技術文献:ハイパワーバッテリシステムの認定と検証 技術文献:ハイパワーバッテリシステムの認定と検証 | HBM

ダイナミックな負荷条件での自動車用ハイパワーバッテリシステムの認定と検証

自動車用バッテリは、市場に投入される前にバッテリシステムの認定と検証を必ず行います。テストベンチでの試験は、高電圧と高電流を含む計測範囲および高ダイナミックレンジを適切にカバーし、さらに可能な限り実用状態に近い条件でアプリケーションの要件をシミュレートする必要があります。この目的のための計測技術は、非常に正確でダイナミックな測定条件に対応できることが必要です。本文は、高出力自動車用バッテリの設計に関する説明とそのシステムのテスト要件に基づいて、優れた特長を持つ高性能テストベンチとデータ収集システムGEN3iを使用した計測ソリューションを紹介します。最後に、様々な計測事例を紹介します。

1. はじめに

多様なアプリケーション用に、電気エネルギー貯蔵システムの需要は増加しており、新しいバッテリシステムを継続的に開発し、同時に新しいバッテリ技術を探求する必要があります。この分野における進化は、絶えずエネルギー密度を増加させる方向に進んでいます。これにより、重量や大きさ等の機械的特性を一定に保ちながら、バッテリの蓄電容量を増加させます。これは、とりわけ、電気自動車の走行距離を延ばし、電動モビリティを推進します。特に、自動車用に使用するためには、バッテリ部分は高い要求を満たす必要があります。蓄電容量、バッテリサイズ、実用上の安全性は、最初に評価されるべきエネルギー貯蔵システムの基本的な評価基準であり、バッテリを選考する際の重要項目です。したがって、開発の段階から、このアプリケーションで求められる固有の要件に関して適格なテストを実施することが絶対に必要です。意味ある結果を得るためには、第1にこれらのすべてのテストを可能な限り現実的かつ自動車アプリケーションの特性を考慮した方法で実行する必要があります。その他の要件(実アプリケーションにおけるバッテリシステムの挙動など)は、次の段階で考慮できます。したがって、これから設計するテストベンチは、ユニークで高度なテスト要件を柔軟に対応できる能力を持たせることが重要になります。特に高出力バッテリシステムの場合、テストベンチは非常にダイナミックな試験に対応し、かつ高い出力範囲をカバーする必要があります。テスト環境に対応するための、計測に関する高い要件も考慮すべきです。この計測技術はダイナミックに変化する物理量を非常に精密に測定し、リアルタイムでモニタリングを行い、データの後処理・編集・評価を確実にできる必要があります。

2. ハイパワー自動車バッテリシステム

以下の内容は、リチウムイオンバッテリのみを対象にしています。その理由は、リチウムイオンバッテリの技術が、エネルギー密度に関し電気自動車(EV)の要件を満たす可能性があるためです[1]。図1と2が示すように、バッテリシステムは様々なサブシステムで構成されています。これらの個々の構成要素は、安全かつ最適な動作を確保するために相互に緊密に調整されなければなりません。独立した電気化学セルを多数個、相互接続することにより、高いシステム電圧と容量を確保しています。バッテリパックの合計電圧および電流の仕様を満たすために、パックには直列および並列に接続された多数の独立したセルが組み込まれています。自動車バッテリのアプリケーションでは、パックは数百個のセルを組み合わせています。通常、大きなセルの集合体は、モジュールと呼ばれる小さなセルの集合体を多数個組み合わせた構造になっています。各モジュール内のセルは相互に接続され、電気回路を形成しています。これらのモジュールを、複数個組み合わせてバッテリパックを作ります。このモジュールには、冷却機構、温度モニタ、セルバランシングのような機能を搭載できます。個々のセル電圧は時間の経過とともにばらばらに変化するため、セルバランシング機能はバッテリシステムの寿命にとって重要です。バランシング機能がないと、パック全体の容量が急激に減少します[2]。

