図1:FBG式ひずみゲージの動作原理

構造ヘルスモニタリングに不可欠なセンシング技術

橋梁や高架道路、トンネル、水/ガス/石油パイプラインなどのいわゆる公共インフラは常に劣化や機能不全を起こす可能性があり、その原因は不十分な保守点検や不適切な工法、地震、近隣建設による影響など様々です。構造変化の監視には従来電気式ひずみゲージが用いられてきましたが、耐久性やインテグリティ上の問題から長期間の使用での精度確保や実効性あるデータの収集には課題がありました。

光ファイバセンサとは?

光ファイバセンサはFBG(ファイバブラッググレーティング)方式による計測を行うもので、従来の電気式ひずみゲージによる方式とは根本的に動作原理が異なります。FBG光ファイバセンサは微細構造をもった計測素子で、ゲルマニアをドープした汎用のシングルモードの通信線にUVレーザを照射して形成されます。形成された微細構造は、光ファイバの反射係数により決まった周期で変化します。光がファイバに入射されると、グレーティングと呼ばれる格子がきわめて狭帯域の光のみを反射し、その他すべての波長を透過します。この帯域の中心はブラッグ波長と呼ばれ(図1および2)、光ファイバが負荷により物理的に伸縮するとその周期が変化します。この変化によるブラッグ波長の変動がインテロゲータと呼ばれるデータ収集システムで計測されます。

図2:位相マスク法によるFBG素子の製造の様子。光ファイバにUV光を照射すると、その光の強度に応じて光ファイバの屈折率が局所的に変化し、屈折率が周期的に変化するコアが形成される。このコアの屈折率の周期的な変化をブラッググレーティングとよぶ

光学式センシングがもたらすメリットの数々

ひずみに加え、ブラッググレーティングは温度感度をもっています。FBGセンサはひずみと温度のモニタリングが可能ですが、温度センサをひずみセンサと組み合わせて、ひずみセンサへの温度影響を補正する役割も担えます。ひずみや温度センサのほか各種変換器にも使用でき、様々な種類のパラメータ(傾きや加速度、圧力など)を計測できます。

FBG型の光ファイバ式ひずみゲージは従来の電気式ひずみゲージに比べ様々なアドバンテージがあり、例えば、長期的な信号安定性やシステム耐久性が高い、激しい振動がある場合も耐久性が変わらないなどの特長をもちます。電気式に比べると機械的な故障もはるかに少なく、例えば往来の激しい路面や橋梁でも、高耐久性を確保できます。信号がほとんど減衰しないため距離やケーブル長の精度影響は考慮しなくてもよく、計測ポイントから数km離れた場所でデータを収集することもできます。

また光ファイバは銅線ケーブルよりも細くて軽く、リード線はさらに軽量です。一本の光ファイバだけで、異なる基本波長をもつ複数のセンサを接続でき、配線の手間も軽減できます。また電磁ノイズの影響を受けない(EMI/RFI)ため鉄橋やトンネルのほか、強力な磁場を生成する電気駆動システムなどの構造体の計測には不可欠な計測手段です。

省配線

FBGセンサを使うことで計測システムの配線工数が大幅に削減できます。これは多重化という技術によるもので、結果的に計測対象である構造物への影響は最小限です。多重化により、複数の異種の光ファイバセンサを1本の光ファイバに接続できネットワークの構築やケーブル敷設の複雑さを軽減できます。複数のセンサで構成されるセンサアレイは、設置作業を簡素化するために事前に組立ておくことができます。

また構造体の表面や材料に簡単に接着したり、構造体やコンポーネントにスポット溶接することができます。小型で軽量であるため、設置場所が狭い場合は特に有効で、コンポジットのような組み込み型のアプリケーションにも理想的です。センサ単位あたりの投資は比較的少なく、また複数のセンサ種を1本のケーブルに接続できます。システム内にいくつもインテロゲータを設置しなくてもよいというメリットがあります。

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過酷な計測環境に最適

過酷な計測現場にも適しています。さらに電磁ノイズによる影響を受けず、水や湿度、塩分、異常温度、高圧(400 barまで)における耐久性にも優れています。潜在的爆発性雰囲気においても安全に利用できます。

