フランス電力(EDF):インフラ設備の安全性監視 フランス電力(EDF):インフラ設備の安全性監視 | HBM

フランス電力(EDF)のパッシー水力発電所は、オート・サヴォワ県で最も重要な発電所で、ダムや氷河からの水を使用して発電しています。2013年後半には、大規模な土木工事が、氷河の水を運搬する導水管の近くで計画されていたため、この工事が導水管とその周辺設備の安全性に全く影響を与えないようにする必要がありました。

山岳地帯でよく見られるこのタイプの大口径導水管は、内圧に耐えるために大口径金属パイプの外周にワイヤーロープを密に巻き付け補強しています。監視対象となった導水管の区間は長さ40mで、4箇所のサポート台座によって地面に固定されています。「この監視システムを構築するために、EDFの別の施設で、このタイプのプロジェクトに実績のあるHBMに依頼しました。HBMの実績は、納品後、直ちに稼働できるターンキー・ソリューションとしてデータ収集システムを提案から設計・設置まで一貫して行い成功したことです。この成功事例をもとに、EDFは、同じ方式を採用することにしました」と Claire Pérot氏(EDF水力発電エンジニアリングセンタの機械工学エンジニア)は語っています。

お客様紹介

フランス電力会社(EDF) 水力工学センタ(HEC)

EDF - Direction Production Ingénierie

Centre d'ingénierie Hydraulique

37, rue Diderot - BP176

38042 GRENOBLE Cedex 9

詳細は EDF sur le projet Passy をご覧ください。

 

計測システムを過酷な環境で使用

センサには標準的な箔タイプのひずみゲージを使用しました。ひずみゲージ(合計16個)の設置は、高所作業に対する安全対策が必要なので、この種の危険な作業に精通した企業の支援のもとに実施されました。「導水管の変形状態を示すデータを収集するために、ひずみゲージを導水管の外壁に沿って配置しました。設置個所は各サポート台座周辺で、台座に支持されている導水管の下側の2か所とその上側(3時と9時に位置)の2か所です。これらのひずみゲージによって計測されたデータを数学的に処理して、総合的な解析を行いました」とClaire Pérot 氏は述べています。

導水管の内側に流れる水は氷河を水源にしており、夏と冬の両方とも水温は約 5 ℃です。水温は大きく変動しないので、導水管が空である場合を除き、温度補償の問題は大きくありません。それでも、夏には周囲温度が 30 ℃まで上昇する(もしくはそれ以上)可能性がありますが、導水管表面の温度計測値により、熱膨張によって起きた誤差を補償することができます。

ひずみゲージは2ゲージ式で、温度補償用のひずみゲージ付きです。ひずみゲージと制御ユニット間の距離(最大80 m)が大きかったので、5線式回線を使用して線の長さを補正する必要がありました。また上記の導水管の温度以外にも、環境温度と制御ユニットの内部温度も計測しています。

制御ユニット

導水管の近くにある制御ユニットは、外気にさらされており極寒の冬と灼熱の夏には環境温度が大幅に変化します。計測値の収集用には、動作温度範囲が -10 ~ 60 ℃のPMXを2台使用しています。PMXのサンプリング周波数(最大 38.4 kHz )と解像度( 24ビット)は、この種のアプリケーションには十分以上の性能です。デジタル化されたデータは、Ethernet経由でBeckhoff製の耐久型産業用PCに送信されます。PCはHBMのcatmanソフトウェアを使用して、監視タスクを実行するように設定されています。実際のところ、HBMには、このアプリケーションに対応できるもっと高性能な装置がありますが、このプロジェクトはこれ以上の展開予定がないので、コストを最小限に抑えたソリューションが採用されました。

HBMがデータを記録

計測データは、スペクトリス・グループ(HBMも所属)のレッドライオン社によって数年前に買収されたSixnet社の3GルータによってHBMサーバに送信されます。設定値を超えた場合は、フランス電力(EDF)に対して警報がメールで発信されます。それ以外の場合は、計測結果の要約がExcel 形式で毎月送信されます。このプロジェクトでは、EDFが独自にデータ分析を行ないHBMは分析作業に参加しませんでしたが、分析サービスはHBMでも提供しています。

HBMは、このプロジェクトを総合的に担当し、EDFと共同で、システムの基本要件の原案作成や工事スケジュールの作成を行いました。今回のセンサや装置の仕様は標準的ですが、過酷な環境での設置なので、ひずみゲージの設置に関しては、様々な種類の高度な専門知識が必要になりました。例えば、高所作業になるので、特殊な作業者が必要でした。また、かなり錆が進行した外壁面にセンサを設置するので、それなりの経験が必要になります。山岳地帯での設置にはよくあることですが、鳥の攻撃による損傷を防止するために、ケーブルはプロテクタで保護しました。