実務上のヒント: PMX CASMAフィルタ 実務上のヒント: PMX CASMAフィルタ | HBM

実務上のヒント: PMX CASMAフィルタ

要旨

ノイズが混入したトルク信号の平均値を特別なフィルタで処理する方法を説明します。CASMAフィルタ(Crank Angle Sampled Moving Average)は、時間に依存せず回転角に同期させて使用できるフィルタで、RPMの変化に自動的に反応できます。 PMXは特に計算チャンネルをこの目的用に設定できます。簡単な例として、5気筒エンジンに取り付けたT40B トルクセンサにCASMAフィルタを使用する方法を示します。

基本説明

内燃機関はピストンストロークにともない各シリンダで圧縮膨張とそれに付随する変動が発生するので、エンジンから発生するトルクは非常にダイナミックな挙動を示します。この外乱は全体に影響を与えるので、計測に大きく影響します。

CASMAフィルタはシャフトの回転に伴い発生する周期的な外乱を排除できます。フィルタは移動平均値を使用して、経過時間ではなく、軸回転に対して同期しています。したがって、フィルタの効果は回転速度に依存しません。

フィルタの計算周期は回転速度に比例しています。回転が止まると、フィルタも止まります。

CASMAフィルタ

計算チャンネルを作成します

Analysisカテゴリで新しい「回転に同期したフィルタ」の計算チャンネルを作成します。

パラメータを調整します

  • フィルタ入力: ここでフィルタする信号を入力します。
  • 軸角度の入力: 回転センサの角度に関する信号をここに入れます。計測値が0°と360°の間ある事を確認してください。
  • ウィンドウ幅: 移動平均値を取る範囲を指定してください。範囲は30°と720°の間で、デフォルト設定は180°とします。ウィンドウ幅対分解能の比率は必ず180未満となります。

外乱が周期的に繰り返されるタイミングを回転角に対して実験的にあてはめることによって、簡単に使用範囲(ウィンドウ幅)を決定できます(画面のコピー参照)。ここの例では、周期的外乱が720°毎にあります。

  • 最小速度: 実際の回転速度が定義された最小回転速度より小さいときに、この仮想の回転速度は適用されています。
  • 分解能: この値は、新しい平均値がどれくらいの頻度で(各測定が何度の時に)計算されるかを決定します。総合的アップデート率に従って計算速度が決定されるので、受入れられた最大許容回転速度はこの値に依存することに注意してください。

理論値は以下の式により計算できます: 最大回転速度=分解能X総合的アップデートレート/6

実務では、この理論的に可能な最大回転速度の10~20%に達する値を使用してください。

分解能

総合的アップデート率19,200Hzにおける
理論上の最大回転速度

総合的アップデート率38,400Hzにおける
理論上の最大回転速度

3200 rpm

6400 rpm

6400 rpm

12,800 rpm

12,800 rpm

25,600 rpm

19,200 rpm

38,400 rpm

25,600 rpm

51,200 rpm

以下に示す回転速度の倍数は、ウィンドウ幅により制限されます:

ウィンドウ幅

倍数

90°

4, 8, 12, …

120°

3, 6, 9, …

180°

2, 4, 6, …

360°

1, 2, 3, …

720°

0, 5, 1, 1, 5, …


注意: 信号源の1つが無効である場合は、出力信号も無効になります。

動作中のCASMA

フィルタなしのトルク信号(赤)、CASMAを使用したフィルタをかけたトルク信号(緑)。CASMAフィルタにより、時とともに変化するエンジン速度に相関して非常に安定したトルク計測ができる事が明らかになりました。このフィルタの幅が大きければ大きいほど、結果はより良くなります。

事例

この短い例では、トルクM[Nm]に加えて、PMXは電力のP[W]、回転速度n[1/s]、加速度[1/s2]、及び対応するCASMAフィルタを分析するのに使用されます。以下の画像に示されている計算チャンネルはこの目的のために作成してあります。catmanを使用して信号を表示しています。

計算:

電力:

角速度:

 

角加速度:

重要: すべての計算において、回転速度nは分速から秒速に必ず変換して下さい。

チャンネル

Catmanの下記画像に表示された全チャンネルを参照。枠内の色は曲線の色に対応しています。信号は以下のチャンネルから成ります:
トルクM (赤):

  • PX460の計測チャネルから直接

CASMAフィルタ (緑):

  • 既に詳細説明済み

電力P (黄):

  • デバイダ (回転数n/60)、1秒あたりの回転数
  • 一定信号(2*pi)
  • 乗数(M*n[1/s]*2*pi)

回転速度n (橙):

  • PX460の計測チャネルから直接

角加速度(青):

  • 乗数(2*pi*n[1/s])、角速度wに変換
  • 識別因子(w)

免責に関する注意

本文上で使用された例は、装置の説明を補助する目的だけのものです。いかなる保証や法的クレームの根拠としては使用できませんので了承のうえご参照ください。