走行試験をモニタ

ネイメーヘン(オランダ)の運河港近郊の工業団地にハイスター・エール・グループ(HYG)の工場があり、重量物用フォークリフトを2つの製造ラインで製造しています。このフォークリフトは、8~52トンの重量物を持ち上げ、移動できる設計になっています。輸送や仕分け保管など物流関連の産業セクタの発展にあわせて、新型モデルの開発を継続して行う必要があります。たとえば最大積載量、持ち上げ高さや速度、エネルギー消費量、メンテナンス性、安全性などの主要な項目に関する改善です。商品開発と妥当性評価は、完全にハイスター社内で行われています。HBMは走行試験や耐久性試験をモニタするためのセンサとデータ収集装置をHYGに供給しています。

ハイスター社の商品開発は、事前に設定された計画に従って行われ、その詳細な記録が保存されます。その開発計画は、顧客の嗜好の変化、新しい作業手順、新技術、および新しい規制に沿って絶えず調整されています。すべての新モデルは、完全なCAD・CAM環境で開発され、シミュレーションモデルでテストされます。新モデルと既存の製品が異なる度合いは様々です。既存のモデルをベースにして重要な箇所の改良だけになる場合と、ほぼ完全に新しいモデルの開発となる場合があります。どちらにせよ、基本的に新モデルは連続生産に入り、その生産数は需要に依存します。毎年2000台以上のフォークリフトがネイメーヘンで生産され、重量級の分野ではハイスター社がマーケットリーダーになっています。また、同社は特定の重量物を持ち上げる付属品などの顧客特有のソリューションを作成しています。


試作品

新モデルのデジタル設計がいったん完成すると試作品が組み立てられ、この段階で生産開始までの工程が95%完了となります。この試作品は、社内の試験サイトで徹底した実用試験テストにかけられます。フォークリフトは、設計性能の確認、全体構造と構成部品の検査、運転性能の計測を行うために、明確に定義されたサイクル試験が実施されます。顧客の要望やフィードバックはこの段階で処理されます。この最初の試作品終了後、複数台の試作品を制作し、顧客の現場で数か月間、実動テストを行います。これらのテストが完璧に終了すると、新モデルはネイメーヘン工場で正式生産が開始できます。2つの製造ラインがフォークリフトの組み立てに使用されています。1つの製造ラインは、8~16トンの量産モデル用で、もう1つは最大52トンの重量級モデル向けなどの生産数が少ない製品用です。正式製造ラインからの第一号は、徹底した品質検査を受けます。

「製造においては欠陥ゼロを目指しています。」 このため、商品開発、エンジニアリング、品質試験の全プロセスが正確に定義されています。開発段階での欠陥が次工程に持ち込まれると、トータルコストが跳ね上がる可能性があります。「それは技術の検討段階では問題ないのですが、走行テスト前の試作品で発見した場合は、修正費用がかなりのレベルに上がる可能性があります。」

マーク・ジャンセン氏 (ハイスター社信頼性試験リーダー)談


徹底したサイクル試験

「産業用のフォークリフトは特に厳しい作業環境で使用されるので、非常に高い性能要件を設定します。」と試験技術者のロブ・バン・デンブリンク氏は述べています。「最新の試作品は、船舶用コンテナ2個を重ねて持ち上げることができます。乗り心地、最小回転半径、安定性、最大持ち上げ容量などの側面は設計段階で、シミュレーションして検証されます。実走試験は実際の物理的な作業環境における、フォークリフトの運転特性を調べる点において非常に重要です。この段階で耐用年数や信頼性(フォークリフトが故障なしで使用できる時間など)、堅牢性、保守性能などの側面を検証します。フォークリフトとその構成要素に対しては、膨大な数のテストが実施されます。車軸、排気システム、およびタイヤの磨耗度が検査されます。負荷状態でのブレーキテストや油圧系のホース品質試験も実施されます。負荷状態のフォークリフトを傾斜面で走らせ、縦横方向の負荷安定性やカウンターウエイトの適正を検証します。油圧系統を含むマスト(フォークを上下する主軸)は、特殊検査リグで耐久性テストを受けます。さらに、フォークリフトは最大定格積載量を超えた負荷に対する試験も行われます。この試験は、当然ながら特別な安全対策を取って行います。また、エンジン性能や油圧系の油粘度に影響する環境要因(ほこりや温度など)の影響を調べます。」

試験計測装置

古くは1990年代よりHBMはHYGへ試験・計測設備を供給しています。その供給品の中には、シャーシーやマストの負荷を計測するひずみゲージがあります。また、ハイスター社はHBMから様々なタイプのデータ収集システムSomatやQuantumX(大容量データ収集・処理用)を採用しています。計測データの処理・分析には、HBMのnCodeソフトウェアが使用されています。

ヴァン・デン・ブリンク氏によると: 「HBM計測アンプは他メーカー製のほとんどすべての計測用センサや計測器と互換性があります。試験には、ひずみゲージだけではなく、レーザセンサ、引張力用のロードセル、マストの高さと位置計測用の角度センサと変位計も使用しています。また、油圧系統の油圧、燃料消費量、運転システムをモニタしています。GPSデータも収集されています。Somat eDAQliteを使用して、実地試験に関連したすべての試験データの95%を収集・処理して報告しています。極めて堅牢であることを意味する公認の保護等級を持つeDAQliteは、非常に小さいので試作車に搭載することが容易にできます。それは、センサから計測データを収集して、すべてのフォークリフト・データ用のCANバスコントローラと通信します。データはデータロガーに保存するか、または無線モデムで現場のノートブックやネイメーヘンのPCに直接送信します。データリンクの信頼性が非常に高いので、耐久性試験と実地試験を行うために計測設備を米国の顧客に送ることさえできます。

「当社は、テストの際にはできるだけ全ての試験計測施設を使用します。このようにすると、研究開発部門はデザインの有効性を確認し、実際の性能をモニタできる莫大なデータを収集できます。研究開発の観点から情報が必要な場合は、あらゆる手段を駆使してそれを集めます。フォークリフトの各システムが、どのように試験に耐えたのか、また試験による摩耗がどのように起きているかを検証するために、エンジンや油圧ブレーキシステムなどを分解します。特定の顧客のために新モデルを開発する場合は、この新アプリケーション開発用に登録済みの顧客データを適切な試験条件をシミュレートするために使用します。」

マーク・ジャンセン氏(ハイスター社)談