高精度なひずみ応力解析のヒント

応力解析において、様々な手法で測定エラーを補正できるひずみゲージ式計測技術は、長い間製品改良が進んでいます。それでもなお、計測に影響を与える要因は残っています。ここではひずみゲージを応力解析に使う際の誤差要因(通常、回避可能な場合が多い)をとりあげ、準備の段階で不確かさを判断する方法を紹介します。

ゼロ点固定式の計測

ゼロ点固定式の計測とは、一般に、現在の計測値を計測開始時の計測値を参照しながら計測する方式です。計測は、数週間、数カ月または数年間も連続する場合があり、この期間中は計測チェーンの「ゼロ点補正」は全く実行されません。ゼロ点固定式の計測は、ゼロ点補正を随時おこなう計測に比べ、ゼロ点の長期安定性が重要になります。これは、ゼロ点ドリフト(温度や他の環境の影響による)が計測の結果に含まれてしまうからです。

ゼロ点のドリフトは、特にひずみ値が小さいと影響が大きくなります。何故なら計測値に対する相対的な偏差が非常に大きくなるからです。機械部品や構造体に起こるひずみは安全な弾性変形の範囲内で使用するので、100μm/mに達しない場合が多くあります。この場合、ゼロ点が100μm/mずれると、100%の測定誤差になります。

構造体監視の連続測定は、ほとんどの場合ゼロ点固定式の計測であるので、環境の影響からひずみゲージを保護することに特に注意する必要があります。長期安定性のある計測ポイントを使用することが不可欠です。また大きい温度変動が予想されるので、可能なら温度係数を小さくしてください。大型構造体に対して、計測信号の振幅が小さい場合は、ゲージの設置不良による影響が相対的に大きくなります。計測エレクトロニクスはゲージ抵抗値のあらゆる変化に反応し、画面にそれを表示します。

被計測体の量的変化や水分子の侵入により計測値が影響を受ける可能性があります。実際の計測値は、すべてのひずみの集合信号となり、有用なひずみと不要なひずみの区別はできません。

 

 

ゼロ点を固定しない計測

ゼロ点を固定しない計測とは、データ損失なしで、特定の時点でゼロ点補正を行いながらする計測です。「ゼロ点補正」後の値だけが有効です(電源スイッチが入るたび、ヘルスメータは情報のロスなしに自動的に風袋を補正)。負荷がオンオフする試験(短期的な計測方式によくあるタイプ)では、「ゼロ点補正」は負荷がゼロの時に簡単に行えるので、ゼロ点ドリフトは全く問題になりません。

破壊試験では、非常に高いひずみが起こるので、ひずみゲージの計測範囲が適切であるがことが重要です。何週間も準備して設置したひずみゲージが機能しないのは、時間と費用が無駄になります。

実験室などの室内では、周囲条件(温度、湿度)が安定しているので、正確な計測が可能です。しかし、野外など湿度が高く温度変動が大きい環境では、計測は困難になります。

 

 

図6:ひずみゲージの計測点と誤差要因の信号フロー図

計測チェーンの構成要素

論点を明確にし、かつ理解しやすくするために、ここでは一軸応力だけに注目します。ブロック図(図6)は計測信号の流れを示しています。これはまた、計測チェーンの誤差要因とそれぞれの要因が計測チェーンの重要な要素に与える影響の程度を示しています。これらの重要な要素への影響がゼロ点に影響する可能性がある場合は、青で示されています。

計測対象(DUT)

計測対象に負荷がかかっている場合には、負荷σが計測対象の材料に加えられています。これにより、材料には弾性係数に反比例する作用が起こります。この材料ひずみは、ひずみゲージにより表面ひずみとして計測できます。

弾性係数はそれ自身が不確かさ(弾性係数の公差)を含んでいます。構造材としての鋼を幅広く調査した結果、その弾性係数の公差は4.5%であることがわかりました。また、弾性係数は温度影響を受けます。その程度は弾性係数の温度係数に依存します。

ひずみゲージが(たとえばロッド上の)表面にそって盛り上がるように貼付されている場合、計測グリッドのひずみ量は被計測体の表面のひずみ量よりも大きくなります。

理由は湾曲の中心からの距離と関係しています: 計測グリッドが湾曲の中心から離れるほど、また被測定体が薄ければ薄いほど、ひずみ量はより大きくなります。接着剤の厚さやひずみゲージの構造はこれには大きく影響しません。また温度変化(Δt)があると、被計測体は熱膨張係数に従った熱膨張を起こします。これはゼロ点固定式の計測には重要な要素となります。

