KEMA高電圧研究所:HBMのGenesis High Speedを採用 KEMA高電圧研究所:HBMのGenesis High Speedを採用 | HBM

常に最新型を提供:HBMの高電圧試験計測装置

HBMは、DNV GLグループのKEMA高電圧研究所(拠点:オランダ、アーネム)に、Genesis High Speedシリーズのトランジェントレコーダを3台供給しています。この新しいデータ収集システムは、KEMA研究所が1995年から2000年に取得し、最近まで使用していたLDS Nicoletの装置を更新するものです。新しい計測機器に切り替える主な理由は、高電圧試験の実施および試験に使用する計測技術を規定するIEC 60060-2(2010)規格が新たに発行したからです。

停電が重大な結果を招く

高電圧研究所では、発電と送配電に使用される高電圧部品、電力機器、計量、保護、制御機器の試験および認証に力を入れてきました。電力インフラストラクチャがますます複雑化し、脆弱になっているため、高電圧設備やシステムの安全性と制御をテストして証明することがますます重要になっています。停電は大きな経済的損失を引き起こすだけでなく、重要システムの停止により生命を脅かすなどの重大な事態を招きます。

 

「KEMA研究所は、この分野では大きな評価を受けており、KEMAの型式試験証明書は国際的に認められています」

John Mooren氏、KEMA研究所 (拠点:オランダ、アーネム)のテストエンジニア

KEMA研究所について

装置や設備は、アーネムの高電圧研究所と高電力研究所でテストされています。どちらもKEMA研究所の一部であり、DNV GLのエネルギー部門に属しています。高電力研究所では、短絡試験により、短絡素材の耐性を判断するテストを行っています。以前は4つの発電機を使用して8,800 MVAの短絡電流を発生させていましたが、2015年に新しい発電機を2台追加して13,000 MVAに増加させました。

高電圧研究所は、製造業者から依頼された高電圧ケーブルおよび部品の試験および認証を主に行っています。この試験では、主に、材料の絶縁特性を決定する絶縁破壊試験を行います。また研究所は、変圧器や開閉器の温度試験、数ヶ月間に及ぶ耐久試験、高電圧校正、断熱材や安全リレーなどの機械的試験など、幅広いテストを実施しています。

絶縁破壊試験

絶縁破壊試験は、主に、交流(AC)、直流(DC)および雷インパルス(LI)を用いて行われます。HBMトランジェントレコーダは、雷インパルスによるテストのデータ収集に使用されます。標準雷インパルス電圧の波形は 1.2µs で立ち上がり(波頭長)、50µs で最大値の 1/2 に減衰する(半波高時間)波形です。HBMトランジェントレコーダは、10ナノ秒の超高速で計測できます。電圧の立ち上がり波形は、1200ナノ秒間に約120回の計測を行うことによって決定されます。IEC 60060-2に準拠したソフトウェアの演算式を使用して、雷波形のピーク電圧を評価します。このソフトウェアは計測データを処理するHBMコンピュータシステムの一部であり、HBM Genesis High Speedシリーズのトランジェントレコーダはこの作業に非常に適しています。

雷サージ電圧

雷サージ電圧は、多数の100 kV(または200 kV)コンデンサからなる多段式インパルス電圧発生器によって生成されます。複数のコンデンサを充電し、直列につないで放電することにより高電圧を発生します。高電圧研究室には、インパルス電圧発生器が合計3台あります。達成可能な最大電圧は、2.6 MV(200 kVのコンデンサ13個使用)で、1.6 MV(200 kVのコンデンサ13個)および1 MV(100 kVののコンデンサ10個)も可能です。インパルス電圧のピーク値は、国際基準に準拠して決められており、400 kV 高電圧システムのインパルス電圧のピーク値は 1425 kV 、 12 kV 中電圧システムは 75 kVです。

研究室には、 6台の高電圧デバイダがあり、インパルス電圧を計測するために使用されています。各デバイダには独自のデジタイザ用トランスミッタがあり、2次信号を計測できる2つの計測システムもあります。さらに、送信機8台と受信機3台、HBMのPC付き計測システム3台があります。

