技術解説シリーズ: 高精度なひずみ応力解析のヒント - パート2

応力解析において、様々な手法で計測エラーを補正できるひずみゲージ式計測技術は、長年に渡り改良が行われてきました。それでもなお、計測に悪影響を与える要因は残っています。この記事では、ひずみゲージを応力解析に使う場合の誤差要因(通常、回避可能な場合が多い)をとりあげ、準備の初期段階で不確かさを評価する方法を紹介します。

図6:ひずみゲージの計測点と誤差要因の信号フロー図

計測チェーンの構成要素

論点を明確にし、かつ理解しやすくするために、ここでは一軸応力だけに注目します。ブロック図(図6)は計測信号の流れを示しています。これはまた、計測チェーンの誤差要因とそれぞれの要因が計測チェーンの重要な要素に与える影響の程度を示しています。これらの重要な要素への影響がゼロ点に影響する可能性がある場合は、青で示されています。

計測対象(DUT)

計測対象に負荷がかかっている場合には、負荷σが計測対象の材料に加えられています。これにより、材料には弾性係数に反比例する作用が起こります。この材料ひずみは、ひずみゲージにより表面ひずみとして計測できます。

弾性係数はそれ自身が不確かさ(弾性係数の公差)を含んでいます。構造材としての鋼を幅広く調査した結果、その弾性係数の公差は4.5%であることがわかりました。また、弾性係数は温度影響を受けます。その程度は弾性係数の温度係数に依存します。

ひずみゲージが(たとえばロッド上の)表面にそって盛り上がるように貼付されている場合、計測グリッドのひずみ量は被計測体の表面のひずみ量よりも大きくなります。

理由は湾曲の中心からの距離と関係しています: 計測グリッドが湾曲の中心から離れるほど、また被測定体が薄ければ薄いほど、ひずみ量はより大きくなります。接着剤の厚さやひずみゲージの構造はこれには大きく影響しません。また温度変化(Δt)があると、被計測体は熱膨張係数に従った熱膨張を起こします。これはゼロ点固定式の計測には重要な要素となります。

弾性変形後の2次効果により(材料のミクロレベルでの弛緩過程で発生)、材料ひずみは負荷を加えた後でやや減少します。チャートには不確さ要因の例がいくつか示されています。

演算式に使用されている記号の説明

ひずみゲージの貼付

必要な入力量は被計測体のひずみ量です。理想的には被計測体のひずみ量はひずみゲージの計測グリッドの実ひずみ量と同じです:

しかしながらどんなに注意しても、アライメントのずれをはじめとするゲージ設置時のエラーは発生します。弾性体であるひずみゲージが機械的負荷を受けると、自らのひずみに加え、接着剤の変形特性とひずみゲージのキャリアに依存したクリープバックが外周部分にそって発生します。またわずかなヒステリシスも発生し変換器製造時にはひずみゲージのこうしたクリープバック現象を考慮して材料の2次ひずみ影響を最小化します。この補正をひずみ応力解析で行うことはかなり大変です。また設置面が湾曲している場合にひずみが大きくなる可能性があります(上記を参照)。

計測ポイントが湿度や湿気に対して適切に保護されていないと、接着剤とキャリアが湿気を含み膨らむ可能性があります。これはひずみゲージにおける想定外の誤差要因となります。

また、ゲージの含水量は他の計測方式と同様に計測値の安定性に影響します(以下参照:ひずみゲージの絶縁抵抗)。特にゼロ点固定式の計測では、ひずみ変動が上で述べた誤差要因に起因するものなのか、あるいは材料の真のひずみなのかを判断できない場合があります。このため、特にゼロ点固定式の計測においては、計測ポイントの保護が不可欠です。

これは正しい設置をしないと、計測グリッドのひずみが、材料のひずみに正確に対応していないという結果になります。

ひずみゲージ

ひずみゲージは、計測グリッドのひずみを、そのひずみに比例した抵抗値(相対値)に変換します。

ファクターKとその温度に対する感度公差は不確さの要因になります。

ひずみが均等に分布していない場合は、計測グリッドの対応範囲にあるひずみの平均が、抵抗値(相対値)に変換されることに注意してください。その結果、ひずみゲージの有効長が適切でない場合は、ひずみや材料の負荷計測値は、過小であったり過大であったりします。重量計測では機械的負荷の最大ピーク値を判断するときに特に重要になります。

ひずみゲージの温度特性はゼロ点には全く影響しません。しかし、温度差が大きい場合で、計測対象の材料(DUT)の熱膨張係数が正しくない場合は、大きく影響します。

ゲージ自体の発熱(ひずみゲージの電力消費により発生)により、計測対象の材料とひずみゲージの間に温度差が生じるので、同様の影響が出ます。これが、計測用アンプに非常に低い印加電圧を設定する理由です。計測装置は、わずかなブリッジ出力電圧を、正確に増幅できます。しかしながら、計測対象が薄い場合や熱分散が不十分な材料の場合は、要注意です。

ひずみの変動幅が大きく(>1500 μm/m)、頻繁に変動する場合は、計測グリッドの疲労による劣化が起き、ゼロ点が変動する可能性があります。

ひずみゲージは横方向にも感度がありますが、大きな誤差要因にはなりません。一軸応力状態では、ファクターKの横軸感度はファクタKの実証時に考慮されます。最大1000 μm/mまでの非直線性は、ひずみ計測では無視できます。

湿気や湿度の影響を受けると絶縁抵抗値が減少します。ひずみゲージ接続部の接触抵抗値が変動するので、一般的には計測値の表示が不安定になります。もともと抵抗値が低いひずみゲージはそれほど湿気と湿度の影響に敏感ではありません。

計測用アンプ

計測用アンプへの入力量はひずみゲージの抵抗値で相対的変動です。

その値は非常に小さい(1000 μm/mでファクターKが2の場合、120Ωに対して、ちょうど0.2%もしくは0.24Ω)ので、応力分析では3個の固定抵抗器(通常、計測用アンプの中に)をホイートストン・ブリッジ(1ゲージ式ブリッジ回路)に追加します。2ゲージ式、4ゲージ式のブリッジ回路の特長、および計測の不確さを減少させる使用方法はここでは述べません。

ここでは1ゲージ式ブリッジ回路のひずみゲージを1個接続した場合を考えます。通常、ブリッジの不均衡と抵抗値の相対的変化の相関関係は以下の式で表せます。

実際の相関関係にはわずかな非直線性がみられ、以下にその詳細を説明します。

計測用アンプはブリッジ回路に電圧供給し、そこからの出力電圧を増幅して計測値として出力します。

長距離配線からくる配線抵抗値、磁場干渉、熱電効果による電圧、および計測用基板自体により起こる計測誤差はここではあえて考慮しません。

多芯ケーブル、拡張クロイツァー回路、シールドの設計、最新型のTF計測アンプなどの汎用技術によって、こうしたノイズはほぼ完全に回避できます。

続きは ...

近々掲載の「応力分析試験の計測精度」パート3で、続きをご覧ください。

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