弾性変形後の2次効果により(材料のミクロレベルでの弛緩過程で発生)、材料ひずみは負荷を加えた後でやや減少します。チャートには不確さ要因の例がいくつか示されています。

演算式に使用されている記号の説明

ひずみゲージの貼付

必要な入力量は被計測体のひずみ量です。理想的には被計測体のひずみ量はひずみゲージの計測グリッドの実ひずみ量と同じです:

しかしながらどんなに注意しても、アライメントのずれをはじめとするゲージ設置時のエラーは発生します。弾性体であるひずみゲージが機械的負荷を受けると、自らのひずみに加え、接着剤の変形特性とひずみゲージのキャリアに依存したクリープバックが外周部分にそって発生します。またわずかなヒステリシスも発生し変換器製造時にはひずみゲージのこうしたクリープバック現象を考慮して材料の2次ひずみ影響を最小化します。この補正をひずみ応力解析で行うことはかなり大変です。また設置面が湾曲している場合にひずみが大きくなる可能性があります(上記を参照)。

計測ポイントが湿度や湿気に対して適切に保護されていないと、接着剤とキャリアが湿気を含み膨らむ可能性があります。これはひずみゲージにおける想定外の誤差要因となります。

また、ゲージの含水量は他の計測方式と同様に計測値の安定性に影響します(以下参照:ひずみゲージの絶縁抵抗)。特にゼロ点固定式の計測では、ひずみ変動が上で述べた誤差要因に起因するものなのか、あるいは材料の真のひずみなのかを判断できない場合があります。このため、特にゼロ点固定式の計測においては、計測ポイントの保護が不可欠です。

これは正しい設置をしないと、計測グリッドのひずみが、材料のひずみに正確に対応していないという結果になります。

ひずみゲージ

ひずみゲージは、計測グリッドのひずみを、そのひずみに比例した抵抗値(相対値)に変換します。

ファクターKとその温度に対する感度公差は不確さの要因になります。

ひずみが均等に分布していない場合は、計測グリッドの対応範囲にあるひずみの平均が、抵抗値(相対値)に変換されることに注意してください。その結果、ひずみゲージの有効長が適切でない場合は、ひずみや材料の負荷計測値は、過小であったり過大であったりします。重量計測では機械的負荷の最大ピーク値を判断するときに特に重要になります。

ひずみゲージの温度特性はゼロ点には全く影響しません。しかし、温度差が大きい場合で、計測対象の材料(DUT)の熱膨張係数が正しくない場合は、大きく影響します。

ゲージ自体の発熱(ひずみゲージの電力消費により発生)により、計測対象の材料とひずみゲージの間に温度差が生じるので、同様の影響が出ます。これが、計測用アンプに非常に低い印加電圧を設定する理由です。計測装置は、わずかなブリッジ出力電圧を、正確に増幅できます。しかしながら、計測対象が薄い場合や熱分散が不十分な材料の場合は、要注意です。

ひずみの変動幅が大きく(>1500 μm/m)、頻繁に変動する場合は、計測グリッドの疲労による劣化が起き、ゼロ点が変動する可能性があります。

ひずみゲージは横方向にも感度がありますが、大きな誤差要因にはなりません。一軸応力状態では、ファクターKの横軸感度はファクタKの実証時に考慮されます。最大1000 μm/mまでの非直線性は、ひずみ計測では無視できます。

湿気や湿度の影響を受けると絶縁抵抗値が減少します。ひずみゲージ接続部の接触抵抗値が変動するので、一般的には計測値の表示が不安定になります。もともと抵抗値が低いひずみゲージはそれほど湿気と湿度の影響に敏感ではありません。

計測用アンプ

計測用アンプへの入力量はひずみゲージの抵抗値で相対的変動です。

その値は非常に小さい(1000 μm/mでファクターKが2の場合、120Ωに対して、ちょうど0.2%もしくは0.24Ω)ので、応力分析では3個の固定抵抗器(通常、計測用アンプの中に)をホイートストン・ブリッジ(1ゲージ式ブリッジ回路)に追加します。2ゲージ式、4ゲージ式のブリッジ回路の特長、および計測の不確さを減少させる使用方法はここでは述べません。

