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ダ・ヴィンチのように検証せよ

時空を超えた英知と新技術が計測業界に革命的変化をもたらし、構想から完成まで、製品リードタイムの短縮が加速しています

日頃行っている製品テストや検査行程は、すべて必要悪だと思っていませんか?そのマインドを変えるべき時が来ています。構想から完成までの製品開発の長いテストプロセスで、インテリジェンスと効率は欠かせません。最新の計測機器は製品開発を、まだアイデア段階の着想レベルから支援できます。

最新の計測技術が、製品の市場投入までのスピードを加速させています。そこには、レオナルド・ダ・ヴィンチの永遠の真理が活きています。

ルネサンスは学問・知識の復興を目指す文化運動により、それまでの常識が大きく見直された時代です。 それまでは疑われることのなかった事象が改めて深く思考され、文化と科学技術が急速に発展しました。

ルネサンス時代に活躍した数多くの偉人の中で、レオナルド・ダ・ヴィンチは稀有な存在といえるでしょう。彼はアートのもつ美と品格を技術的進歩と革新的精神に前人未到の領域で融合した人物です。彼ほどのレベルでこの融合を実現した人物は、過去にもまた彼以降にもほとんど存在しません。

現在実用化されているヘリコプタやパラシュートといった様々な産業製品は、すでにダ・ヴィンチによって考案されていたことはよく知られています。現在、社会や技術をとりまく急激な変化について知ると、この偉大な発明家を非常に身近に感じることができます。 世界は今再発見の時代にあります。人類が直面している課題を技術的に解決するソリューションが必要とされています。

500年前にダ・ヴィンチが実行した革新的思考をもう一度見直す時が来ています。彼のアイデアの多くは彼の時代には実現しませんでしたが、彼の一連の発明は動作レベルにまで高められ、そこで大きな進歩を遂げました。

ダ・ヴィンチは、彼自身の基本原則に従い、アイデアに対して合理的な実験と検証を行いました。 この原則は今日の試験プロジェクトに応用できます。

着想から完成まで製品開発をどのように進めるべきか? 多くの技術者が知恵を絞ってきた重要なテーマです。技術を扱う企業の成功は、技術革新に大きく依存しており、この傾向は近年増々顕著です。利用価値が高い新製品だけが、使う側の高い要望を満たすことができます。これは通常の社会的・政治的条件においても変わりません。

一見現代的な考え方に見えますが、これは新たな発想ではありません。技術開発において、未来志向の発明家たちは常に理論よりも実践を好みました。そして実践によりすばらしい成果をあげてきたのです。


普遍的なレオナルド・ダ・ヴィンチの5原則

1. 常に好奇心を保ち、「当たり前」なことに疑問を持て

ダ・ ヴィンチは「当たり前」なことにも決して満足しませんでした。日常の現象にも疑問を持ち、開かれた目で世界を眺めました。そして「鳥はなぜ飛ぶことができるのか?」といったシンプルな問いかけをしたのです。まずは開発プロジェクトで「当たり前」とされていることにシンプルな問いかけをすることから始めましょう。実はこの問いかけが最も難しいかもしれません。真の進歩のためには、過去の産物を再考するのではなく、根本的に新しい何かを生み出せる問いかけがよいでしょう。

2. ありのままに描写せよ

レオナルド・ダ・ヴィンチは芸術家として鋭い観察眼と高度な描写力をもっていました。彼は世界をありのまま観察しようとしました。 あらゆるプロジェクトを開始する前に全てをゼロリセットにして、期待や目標のフィルタをかけず事象をありのままに描写します。 今日行うあらゆるテストで、私たちは単に適切な演算フィルタを選択していますが、これも重要な前提条件を既に選択していることになります。 自分の考えではなく事実だけに誘導されるように、可能な限りありまま観察することに徹します。

3. ワークピースを計測せよ

ダ・ヴィンチはこう言っています。「活動を始める前に、私は実験を行う。 経験を通して学びたいと考えるからだ。」 彼は憶測を嫌いました。 試験と検査により事実を明確にできます。

4. 使う側の視点に立て

テストがどんなに小規模でも、各部品への作業が高い重要性を持たなくても、目指すべきゴールは使う側に恩恵をもたらす完成品です。 レオナルド・ダ・ヴィンチは、自分の顧客を喜んでサポートしました。 例えば、彼は珍しい噴水を建築しました。 技術的に傑作といえるもので、当時の顧客ニーズを完全に満たすものでした。 高品質なユーザ体験や使いやすさを実現するためには、正しいテストと検査を行うことが唯一の確実な方法です。

5. ダイナミックであれ

ダ・ ヴィンチにとって、世界はダイナミズムそのものでした。 彼は物体の動きを保つ力に強い関心を持っていました。 もし今、ダ・ヴィンチがこのダイナミックな世界を見たらいったい何と言うでしょうか? 私たちが生きる世界は複雑です。すべては可変で、常にダイナミックに変化しています。

テストにおいても静態分析から莫大な予測値をデータに提供する動的試験がますます増えています。 今ある手段とツールを活用すれば、世界中の技術者が技術的進歩にダ・ヴィンチのように貢献することができます。


テスト方式に関する重要なトレンド

着想から完成に至るまでの様々なテスト課題はより多面的で複雑化しています。電動モータを例に取ると、新世紀の電気自動車の市場で競争力を保つために、メーカーは最大限の範囲で最大限に快適な乗り心地を顧客に提供する必要があります。 バッテリの改良に加え、さらに重要なのはインバータとモータのエネルギー変換効率を上げなければなりません。個々の部品を高い信頼性でテストできる企業だけが、総合的に優れた製品を市場に送り出すことができます。

新素材 が注目を集め、繊維合成物で作られた新タイプの非常に軽い素材がますます多くの製品に使用されています。この素材には無限の可能性があります。しかし、実際にはこの素材はどのような挙動を示すのでしょうか? 耐久性はどれくらいあるのでしょうか? 車や航空機から消費財に至るまで優良な製品を生産する為には、どのように設計されるべきでしょうか?