金属箔のひずみゲージとは異なり、FBGセンサはインテロゲータ/データ収集システムとは独立した参照方式をとります。FBGセンサはブラッグ波長を利用した絶対的パラメータで計測を行います。ブラッグ波長は電力変動の影響を受けず、ひずみ(もしくは温度変化)が発生した場合にのみ変化するため、絶対的なパラメータが提供できます。光学式インテロゲータはセンサからの入力信号をもとに演算を行います。内蔵の参照システムは“ものさし”のような役割を担い、受光した波長から計測値を正確に決定します。この内部参照方式によりインテロゲータは毎回計測のたびに自動校正されます。

図3:トンネル監視用計測システムの設置

新素材の耐久検査に

光ファイバセンサにより計測体の耐久試験で限界負荷が把握できますが、特に新素材の試験には光学式が有効です。軽量材であるカーボンファイバシートを例にとると、従来の材料よりも負荷許容値が上がっています。また従来型の材料である鋼やコンクリート、木材なども改良が進み耐久性が増しています。高い限界応力をもつモニタリングシステムが必須です。

図3に光ファイバセンサによるインフラ監視の最新事例を示します。ブラジル(サンパウロ市)のメトロシステムでは近隣で高層ビルの建設が進んでおり、HBMはこの監視プロジェクトでネットワーキングとリアルタイムで監視により歪みや収斂を把握できるソリューションを提供しています。高層ビルに対する、防護壁の建設と掘削作業と建築にトンネルの監視が求められました。メトロシステムの運転を遮断せず、かつ乗客の安全を保つためのプロジェクトです。このプロジェクトで使用されたトンネル収斂把握用のシステムExtensometric MethodはFBGセンサを使用してひずみを多点で計測しています。また防護壁の収斂度を数値化し、地質学的な検証も行います。

トンネルの監視はまず2か所の7計測ポイントで実施されました。すべての計測ポイントにはひずみセンサ1台と温度センサ1台が設置され、さらにラックマウント型のインテロゲータBraggMETER FS22が装備されました。インテロゲータの4つの入力チャンネルにはすべてのセンサを接続しました。データ収集は毎分1回、データ処理後にデータベースに保存されます。さらに計測ユニットの保護用に10インチラックを採用しました。サーバ用PCとUPS、インタネット接続が供給されました。計測波長は演算で温度補正後にひずみデータとして提供され、収斂度がアルゴリズムにより推定されます。同システムの詳細は以下の技術論文の中で詳しく紹介されています:第15回International Conference on Experimental Mechanics, “Remote Monitoring of São Paulo Metro Tunnel Deformations Using Fiber Optic Based Sensors” (参照: http://paginas.fe.up.pt/clme/icem15/ICEM15_CD/data/papers/3189.pdf.

図4:組み込み型のひずみセンサを橋梁のデッキに設置。この後にコンクリートが注入される

最適なコストパフォーマンス

同様に、HBMではひずみと温度の計測システムはアルジェリアのコンスタンティンを流れるRhumel River の1.1kmにわたる吊り橋型橋梁の長期モニタリングに使用されています。このシステムは従来型センサやデータ収集システムと並行して設置され、1つのSHM(構造ヘルスモニタリングシステム)として提供されています。センサは組み立てた状態でコンクリートが流し込まれて成形されます。そのアレイの両端に光学式はコネクタが装着されています。アレイはそれぞれ4本のファイバと両端にコネクタがついた長い光学式ブレークアウトケーブルで連結されています。

このようなプリセット式の製品提供は作業を効率化します。ケーブル配線が少なくて済むというだけでなく、コネクタで簡単に接続できるためケーブルの敷設に特別なスキルをもつエンジニアや設備を必要としません。この計測システムは4つの入力をもつインテロゲータBraggMETERが1台で同時に22個のひずみセンサと18個の温度センサからの信号を受け、合計40個のFBGセンサをサポートします。インテロゲータは他のデータ収集システムと共に設置され、LAN経由で同時制御されます。

構造モニタリング分野では長く電気式ひずみゲージの使用が一般的でしたが、ここで紹介したようなケースでは、光ファイバセンサは電気式システムには提供できない様々なメリットを提供でき、コストならびに性能において優位であることがわかります。