ここでは1ゲージ式ブリッジ回路のひずみゲージを1個接続した場合を考えます。通常、ブリッジの不均衡と抵抗値の相対的変化の相関関係は以下の式で表せます。

実際の相関関係にはわずかな非直線性がみられ、以下にその詳細を説明します。

計測用アンプはブリッジ回路に電圧供給し、そこからの出力電圧を増幅して計測値として出力します。

長距離配線からくる配線抵抗値、磁場干渉、熱電効果による電圧、および計測用基板自体により起こる計測誤差はここではあえて考慮しません。

多芯ケーブル、拡張クロイツァー回路、シールドの設計、最新型のTF計測アンプなどの汎用技術によって、こうしたノイズはほぼ完全に回避できます。


弾性係数の許容値

弾性係数(メーカー仕様)は、その許容値が数パーセントの場合もあり、不確かさの原因になります。適切なテストラボで正確に弾性係数を決定することは、コストがかかり実施できない場合があります。

応力計測もしくは、応力解析(ESA)と呼ばれる計測では、弾性係数の相対的不確かさは同じ量的スケールで、機械的負荷に応じた不確かさをも生みます。

これは、ある材料に5%の不確かさを持つ弾性係数がある場合、その材料の機械的負荷は、この要素だけで5%の不確かさを持つことを意味します。

また、弾性係数には温度係数(TC)があるので、温度にも依存します(鉄鋼 ≈ -2x10^-4 /K )。弾性係数の相対的変化は製品から発生します:

これが同じ大きさの機械的負荷の不確かさになります。

例: 23℃での鉄鋼の弾性係数を使用して、計測を33℃で実行する場合は、弾性係数は0.2%小さくなります。この温度効果を演算補正しないと、弾性係数の許容値に0.2%を加えた誤差が発生します。しかし弾性係数のTC自体が温度に依存していることに注意してください。これは温度効果は完全には補正できないことを意味しています。

演算式に使用されている記号の説明

ゼロ点非固定式の計測における不確かさの推定

この計測方式の重要なポイントは、計測結果を分析する際に、ゼロ点が不要であることです。それはこの方式が、変化量だけを対象としており、計測中にゼロ点が全く変動しない(比較的短い期間の計測試験の場合)からです。例えば、衝突試験、引張試験など短時間で完結する荷重試験が挙げられます。

負荷を加えた後の材料の変化とひずみゲージのクリープは、ゼロ点非固定式の計測では重要な場合があるので、このセクションで解説します。逆に、熱膨張、接着剤の膨張、絶縁抵抗の低下、ひずみゲージの温度応答性、ひずみゲージの劣化などの現象は、ゼロ点非固定式の計測においては、ほぼ無関係です。

もちろん、計測点に障害が起きている場合でも、短時間なら絶縁抵抗の荷重試験中に値が劇的に低下することは通常はありません。

計測対象の曲げ半径は、曲げモーメントを引き起こす負荷(ひずみの増加)に依存


  図7:曲げモーメントがかかる部品上に設置されたひずみゲージ

ひずみゲージが計測グリッドに沿って縦方向に曲がる部品上に設置されている場合は、計測グリッドのひずみと部品表面の真のひずみの間に誤差が生じ(図7)、得られる計測値が過大になります。曲げ半径が小ければ小さいほど、部品表面から計測グリッドまでの距離が大きくなり、影響はより大きくなります。

また、ひずみゲージが凹面に設置されている場合でも、計測値は同様に過大になります。計測誤差の原因は同じです。また、これは以下の方程式が示すような誤差をもたらします:

計測グリッドから部品の計測表面までの距離が 100 μm で、曲げ半径が 100 mm の場合は、ひずみ値の増加量は現在のひずみ値の1/1000です。この例では、真のひずみ値は計測されたひずみより0.1%低い値です。これは、負荷値が0.1%だけ過大に計測されることを意味します。この計測誤差は、曲げ半径が小さい時にだけ起こります。