医療分野 では数多くの製品が人体に使用されるようになりました。身体は外的影響に対して敏感に反応する複雑なシステムですが、インプラントなどもその例です。最新式のテストベンチは、医療用途でできるだけ優良な完成品を供給するため、複雑なシステムをシミュレートします。 シミュレーションには、高品質センサシステム、特にインテリジェントDAQとソフトウェアシステムが不可欠です。

同じ原則がここでも適用されます。自分の仕事を十分にこなせること、つまり部品テストに関しては十分に熟練していることが重要です。そこで、計測技術( センサ、データ収集システム、および対応する ソフトウェア) の正しい選択が製品を市場で成功させる決定的要因になります。しかし成功するには、計測機器が完全に開発サイクルに統合されていることが重要です。

今まさに計測技術に革新の時代が来ています。もはや従来の計測方式では対応できなくなって来ているので、完全に新しいソリューションが必要です

引き続き 電動モータ の例で説明します。最近まで、エネルギー変換効率は、パワーアナライザとオシロスコープを使用して計算しました。長年使用されてきた「十分有効であった」方法です。しかし技術上の要求度が上がってきたため、もう実用的ではありません。

良い例が、機械的データと電気的データを別々に集めており、両者を同期できない点です。電動モータの効率を究極のレベルにまで押し上げるには、テストベンチで現実の真の姿を観察する事(これはダ・ヴィンチの原則の1つ)が重要です。真の姿を見るためには、計測システム内の生データへ直接アクセスする必要があります。そのためには、すべてのデータを同期して記録でき、且つ、記録した生データへ完全なアクセスができる高度なソリューションが必要です。

一般的に、構想から実現までの過程で製品をテストする際に考慮すべき大きなトレンドが3つあります。

 テストをバーチャル(部分的に)で行う

商品開発の初期段階で、いろいろなアイデアを評価するにはコストが掛かり過ぎます。また、本格的なテストを行なうタイミングではありません。

そこで耐久性テストや負荷テストをバーチャル(仮想)で行う方式があります。 CAEデータに基づく初期テストを適切なソフトウェアで実行すると、(仮想)バージョンから(実物)バージョンまでの移行過程を加速できます。

ダ・ヴィンチは、彼の時代としては斬新で大胆なアイデアを紙とペンでスケッチしました。これは創造性豊かな魅力溢れる世界に導いてくれます。 彼はコンピュータとインターネット世代の可能性に関して何と言うでしょうか? 彼も開発にはバーチャルテストを使用すると思います。これは、商品開発を革新する一つの重要な要素です。

 商品開発のニーズに対応した柔軟なテスト

テストの柔軟性と速度はさらに重要になっています。 高価なテストベンチは効率よく利用されるべきです。 ますます多くの計測が同期した状態や非常に密接したサイクルで行われています。 このためテスト自体と同じくらい柔軟性がデータ収集システムに求められます。

 テストベンチでのテストと完成品上でのテスト

テストベンチ上での計測は商品開発の必須要素です。しかし、それがすべてではありません。 量産の段階まで開発を進めるのに、ダ・ヴィンチの精神に従うと完成品のテストもする必要があります。

完成品が存在しない段階では、テストベンチは常に製品の現実やアプリケーションに関して、一定の仮定のもとに構成されています。最善を尽くして出来るだけ現実に近い仮定を設定しますが、実際のアプリケーションの状況(製品の成否を決定する)は完全に異なっているかもしれません。

このため、実際のアプリケーション環境での実物テストが開発業務の重要な部分になります。この要求に応えるために、新しい移動式の計測アンプシステムが開発されました。それはモバイルアプリケーション向けに、高精度で小型なうえ、非常に堅牢に作られています。また、このシステムの強力なソフトウェアによりコントロールとパラメーター化が非常に簡単に行えます。

例えば、実際に彼らの顧客によって使用される車にモバイル計測用アンプとセンサを設置するケースもあります(例:掘削機)。これは実際のアプリケーションで使用されている状態での車両の連続データとなります。このデータを仮定の基に、テストベンチより得られたデータと比較することができます。このように実物から得られた計測を解析に使用する事により、次世代の車両や製品の設計が非常に簡単になります。結果として、ユーザの実需に非常に良く適合した新製品を製作できます。これは構想を現実に変える重要なステップとなります。発明品を少しずつ改良するステップです。

現実を観測するのは、一般車、建設車両、航空機、鉄道のような「移動する」製品に限りません。 同じ基本原理は、橋やパイプラインなどの既存の大型の構築物に適用できます。推測する代わりに計測をします。ファイバーブラッグ技術に基づく近代的な構造健全性監視システムが一つの実例です。最新のDAQシステムを組み込んだテストベンチで部品試験をバーチャルテストする手法から、実際の現場の使用条件下でのアプリケーション試験まで、製品はかつてないほどに複雑になっており、より良い技術への挑戦はどこまでも続いていきます。近代的な計測機器は、より良い製品をより速く市場に導入する手助けとなっています。

計測機器が真の進歩を可能にしています。レオナルド・ダ・ヴィンチの先進的発明が、今では現実になっているのは意外な事でしょうか? それは全く意外ではありません。 私たちには、製品を成功に導く手段を持っています。そして確実性をテストで確認できます。

この記事は最初に、NASA Tech Briefs、www.techbriefs.comで発表されました。

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