂クリーナー(もしくは同格品)と糸屑のでないセルロースパッドを使用して、グリースなどを完全に除去してください。 クリーニングパッドで、汚染物質の痕跡が全くなくなるまで、こすってください。 各クリーニングは常に新しいパッドを使用してください。また余分な脱脂クリーナー液を決してボトルに戻さないでください。

この段階で、ひずみゲージ(SG)を設置できます。 HBMのSGは完全清浄後に梱包・出荷されるので、そのまま被測定物に接着できます。 ピンセットを使用して、パッケージからSGを取り出し(指の接触不可)、設置箇所を示す印がついている場所に置いてください。 接着剤を準備する間、粘着テープを使用して接続部をカバーし所定の位置にSGを固定してください。 粘着テープで接着剤がSGからはみ出ないようにして、被測定物を保護できます。 単にSGの周り沿って境界線を作るようにテープでマスキングしてください。 このテープは接着剤が不要な部分に着くのを防ぎます。

 

選択した接着剤の説明書を読んで、それが多成分系の接着剤であれば混合してください。 接着剤の準備ができたら、仮止め用の粘着テープをピンセットで取り外して、さらにピンセットでSGを持ち上げてください。接着剤を薄く印の箇所に塗ってください。 接着剤の上にSGを戻して、均一な圧力を全体に加えてください。 接着剤の上にいったんSGを設置した後は、SGを動かさないでください。

SGの接着剤が硬化後に、ピンセットでマスキングテープを取り除いてください。 硬化中はSGに圧力をかけ続けてください。 硬化中にテープを決して取り外さないでください。

即効性の接着剤を使用して、圧力を加えるのに親指を使用する場合は、親指をゲージに接着しないように親指とSGの間にテフロンホイルを必ず使用してください。

詳細情報

各アプリケーション向けに、正しい接着剤を選んでひずみゲージを適切に設置することにより、測定誤差を最小にしてひずみゲージの精度を改良できます。

接着剤、ひずみゲージの設置、実験応力分析に関する詳しい情報は、ここをクリックしてご覧ください。

作者紹介

Jens Boersch氏はプロダクトマネージャーとして14年間HBMに勤務しており、その間、ひずみゲージ、アンプシステム、データ収集ソフトなど、ほとんどすべてのHBM製品の発展に貢献して来ました。拠点をダルムシュタット(ドイツ)に置いています。

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