弾性変形の影響

多くの材料では、それ自身への機械的負荷がなくなった後でも(初期ひずみ値)、材料のひずみは増加し続けます。この現象は、約30分間(23℃の鉄鋼の例)続きます。また、負荷が取り除かれた場合も、同様の現象が起きます。 これによる追加ひずみの初期値に対する割合は材料特性に大きく依存します。この追加ひずみは計測誤差の原因となります。ひずみ値を取得するときだけに起こるので、多くの計測タスクでは、この誤差をほぼ完全に避けることが可能です。

しかしながら、負荷をかけ長時間経過してから計測する場合は、材料のひずみ値が1%(初期ひずみ値と比較して)増加していると、その物質のひずみの計測値は1%に過大になっています。

ひずみゲージの位置決め不良

ひずみゲージが材料の負荷方向(一軸応力状態)に沿って正しく設置されていない場合は、マイナス方向の計測誤差が生じます。そのため計測されたひずみ値は、材料の真のひずみ値より小さくなります。相対的なひずみ誤差は以下のように決定されます: 

アライメント誤差が5度、ポアソン比0.3(鉄鋼)の場合は、ひずみ誤差は、-1%になります。したがって、実際の材料の計測値より1%大きくなります。

ひずみゲージのクリープ

ひずみが材料に加えられた後に、ゲージの計測グリッドにはいくらかクリープ戻りが起きます。この部分は、主として接着剤の特性とひずみゲージの幾何学形状(短い計測グリッドでは影響が大きいが、逆方向に非常に長いひずみゲージはクリープがない)で決定されますが、温度にも依存しています。クリープの影響後では、計測グリッドのひずみは実際の材料ひずみより小さくなります。応力解析によく使用されるひずみゲージ(計測グリッドの実効長6mmのHBMタイプLY11-6/120)に対して、接着剤Z70(HBM製)を温度23℃で使用した場合は、1時間以内に約0.1%のクリープ戻りが生じます。これは計測された負荷に対して、-0.1%の相対的計測誤差があるのと同じです。もちろん、計測値を負荷直後に決定した場合は、誤差はより小さくなります。負の値なので、ひずみゲージのクリープは、弾性余効に対して少なくとも部分的に補正され、通常、応力解析では完全に無視されます。しかしながら、他の種類の接着剤をより高い温度で使用するときには注意してください。例えば、70℃で接着剤X60(HBM製)を使い2000 μm/m のひずみが生ずる場合、1時間後に起こる誤差は-5%です。

ひずみゲージのヒステリシス

同様のことがヒステリシスにも適用されます: 計測グリッドが短い場合は、重要になる傾向があり、接着剤も影響します。接着剤Z70が使用された場合にだけ、±1000μm/mのひずみに対して、ひずみゲージLY11-6/120のヒステリシスは0.1%のみで、無視できるレベルです。

しかし、計測グリッドの有効長が0.6mmである短ゲージ(LY11-0.6/120)を使用する場合は、ヒステリシスは増加し、ひずみ計測の不確かさは1%になります。

ゲージ率

ゲージ率の許容値

ここでは計測チェーンがゲージ率の公称値(ひずみゲージのパッケージに記されている)に対して正確に調整されていることを前提にしています。 ゲージ率はひずみの変化と相対抵抗値の変化との相関関係を表す定数です。 ゲージ率はメーカーで実証的に決められています。一般に、ゲージ率の不確かさは1%です。また、ゲージ率はゲージのパッケージに記載されています。この不確かさは、ひずみとひずみ計測の両方に対して同じ程度の不確かさとなります。

ゲージ率の温度係数(TC)

ゲージ率は温度に依存します。 依存の度合と方向は計測グリッドに使用される合金の種類によって決まります。応力解析のためには、ゲージ率のTCそれ自体が温度依存しているという事実を無視できます。コンスタンタン製の計測グリッドでは、TCは1ケルビンあたり約0.01%です。したがって、ゲージ率は温度が10K増加すると0.1%減少しますが、これは通常無視できる大きさです。 計測が33℃で行われる場合は、ひずみ値や負荷値がちょうど0.1%プラス側にずれます。

しかし、120℃では1%となり、考慮する必要があります。

計測グリッドの長さ

一般的に知られているように、ひずみゲージはゲージの下にある実際の表面のひずみを計測します。その活性面に覆われているエリアが均質でない場合は、抵抗値の相対的変動は最も大きい部分的なひずみに対応せずに、むしろ実際の計測グリッドの平均ひずみに対応します。確認したいのは最大負荷なので、これは致命的です。この場合、計測値は重要なひずみの最大値より小さい値となります。