各バッテリ製造業者により生産されるバッテリセルは、その化学的性質、物理的形状や寸法がそれぞれ異なります。これにより、最初に様々なバッテリシステム設計を明確に区分けできます。各セルとモジュール間の相互接続に加えて、バッテリシステムは、システムの動作を可能にする、いろいろな機械的および電気的構成要素を組み込んでいます。最適な動作を得るためには、これらの構成要素は目的のアプリケーションに対応するように緊密に調整する必要があります。回路が短絡状態になった場合に、過電流を制限するため、バッテリパックにはメインヒューズが装備されています。各バッテリモジュールにも、ヒューズが内蔵されており、内部の過電流を遮断します。通常、バッテリの電気経路内に「サービスプラグ」が配置されており、バッテリ集合体(バッテリパック)を電気的に独立した2つのスタックに分割して、取り外すことができます。また、バッテリには、出力端子への電力出力を制御するリレーまたはコンタクタが含まれています。ほとんどのアプリケーションでは、セルモジュールをパックの正・負のメイン出力端子に接続するために、最低2つのメインリレーがあります。一部のバッテリ設計では、駆動システムのプリ充電時に電流を制限するため、または補助バスに電力を供給するために、代替の電流経路を組み込んでいます。さらに、自動車用バッテリに、ブレーキチョッパを含むことが良くあります。このユニットは、EVの再充電時にバッテリが過充電されないようにします。バッテリが100%に完全充電されている場合、ブレーキチョッパユニットは、再充電時の過剰エネルギーを熱エネルギーに変換します。これにより、バッテリの過充電が防止されます。すべての自動車用バッテリシステムは、温度、電圧、電流を計測する様々なセンサを含んでいます。セル/パックセンサからのデータの収集・分析、ならびにコンタクタおよびバッテリシステム全体の制御は、バッテリ管理システム(BMS)によって行われます。収集されたデータを使用して、BMSは充電状態(SOC)やエラー管理などの状態監視を行います。したがって、BMSは、バッテリパックの運用と安全性、およびその中に格納された高い電気エネルギーを管理する、複雑な重要電子システムですので、徹底したBMSテストが必要になります。

前段で説明したように、自動車用の安全で信頼性の高いバッテリシステムを構築するためには、個々の構成要素のすべてが最適に調整されなければなりません。個々の構成要素は、複雑な相互作用をもたらすため、結果として、高度に精密なバッテリシステムになっています。したがって、目的のアプリケーションにおける相互作用を、客観的に検証する必要性があります。どのステップでどのテストが実行されるかは別問題であり、実際には、プロセスおよびデバイスの詳細、ならびに目的のアプリケーションに依存します。すべてのバッテリパックの設計はユニークで、テスト要件はそれぞれの使用目的で異なるため、テストベンチは個々のバッテリテストの課題に対応できる柔軟な機能が必要です。

3. 適切な試験手順

自動車産業特有の要件を満たすには、バッテリシステムおよびその各構成要素用に特定のテスト手順を作成することが不可欠となります。ISO 12405規格は、特に道路車両の推進用に開発されたリチウムイオンバッテリパックおよびシステムに特有の試験手順を規定しています。バッテリパックまたはシステムが自動車製造業者特定のニーズを満たすことができるように、そのようなテストおよび関連する要件を規定しています。性能試験、信頼性試験、耐久試験以外にも、多数の試験項目があります [3]。

最後に、安全で信頼性が高く、基準に準拠したバッテリシステムを構築するためには、それぞれのテスト手順を実行し、結果を分析する必要があります。ただし、標準的なテスト手順に加えて、実用状態に近い条件でアプリケーションをシミュレートする必要があります。つまり、バッテリシステムはアプリケーションの条件に従って検証される必要があります。独自のテスト手順で、システムが安全かつ確実に機能し、アプリケーション固有の機能を満たしていることを検証する必要があります。その調査には、コンポーネント間の信頼性の高い相互作用の検証、BMSと車両との正しい相互作用、アプリケーション固有の安全要件の順守、特定の温度範囲での負荷動作、ピーク電流に対するバッテリの疲労、異なる温度に対するシステムの挙動などがあります。この検証と認証プロセスを実施した後でなければ、バッテリシステムはアプリケーションで使用できません。