もう1つの新機能は、光ファイバを介してPCにデータ転送を行いデータ収集装置をデータ転送部分から分離していることです。計測データをより正確にし、干渉を排除するので、多くの利点があります。また、光ファイバに対して高電圧のフラッシュオーバーは起きないため、安全性も改善されています。

新しい機器導入の理由

「 2009年には、既存の機器を更新することにしました。これは2009年に新しい研究所への移転もありましたが、主な理由は2010年に発効したIEC 60060規格に変更があったからです。HVL(高電圧研究所)は、IEC規格委員会のメンバーでもあるので、研究所の設備を最新の基準に準拠した状態に改善し、認証を受ける事にしました。IEC60060規格は、高電圧試験に関する一定の条件を規定しています。この規格は、テストに必要な電圧を生成するための正確な定義とガイドラインを規定し、許容される計測公差で試験を実施するための要件、及び、計測システムに適用される要件を記述しています」

John Mooren氏、KEMA研究所のテストエンジニア

2010年に新しい計測機器の購入企画が承認され、その後、大手メーカー5社からの入札がありました。2011年に、入札の過程で選択されたメーカー3社が、当研究所でデモンストレーションを行なった結果、価格対性能比において最高の評価を受けたのは、HBMでした。

HBMを選択することにより、DNV GLは実質的に既存の設備(LDS Nicolet社製)と同じメーカーの改良版を使用することになりました。なぜなら、HBMはLDS Nicolet社の活動を引き継いで、2009年にGenesis High Speedという製品名で最新型を開発したからです。このモジュール方式の製品シリーズは、超高速データ収集と過渡現象の記録を目的としています。データ収集装置は耐久性試験、弾道試験、短絡および雷インパルス電圧試験などに使用されます。

Perceptionソフトウェア

新設備の設置

新しい機器は 2012年の初めに納品されました。これはGenesis High SpeedシリーズのISOBE5600mトランジェントレコーダ3台で構成されており、サンプルレート100 MS/s(毎秒100,000,000サンプル収集)で動作します。ISOBE5600システムは、高電圧テスト環境に設置されたデジタイザ/トランスミッタユニット及び安全な場所に置かれたレシーバユニット(データ収集システムまたはPCに接続可能)で構成されています。トランスミッタユニット/レシーバユニット間の通信は光ファイバを介して行われ、試験室と制御室の間は完全な電気的絶縁が保証されています。計測データ処理をするHBM Perceptionソフトウェアはソリューションの一部として、IEC 60060-2 に記載されている計算を実行します。

HVL(高電圧研)のHBM ISOBE5600tトランスミッタ/デジタイザには、入力信号を処理するアッテネータがEMCボックスに固定ユニットとして設置されており、計測結果が電磁干渉の影響を受けないようになっています。EMCボックスは、デバイダに接続されています。デジタイザ/ トランスミッタの計測信号はデジタル化されており、光ファイバ通信によりデータ転送されています。 Perception高電圧インパルス分析(HV-IA)ソフトウェアモジュールにより、制御パネルを使用してテストパラメータを設定したり、グラフィックユーザインターフェースで機能の大部分を画面表示(例えば電圧曲線)したりできます。ISOBE5600rレシーバは、制御パネルやPCと一緒に制御室に設置されています。データは、Perceptionソフトウェア経由で、LabVIEWで表示されます。

このシステムは、まず2012年に運用開始と認定が行われ、その後、 LabVIEW に統合されました。DNV-GL高電圧研究所は、2015年末に旧システムのNicoletの使用を中止し、Genesis High Speedに完全に切り替えました。この新しい装置は、IEC 60060規格に完全に準拠したテストを実施し報告する機能を備えているため、従来のシステムよりもはるかに正確です。

(注)HBM Genesis High Speedシリーズ製品は、以前にLDS Nicolet、LDS Dactron、およびGould Nicoletブランドで販売されていた製品です。NicoletブランドはThermo Fisher Scientific Inc. Corporationによって所有されています。GouldはGould Electronics GmbHのブランド名です。