ひずみゲージ式ロードセルの動作原理 ひずみゲージ式ロードセルの動作原理 | HBM

1. 設計および機能

ロードセルは重量計測の様々な場面で使用され日常生活にかかせない存在です。「車の中やスーパーマーケットのチーズ売り場など、あらゆるところにロードセルが使用されています」とHBM製品マネージャーのステファン・シュミットは述べています。もちろん、ロードセルは通常、外部から簡単に見ることはできません。部品として装置内部に組み込まれているからです。

ロードセルの心臓部は一般にひずみゲージが貼布されたきわい体です。きわい体は、通常、スチールやアルミ製で非常に丈夫かつ伸縮性の少ない材料で作られています。「きわい体」という名前が示すように、スチールは負荷によりわずかに変形しますが、その負荷がなくなると元の位置に戻ります。負荷がかかると弾力性をもって応答する、この非常に小さな再現性の高い変化が、ひずみゲージ(SGと省略)により取得され最終的には、その変形量がエレクトロニクスによって演算処理され、重量に変換されます。

この最終段階を理解するために、SGについてもう少し詳しく説明します。SGは蛇行したグリッド格子で、フィルム上にしっかりと接着されています。このフィルムが引っ張られると、グリッドも一緒に引っ張られて長くなり、逆に収縮すると短くなります。グリッドのこの変化は、抵抗値を変化させます。抵抗値はひずみの大きさに従って増加・減少するので、この現象をもとにひずみを決定できます。

SGは、きわい体上にしっかりと固定されていて、バネ要素と同じ動きをします。このSGは、ブリッジ回路、より正確にはホイートストンブリッジ回路(配線図を参照)と呼ばれるもので構成されています。通常4個のSGが「リング状に」配線され、各計測グリッドは計測すべき力が存在する最適な場所に配置されています。

物体がロードセル上に置かれたり、吊り下げられたりすると、その物体の重量が決定されます。ロードセルの荷重は、常に地球の中心の方向、つまり重力の方向に向いています。この荷重においては、この力の成分のみを取得する必要があります。これは、似た構造を持つ力センサにはあてはまりません:力センサは通常すべての方向で発生した負荷を取得するよう設計されています。地球の重力方向は、設置方式に無関係です。

 

この技術資料では、ロードセルがどのように機能するかについて、HBMのステファン・シュミットが説明します。ロードセルに関する同氏の感想:

「ロードセルには常に興味深い新しい発見があり、退屈することがありません」

1.1 多様なアプリケーションに対応

多様なアプリケーションに対応する様々なロードセルがあります。一般的に使用されるものは以下のとおりです:

ロードセルの中には、特別な設計や材料を採用して特別な性能を持たせた製品もあります。これは、アプリケーションによっては重要になる場合があります。たとえばシステムのクリーニングを毎日徹底的に行う場合など、ロードセルの中には、このような使用環境に問題なく耐えるタイプもあります。

ロードセルは、また、信号伝送の方式により分類することもできます。デジタルロードセルは、電子基板を内蔵しており、計測結果を処理して指定形式で出力できます。アナログロードセルは、追加で計測アンプが必要です。

以下に示すように、力が加わった時に最大の変形が生じる箇所に、4個のひずみゲージが配置されます。矢印は荷重方向を示しています。

1.2 ロードセルに関する重要な注意事項

ロードセルの特性の1つは、使用環境がさまざまな意味で決定的な影響を与えることです。

周囲温度

すべての材料は温度に応じて変化し、温度が上昇すると膨張し、下降すると収縮します。もちろん、同じことがロードセルとその中に使用されるひずみゲージにも当てはまります。温度の変化は、導体の電気抵抗値にも影響します。しかし、ロードセルは、周囲温度に関係なく、世界中どんな場所でも正しい重量を計測する必要があります。これを実現するために、全てのHBMロードセルには高性能の温度補正機能が内蔵されています。

ロードセルは様々な外的要因に耐える必要があります。「トラックスケールの場合を考えてみてください。雨、埃、熱などの外的要因にさらされるので、屋外の環境条件に耐えることが絶対条件です。世界のあらゆる場所を考慮する必要があります:たとえば、シベリアで利用されるトラックスケールは、南アフリカで利用されるスケールとは異なる環境にさらされます。しかし、共通して言えることは:厳しい天候に対応した設計でなければならず、相当に堅牢なものでなければなりません」とステファン・シュミットは述べています。