4. 自動車用バッテリシステム向けの高性能テストベンチ

高出力自動車用バッテリの高度な個別要件に従って、対応するテストベンチは、テストで要求される高度な要件を満たす必要があります。テストスタンドは、将来のバッテリシステムで必要とされる、高電圧および高電力範囲をカバーしなければなりません。これに加えて、テストベンチの主な焦点は、最も柔軟で効率の高いテストの実行を可能にすることです。テスト手順の実行は、可能な限り実用状態に近い条件でアプリケーションを再現しなければなりません。容量と電力のような性能関連のパラメータテストのほかに、テストベンチはアプリケーションの動作条件と障害のケースをシミュレートする必要があることを意味します。各バッテリシステムは特性が異なるため、テストベンチには、システム全体の機能性や安全性をテストするための諸条件、および様々なしきい値に適応できる柔軟性が必要になります。同様に、被試験デバイス(DUT)と運用スタッフにとって安全な動作環境が確保されなければなりません。高出力自動車用バッテリシステムの認定および検証プロセスの高い要件を考慮して、これらのシステムとその個々のコンポーネントに対する独自の高性能テストベンチをこのセクションで紹介します。

テストベンチのパワーエレクトロニクス・インターフェースは、共有のDCリンクを介して接続された2レベルコンバータで構成されています。出力用DC/DCコンバータの3つのハーフブリッジは、バッテリの充電/放電電流を制御し、グリッド側のコンバータは共通DCリンク電圧とグリッド電流を制御します。この構成では、テストベンチにより、最大動作電力250 kVAで、DUTとグリッド間の双方向電力フローが可能になります。これにより、高出力で高いエネルギー効率の充放電実験を確実に行えます。

図3に、電源接続の主要な配線図を示します。グリッド接続部品には、グリッド回路ブレーカ、グリッド・フィルタとチョーク、ポテンシャル絶縁用の絶縁トランス、およびDCリンク・プリチャージ回路が含まれています。回路遮断器Q1~Q5により、テストベンチとグリッド(およびDUT)間のガルバニック絶縁が達成されます。表1に紹介したテストベンチの電気的特性を示します。

表1:テストベンチの電気的特性

グリッド電圧400 V
出力電圧範囲0 ~ 750 V
最大出力電流± 800 A
最大出力リップル電流≤ 1 A
最大システムパワー250 kVA

正確な調査結果を確保し、不必要な負荷をDUTにかけないためには、低リップル電流で充放電します。その結果、DUTがあらかじめ定義され標準化された負荷プロファイルに従った充放電が保証されるため、DUTの反応と負荷の関係を明確にできます。したがって、3個の出力用ハーフブリッジは多相電流共有コンバータに内蔵されています。その結果、負荷電流は3つの単相に分割されます。この電流共有スキームは、定常状態動作およびライン/負荷過渡状態において、個々のモジュールが過度の電流負荷を受けることを防止します。また、非常に高いバッテリ電流を達成することができます。3相をインターリーブする手法の結果、正確に120°の位相シフトに対して、インダクタのリップル電流は互いに打ち消しあい、出力コンデンサに流れるリップル電流は小さくなります[4]。出力リップル電流の周波数も3倍になります。特定の条件下では、出力ノードでのリップル電流を除去することが可能です。図4の位相関係は、出力におけるリップル電流のキャンセルがどのように機能するかを示しています。

m相回路の出力リップル電流振幅を定量化するために、閉ループ式が開発されています[4]:

出力リップル電流と3相アプリケーションのデューティサイクルの依存関係を図5に示します。D = [0,1/3,2/3,1]のデューティサイクルの場合、電流キャンセルにより出力リップル電流は0Aになります。全範囲で、最大ピーク・ツー・ピーク出力リップル電流は、単相での最大可能電流リップルと比較して、1/3に最小化されます。

さらに、すべての動作点の出力リップル電流を最小限に抑えるために、個別のフィルタ回路網が開発されています。高い減衰スロープを達成するために、ローパスフィルタは多段フィルタとして設計されています。ハーフブリッジあたり8kHzでインターリーブされたスイッチングのため、このフィルタは結果として生じる周波数24kHzで最適化されます。これらすべての対策の結果、テストベンチの出力電圧範囲全体にわたる出力リップル電流は1A以下に最小化されます。図6は、データレコーダGEN3iとDUTを組み合わせたテストベンチです。

テストベンチは、非常に低いリップル電流と高電圧と高電流の計測範囲に加え、実用状態に近いかたちでアプリケーションの要件に沿ったテスト手順を実行する機能を提供します。このテストベンチは、指定されたテスト条件とバッテリシステムに柔軟に対応できます。これにより、過電圧保護および低電圧保護のような異なる安全対策を検証することができます。このために、テストベンチは、それぞれのしきい値に適合させることができ、指定されたテストを安全な方法で実行することができます。さらに、標準化された製造業者固有の負荷プロファイルおよびパルステストを実行することが可能であるため、バッテリシステムは、将来採用される可能性のあるアプリケーションのテストを実行できます。このような試験は、各アプリケーションにおけるバッテリの挙動について有意義な検証をするために使用されます。

