トルク計測にCASMAフィルタを使用する際の注意点 トルク計測にCASMAフィルタを使用する際の注意点 | HBM

トルク計測にCASMAフィルタを使用する際の注意点

内燃機関はピストンストロークにともない各シリンダで圧縮膨張とそれに付随する変動が発生するので、エンジンから発生するトルクは非常にダイナミックな挙動を示します。このダイナミックで周期的に変動するトルク成分(外乱)は、真のトルク計測値に重なっています。

CASMAフィルタ(Crank Angle Sampled Moving Average)は、シャフトの回転に伴い発生する周期的な外乱を排除できます。フィルタは時間に依存せず、軸回転に対して同期しているので、自動的にRPMの変化に追随します。

この記事では、HBMのTIM-PN、TIM-EC、PMX信号処理システムにおいて、CASMAフィルタを適用する方法を説明します。

トルク信号をフィルタリング

時間同期のフィルタ

信頼性を高めるためには、雑音の多い信号はフィルタをかける必要があります。ベッセルやバターワースなどのなじみ深いフィルタは、時間に同期したローパスフィルタです。

 

回転角フィルタ

CASMAフィルタ(Crank Angle Sampled Moving Average)は、回転角に同期し働き、時間に依存しません。そのため、自動的にRPMの変化に対応して動作します。

TIM-PNとTIM-ECでCASMAフィルタを使用する方法

WEBインタフェース

TIM-ECとTIM-PNトルクインタフェース・モジュールは統合webサーバーを提供します。このブラウザベースのソフトウェアで、CASMAフィルタのすべての設定ができます。

必要なフィルタパラメータは、HTML形式のページで入力し、有効性をチェックします。CASMAフィルタへの入力は「Units and filters」メニューで行います。

 

CASMAフィルタの機能

パラメータの特性

パラメータ機能
角度デバイダ角度分解能を抑えて、同じウィンドウ幅で、より高い回転数を使用する
角度範囲(度)移動平均線が動作する角度範囲(ウィンドウ幅)
疑似速度(rpm)rpm速度に対して、疑似パルスまたは疑似速度が発生します。さもなければ、フィルタは停止され、計測値は固定されます。

 

情報エリアの機能

情報エリア機能
最大回転数(rpm)角度パルス/秒はトルク計測のサンプルレートより必ず小さくなります。さもなければ、平均値は同じ計測値で形成されます。
1回転あたりのパルス増分の数、および分析から、来ます。アクティブな位相差分析では、回転角分解能は4倍になります。
角度分解能(度)1回転あたりのパルス数とデバイダから計算されます。
平均に使用した計測値の数移動平均線を形成するのに使用される計測値の数を計算します。

 

PMXでCASMAフィルタを使用する方法

計算チャンネルを作成

Analysisカテゴリで、新しい計算チャンネル「rotation synchronous filter」を作成してください。

パラメータを調整します

  • フィルタ入力: フィルタする信号を入力。
  • 軸角度入力: 回転角度のセンサ信号をここに入力。計測値が、0°と360°の間あるのを確認してください。
  • ウィンドウ幅: 移動平均線を取る範囲を指定してください。範囲は30°と720°の間で、デフォルト設定は180°とします。ウィンドウ幅対分解能の比率は必ず180未満となります。

外乱が周期的に繰り返されるタイミングを回転角に対して実験的にあてはめることによって、簡単に使用範囲(ウィンドウ幅)を決定できます(画面のコピーを参照)。この例には、周期的外乱が720°毎にあります。

  • 最小速度: 実際の回転速度が定義された最小回転速度より小さいときに、この仮想の回転速度は適用されています。
  • 分解能: この値は、新しい平均値がどれくらいの頻度で(各測定が何度の時に)計算されるかを決定します。 総合的アップデート率に従って計算速度が決定されるので、受入れられた最大許容回転速度はこの値に依存することに注意してください。

理論値は以下の式により計算できます: 最大回転速度=分解能X総合的アップデートレート/6

実務では、この理論的に可能な最大回転速度の10~20%に達する値を使用してください。

分解能

総合的アップデート率1万9200Hzにおける理論上の最大回転速度

総合的アップデート率38,400Hzにおける理論上の最大回転速度

3200 rpm

6400 rpm

6400 rpm

12,800 rpm

12,800 rpm

25,600 rpm

19,200 rpm

38,400 rpm

25,600 rpm

51,200 rpm

ウィンドウ幅によって、以下の回転数の倍数は抑制されます:

ウィンドウ幅

倍数

90°

4, 8, 12, …

120°

3, 6, 9, …

180°

2, 4, 6, …

360°

1, 2, 3, …

720°

0, 5, 1, 1, 5, …


注意: 信号源の1つが無効である場合は、出力信号も無効になります。

動作中のCASMA

フィルタなしのトルク信号(赤)、CASMAフィルタされたトルク信号(緑)。CASMAフィルタにより、時間軸に対して変化するエンジン速度に相関して非常に安定したトルク計測値ができる事が明らかになりました。このフィルタは幅が大きければ大きいほど、結果が良くなります。

事例

この短い例では、PMXはトルクM[Nm]及び対応するCASMAフィルタに加えて、電力P[W]、回転速度n[1/s]、加速度[1/s2]を分析するのに使用されます。以下の画像に示されている計算チャンネルはこの目的のために作成してあります。catmanを使用して信号を表示しています。

計算:

電力:

角速度:

 

角加速度:

重要:すべての計算において、回転速度nは分速から秒速に必ず変換して下さい。

チャンネル

Catmanの下記画像に表示された全チャンネルを参照。枠内の色は曲線の色に対応しています。信号は以下のチャンネルから成ります:


トルクM (赤):

  • PX460の計測チャネルから直接

CASMAフィルタ (緑):

  • 既に詳細説明済み

電力P (黄):

  • デバイダ (回転数n/60)、1秒あたりの回転数
  • 一定信号 (2*pi)
  • 乗数 (M * n [1/s] * 2*pi]

回転速度n (橙):

  • PX460の計測チャネルから直接

角加速度(青):

  • 乗数(2*pi*n[1/s])、角速度wに変換
  • 識別因子 (w)