この現象は良く知られており、実際のアプリケーションでは適切な対策(短い計測グリッド)が採用されるので、主要な誤差はめったに発生しません。参考のために、一例を挙げます: 計測はビーム先端に対する曲げ応力に適用されます。ひずみゲージは計測グリッドの下の平均ひずみ量を計測します(図8)。ひずみは負荷のように振る舞います:

実際に必要である最大応力値は、この単純なケースでは演算補正により容易に決定できました。これが行えない場合は、最大応力からの計測結果は実際の値より誤差が生じます。

相対誤差は以下の通りです:

l2(エル2:length2)の2%未満の有効長を持つ計測グリッドが上記の例で使用される場合は、誤差は計測値の1%未満まで下がります。


結局、ひずみの最大値とひずみ計測値の比率は計測グリッドの下のひずみの分布に常に依存します。これが有限要素法計算により、ストレスの算術平均から希望の最大値を計算できます。


もちろん、ひずみゲージが適切な場所に設置されていないと、誤差が生じます。しかし、これは通常、避けることができます。

図8: 曲げビーム上の最大負荷を計測するひずみゲージ

図9: 過酷な環境に設置されたひずみゲージ

非直線性

ひずみゲージの非直線性

適切な計測グリッドの材料(コンスタンタン、Karma、ニクロムV、プラチナ-タングステン)を使用したひずみゲージは直線性に優れています。ひずみ値が大きい場合は、コンスタンタン製の計測グリッドでは、かなりの誤差が起こります。実際の静的特性曲線は、以下に示す二次方程式(式12)で非常に適切に(経験則により)表現できます:

ひずみが以下の式で表せる場合は

非直線性は全くありません。
しかしながら、二次成分は実際のアプリケーションでは無視されますが、その結果として起こる誤差はここで示されています。真の値に対する決定されたひずみ値の相対誤差は、ひずみ自体と同じ大きさです:

最大1000 μm/m までのひずみに対しては、相対的なひずみの誤差は0.1%を超えていません。これは 1 μm/m となり、無視できる大きさです。

線形誤差は、大きいひずみ領域で意味ある大きさになります:

10,000 μm/m では1%、
100,000 μm/m では10%になります

大部分は、幸い1ゲージ式ブリッジ回路の非直線性によって補正されます。

単ゲージ式ブリッジ回路の非直線性

抵抗値の小さい相対的変動が、ホイストーンブリッジ回路で分析されます。通常、1計測点あたり1個のひずみゲージが応力解析で使用されます。したがって、他のブリッジ抵抗値はひずみから独立しています。この場合の負荷比の正しい関係は以下の通りです:

関係は非線形ですが、実用的な計測アプリケーション(既知か否かに関係なく)では線形の近似方程式

が適用されます。これにより相対的誤差は、以下の式(式17)で表せます。

1000 μm/m(k=2で) のひずみは相対抵抗値において、0.2%の変化をもたらします。

上記の式17で決定する相対計測誤差は。 -0.1%です。これは -1 μm/m の非直線性と同等です。この誤差は無視できます。

しかしながら、上に述べられるように、ひずみが大きい時には、かなりの線形誤差が生じます:

10,000 μm/m は-1%の誤差をもたらします。100,000 μm/m は-9.1%の誤差をもたらします。

コンスタンタン製ひずみゲージが使用される場合は(非線形性の程度は同等ですが、誤差の方向は正反対)、これらの2つの誤差は相互にほぼ相殺されるので、考慮する必要はありません。

(注意) しかしながら、どんな補正も完全ではありません。特にゲージ率が2から少し離れていて、実際の静的特性曲線が正確には実証的な式12に適合していない場合などがその例です。

個々の不確かさの総和

個々の原因から発生する不確かさを、互いに関連させるのは困難ですが、原因(材料による影響、ひずみゲージクリープ、ひずみゲージと単ゲージ式ブリッジ回路の非直線性)によっては、不確かさが相殺されます。したがって、個々の不確かさはピタゴラスの和として合計できます。例えば、上記の個々の不確かさは、不確かさの総和を得るのに使用できます。