また、バッテリ構成も検証することができます。個々のコンポーネントやコンポーネント間の相互作用が適切に機能するかをテストできます。また、テストベンチでは、ストレージ容量やサイクルテストの決定、内部インピーダンスの自動計測、電気インピーダンス分光法によるAC抵抗のようなより複雑な検証などを、共通のテスト手順で実行することができます。テストベンチは、完全なバッテリシステムをテストするだけでなく、個々のセル/モジュールや内蔵パワーエレクトロニクスのような単一コンポーネントをテストするオプションも提供します。柔軟性が高いため、テストベンチは他のDCテストアプリケーションにも適しています。さらに、テストベンチには、安全なテスト環境を確保するための特別な安全対策が装備されています。例えば、アイソレーション監視システムは、テストベンチとDUTの絶縁不良テストを行えます。

5. 計測

自動車用バッテリの認定・検証プロセス用のテスト環境を設定するうえで、重要な側面がもう1つあります、それは適切な計測機器の選択と最適化です。これは信頼性の高い結果を得るために必要で、それに基づいて、実際のアプリケーションでのバッテリシステムの挙動に関する正確な検証が可能になります。したがって、試験中のDUTの反応は、非常に正確かつ動的な方法で記録されるべきです。自動車用バッテリ試験に使用する様々な計測信号には、バッテリ端子の電圧/電流、バッテリまたはモジュールの電圧/電流、各計測点の温度があります。様々な条件下でのバッテリの挙動を理解し検証するためには、個々に独立した信号を同期させなければなりません。この同期によってのみ、特定の動作点におけるバッテリ状態の分析が可能になります。信号の種類および範囲に対応して、データ収集システムは特定の条件に柔軟に適応する必要があります。計測器はバッテリ端子で高電圧を高精度に計測するだけでなく、個々の比較的低いセル電圧も同じ精度で確実に計測しなければなりません。様々な信号レベルへの適応と同様に重要なことは、膨大な数の異なる信号を同時に記録できることです。さらに、信号、特に重要な信号のオンライン監視を確保します。したがって、重大な状況や予測できない障害が発生した場合、テスト担当者は手動でテスト手順を中断することができます。試験の詳細な分析と文書化のために、ポストプロセス編集と評価が簡単でなければなりません。

 

HBMの GEN3iは、このような高度なデータ取得と過渡現象の記録に特に適しています。データレコーダGenesis HighSpeedは、エネルギー関連システムの重要な全物理量を同期しながら多チャンネルで高速データ収集できます[5]。このデータレコーダを使用すると、データ収集とテストベンチの試運転を容易に行うことができます。静電容量の決定のような簡単な試験計測から電気インピーダンス分光法などのより複雑な計測まで、実行できます。ポストプロセスでは、データを分析し、処理することができます。これにより、バッテリシステムに関する正確な記述が作成できます。

  • データ収集、過渡現象の記録、リアルタイムモニタリング、ポストプロセス編集(バッテリ電流/電圧/温度、インバータ電圧/電流を編集)を行うデータレコーダGEN3i
  • 高精度計測シャント付きのLEM IT 700/1000 S、
    フェイズおよびバッテリ電流計測用のHBR 2.5/10
  • グリッド側の電圧を計測するための仮想中性点アダプタ
  • 熱電対 タイプK

図7は、データレコーダGEN3iに送られたシステム量の計測結果をダイアグラム形式で示しています。自動車用バッテリシステムを試験するには、バッテリ量の計測のみが必要です。これには、バッテリの端子電圧と電流、個々のセル電圧またはスタック電圧、および各部の温度が含まれます。しかし、テストベンチの試運転には、さらに多くの信号を分析する必要があります。グリッド制御を実施・最適化するには、グリッド相電流および相電圧ならびにDCリンク電圧を計測します。最適化されたグリッド制御に基づいて、充放電実験の出力制御を設定するために、出力コンバータとフィルタ量を計測します。出力量を動的に計測することで、出力側の様々な制御方法を簡単に分析できます。