ひずみ計測の不確かさはちょうど3%未満です。その負荷値は計測値のおよそ6%に達します。

このパーセンテージに計測値を乗算すると、誤差がμm/mまたはN/mm2で得られます。一般に、弾性係数の不確かさは、応力解析をゼロ点非固定で行う場合、最も大きな誤差要因となります。ゼロ点固定式での計測においては、追加の不確かさを考慮する必要があります。

ゼロ点固定式の計測に対する計測不確かさの推定

このタイプの計測ではゼロ点の安定性が重要です。代表的なアプリケーション例は、建築物の長期計測やコンポーネントの疲労度試験です。ゼロ点が計測タスクの途中で変化する場合は、この部分が計測誤差に追加されます。本レポートは既刊のパート3で説明した計測の不確かさに関する情報とあわせてご利用いただくことで理解が深まります。

接着剤と計測グリッドキャリアの膨張

この主因は、水分子は高い移動性を持つことと、接着剤やキャリアに使用されている材料の吸湿性です。その影響は明確に認識できない(材料のひずみと区別できない)ゼロ点シフトで、かなりの値になる可能性があります。計測対象には存在しないひずみを計測値として表示してしまいます。この寄生応力は部分的に方向が反転します(おそらく収着ヒステリシスのためです)。残念ながら、「ヘアドライヤを取り出して」水の分子を追い出すというようなことはできません。計測値がドリフトする速度は、計測ポイントに対する保護の程度と周囲条件に依存します。その時定数は数時間におよぶ可能性があります。高温や高い相対湿度は特に危険な環境要因です。残念ながら、これらに関しては具体的な演算や数値は確立していません。

絶縁抵抗

また、フラックスなどの残留物は水分を吸収します。これは実際のアプリケーションでは「ひずみ表示のちらつき」として見える現象で、風通しなどの影響による計測値の変動とはだいたい区別できます。この様な場合は、すべての接点を完全に清掃すると効果が出ます。また、残留物などを外から加熱して強制的に乾燥させることが可能なケースもあります。しかしながら、この対策は湿気が計測ポイントの保護カバーの内側に密封されていないことが条件です。実務的には、計測ポイントをカバーする前に、周囲温度と比較して数Kほど高い温度で加熱後、ただちに封入します。これにより、カバーの内側で結露が起こる可能性を排除できます。絶縁抵抗値が低過ぎる場合は、計測値のゼロ点ドリフトが起きます。ブリッジ回路の絶縁抵抗値は極めて重要です。ひずみゲージ回路上の接点における絶縁不良は抵抗値を大きく変動させる可能性があります。直接計測できませんが、絶縁抵抗と同じレベルの影響が出る可能性があります。見かけのひずみとシャントとの相関関係は以下の通りです:

この公式が示すように、高抵抗のひずみゲージでは影響が低くなります。以下の測定誤差は120 Ω のひずみゲージ(ゲージ率=2)の場合です:

「正常な」状況では、50 MΩ 以上の絶縁抵抗値がある場合は、1.2 μm/m 未満の偏差となり、これは無視できるレベルです。

絶縁抵抗値500 kΩ では、1000 μm/m の計測値に対して-12%のゼロ点誤差が生じます。これは、絶縁抵抗値の大幅な劣化は計測ポイントの破壊につながることを明確に示しています。ひずみゲージセンサには、数GΩの絶縁抵抗値があります。

高温と高い相対湿度が同時に存在する場合(飽和蒸気など)は、水分の蒸気圧が高くなるので危険な状態です。高温高圧の小さい水分子が押し寄せて、徐々に計測ポイントの保護壁を破壊します。計測ポイントが数日後か数年後に崩壊するかどうかの予測は、テストなしでは不可能です。

疲労

ひずみゲージの計測グリッドの疲労による影響はゼロ点のシフト(材料における見かけのひずみ)として表れます。負荷方向が変化するひずみの振幅や負荷サイクル数が大きければ大きいほど、影響はより大きくなります(図10参照)。

また、ひずみの設置状況やひずみ値の算術平均もゼロ点シフトに影響します。平均値が負なら、疲労寿命は長くなり、値が正なら短くなります。実際には、最大振幅が1000 μm/mまでの負荷方向が交互に代わるひずみの場合、ゼロ点シフトはゼロの可能性があります。振幅がこれより大きい場合は、ドリフトが大きく出る可能性があります。10 μm/mレベルのゼロ点誤差は以下の条件のときです:

振幅1500 μm/m で負荷サイクル約2,000,000回
振幅2000 μm/m で負荷サイクル約100,000回
振幅2500 μm/m で負荷サイクル約4,000回
振幅3000 μm/m で負荷サイクル約100回

ここで、計測対象の材料もひずみゲージと同様に疲労することにご注意ください。計測対象の耐久性が箔タイプのひずみゲージより大きい場合は、長寿命の光学式ひずみゲージの使用をご検討ください(ファイバブラッググリッド)。

図10: ゼロ点はひずみの振幅とサイクル数に依存

部分的な不確かさのまとめ

セクション3.3の偏差は、事実上、乗法的であり、計測値の割合として示されます。しかし、このセクションの誤差要因は、加法的な効果があります。誤差要因のユニットはμm/mで、計測値から独立した数値です。相対偏差が以下の式で計算できる場合:

その値はセクション3.3の偏差に匹敵しています。

上記の太文字の値をピタゴラスの和で結合すると、結果は16.01 μm/mです。計測の不確かさは略数なので、このゼロ点の不確かさは17 μm/mです。1000 μm/mのひずみに対しての割合は、1.7%となり妥当な範囲です。しかし小さいひずみでは: 100 μm/mの17 μm/mは17%にもなり使用できません。

ここで、セクション3.3(ひずみ計測では3%)からの不確かさに対してゼロ点の不確かさ(1.7%か17%)をさらに加えなければなりません。

ピタゴラスの和によると:

1000 μm/m のひずみ計測値に対しては4%
100 μm/m では18%

通常、機械的負荷が実際の計測量であるので、その不確かさを推定できます。セクション3.3で計算された応力測定の不確かさは6%です。ゼロ点の不確かさ(1.7%か17%)をピタゴラスの和で合計する:

1000 μm/m では7%
100 μm/m では19%

ゼロ点固定の計測方式では、大きい相対計測誤差が生じ、特に小さいひずみ計測量では悪化します。


鉄骨構造体に設置されたひずみゲージ
ヘリコプターのローターヘッドに設置されたひずみゲージ

ひずみゲージの設置例

レール上に設置されたひずみゲージ
FINO1研究プラットホームのひずみゲージの計測点は北海の水面下にあります。
複合材料(回路基板)に設置されたひずみゲージ

設置時のエラー(人為的要因)

ここまでの説明では、ひずみゲージの計測ポイントへの設置は事前に正しく準備された計画に沿って確実に実行されていることを想定しています。上記の例では不確かさ要因の数個しかセット範囲を超えていません。設置が正しく行われない場合は、残念ながら、計測の不確かさはそれに応じて大きくなります。非常に長いひずみゲージで、V溝上の負荷を計測する場合、または、ひずみゲージへの接触抵抗値が0.24 Ω変動(120 Ωひずみゲージで1000 μm/mのひずみ不確かさに匹敵)する場合を想像してみてください。

長い期間にわたり実施されるゼロ点固定式の計測では、計測点の保護が非常に重要になります。好例は北海(ボルクム島から北45 km)のFINO1研究プラットホーム(全高129 m)の44箇所に設置されたひずみゲージです。ひずみゲージは海面下5~25 mに位置しています。その目的は、くい打ち機、波、風によって引き起こされるプラットホームの支持フレームのひずみを計測することです。北海の水に接してから2年の後でも、42箇所の計測ポイントは完全に機能していました。

別の大きな不確かさ要因は、ひずみゲージが計測面に対して部分的にしかな接触していない場合です。原因は接着面の加工やクリーニングが不十分で、接着剤が正しく機能していないことです。これは絶対避けてください。一般に、消しゴムテストが有効です。短期的な計測(引張試験)では計測ポイントの保護を省ける場合もありますが、ひずみゲージの設置は経験者が最新の注意を払って行うべきです。おそらく、計測ポイントの設置において知識と経験が、これほど重要な役割を果たすのは、ひずみ計測以外にはないのかもしれません。このため、企業や研究所では近年、VDI/VDE/GESA2636に従って様々な資格レベルで担当者を認証する傾向が高まっています。

FINO1研究プラットホームの絵と画像(GL Garrad Hassan 提供)