6. 計測結果

6.1. リップル電流を低減する方法

最初の例は、インターリーブ・スイッチングによるリップル電流キャンセルがどのように機能するかを示しています。この計測は、出力リップル電流に対するローパスフィルタの影響も示されています。したがって、多段コンバータの相電流/電圧ならびに結果として得られるノード電流/電圧および出力電流/電圧が計測されます。図8の計測結果は、インターリーブ・スイッチング方式の原理を示しています。3つの位相は、120度の位相シフトで切り替えられます。スイッチングされた相電圧の結果として、電流も同様に位相シフトされます。セクション4で説明したインターリーブ・スイッチングのリップル電流キャンセル効果により、リップル電流は互いに打ち消しあう傾向があります。これにより、ノードポイントにおける電流リップルが低減されます。さらに、フィルタネットワークは、最終的にこのリップル電流を1 A以下に減衰しています。

6.2. 定電流定電圧充電(CCCV充電)

CCCV充電は、リチウムイオンバッテリおよびバッテリシステムの充電に使用されます。これは、上限電圧を超えると損傷の可能性があります。この方法は2つの段階で構成されています。第1段階では、バッテリは一定の電流で充電されます。指定された現在の充電レートは、バッテリが損傷を受けることなく許容できる最大充電レートです。セル電圧が上限に達する前に、充電方法は定電圧に切り替わります。この段階では、SOCが上昇すると、バッテリ電流が減少します。最後に、電流が特定の限度を下回る場合、充電プロセスは終了し、SOCは100%に達します。図9は、この充電方法を示しています。最初に、DUTは100Aの定電流で充電されます。上限しきい値電圧(115V)を越えると、充電方法は定電圧ステージに切り替わります。このステージでは、しきい値電流を越えて充電プロセスが終了するまで、DUTは115Vの定電圧で充電されます。

6.3. 内部DC抵抗の測定

バッテリシステムの容量に加えて、内部抵抗も主要なバッテリパラメータの1つです。抵抗が低いほど、避けられない電力スパイクを供給する際にバッテリが受けるダメージが少なくなります。内部抵抗が大きいバッテリは、高電流パルスを供給する際の性能が低くなります。バッテリが放電したり、バッテリが劣化したりすると内部抵抗も増加します。以下に、バッテリパック/セルのDC抵抗を計測する技術を紹介します。この方法は、電流パルス発生中の電圧変化に基づいています。理想的には、電流は小さな値(例えば0.1Cレート)から高い値(例えば2Cレート)にジャンプします。定められた期間の後、電圧降下を計測します。さらに、電圧変化は電流変化によって除算され、この計算の結果が、DUTの内部抵抗を表します。[6]

図10は、自動車用バッテリシステムの内部抵抗を決定するための計測値を示しています。第1段階では、DUTに約21Aの小さな電流が放電されます。安定状態に達すると、次の電流ステップが実行されます。放電電流は400Aにジャンプします。同様に、バッテリ電圧が低下します。一定時間が経過すると、バッテリの放電処理が完了し、内部抵抗の算出が可能となります。DUTの内部抵抗は次のように決定されます。

作者

Johannes Büdel, M.Eng.,
Thomas Kowalski, M.Eng.,
Prof. Dr.-Ing. Johannes Teigelkötter, University of Applied Science Aschaffenburg,
Dipl.-Ing. Klaus Lang, Hottinger Baldwin Messtechnik, Darmstadt

[1]      International Electrotechnical Commission (IEC): Electrical Energy Storage, White Paper, December 2011.

[2]      Cao, J.; Schofield, N.; Emadi, A.: Battery Balancing Methods: A Comprehensive Review. In: IEEE Vehicle Power and Propulsion Conference (VPPC) (2008), DOI: 10.1109/VPPC.2008.4677669.

[3]      ISO 26262 (all parts), Road vehicles – Functional safety.

[4]      ISO 6469 (all parts), Electrically propelled road vehicles – Safety specifications.

[5]      Linear Technology Corporation: High Efficiency, High Density, PolyPhase Converters for High Current Applications.

[6]     Eberlein, D.; Lang, K.; Teigelkötter, J.; Kowalski, T.: Electromobility in the fast lane: increased efficiency for the drive of the future. Proceedings of the 3rd conference of Innovation in Measurement Technology, May 14, 2013.

[7]      Jossen, A; Weydanz, W.: Moderne Akkumulatoren richtig einsetzen. First edition, Untermeitingen: Inge Reichardt Verlag, 2006. ISBN: 3-939359-11-4.