正規でない方向へかかる力 (「寄生負荷」)

例えばコンテナの計量システムやベルトコンベヤの下にロードセルを設置して計重する場合、その技術環境によっては、重力による重量に加えて他の負荷が発生することがあります。「寄生負荷」とは、正方向の負荷だけでなく、側面や下からの負荷、または他の方法でロードセルに作用する負荷です。ロードセルは、寄生負荷を排除する設計にはなっていないので、計測結果が不正確になったり、異常値を示す可能性があります。したがって、寄生負荷は完全に排除するか、できるだけ小さくするように注意してロードセルを設置する必要があります。HBMのロードセル取り付け冶具や計量モジュールは、寄生負荷を最小限に抑え、正確な計測を実現します。


2. ロードセルの用途

多くのロードセルが計重機に設置されていますが、他のアプリケーションも多数あります。ボトルや缶を重量で充填する瓶詰め工場やシステムを考えてみてください。また、最終工程で重量をすべて均一にするキャンディやポテトチップなどの袋詰め/仕分け用システムもあります。

「驚くほど幅広いアプリケーションで重量計測が必要とされています」
- ステファン・シュミット氏

さらに、ロードセルには特別な用途を持つものがあります:「たとえば、PW15iA シングルポイントロードセルは、トライアスロン用の高性能スイムウウェアの開発に使用されています。世界クラスの水泳選手が使用するスイムウェアの水の抵抗値を計測しています。

2.1 精度

ロードセルがどのようなアプリケーションに使用されていても、精度は非常に重要な役割を果たします。ロードセルには、様々な最大容量 ( 最大容量は最大実用負荷を規定 ) と精度クラスがあります。一般的なひずみゲージ式ロードセルは、主にクラスCおよびDを達成するために使用されます。電子補正機能を備えたひずみゲージ式ロードセルは、より高精度が必要な計重機で使用できます。

「商品は主に重量を基準にして販売されるので、重量計測は業界をリードする役割を担います。」- ステファン・シュミット氏

このため、商取引における計量は厳しく規制されています。商品に応じて、いろいろな計重機が認可されています。低価格の商品(砂や砂利などの計量)では、計重機に高い精度は不要なので精度クラスD で十分です。逆に、医薬品の計量の場合は最高精度のクラス A または B が必要です。肉、果物、野菜などの最も一般的な消費財は、精度クラスCで計量されています。クラスCは、十分に高い精度要件を満たしているので、機械工学や建築材料の重量計測にも使用される場合があります。

重量計測に関する厳しい規制と基準は、ロードセル開発者に常に新しい課題を提示しています。より高いOIML精度クラスのロードセルでは、ロードセルの計測範囲のわずか数ppm(百万分率)の偏差しか許容されていません。

「一片のスチール部品とそれに接着されたひずみゲージが、驚くほど正確に重量を計測できる事実は感動的です」とステファン・シュミットは述べています。「しかし、その利用には適切なノウハウがなければなりません。近年、HBMは体系的に多くのロードセルの精度を向上させることに成功しました。HBMは終わりのない開発努力を続けています」

2.2 調整、校正、および認定

ロードセルが現場で正しく動作することを保証するためには、工場で調整および校正するだけでなく、通常は設置場所でも精度確認を行います。校正および認定は、ロードセルに対して既知の重量を持つ標準分銅で負荷をかけて行います。1 kgの標準分銅をロードセルや計重機に載せた場合は、精度クラスに応じて表示される重量は、857 gではなく1 kgでなければなりません。この方法で、寄生負荷などの望ましくない影響を検出することもできます。

ロードセルの将来

ひずみゲージを利用したロードセルは、さまざまなアプリケーションに使用でき、高精度な計測を行えることが特長の一つです。精度は、適切な経験に基づくノウハウによってのみ達成できるものです。HBMは、ロードセルの開発において65年以上の経験がありますが、将来必要となる新しいソリューションの開発も継続的に行っています。

「10年前、HBMは多くのお客様から、ひずみゲージ技術は完全に普及しているので、この技術の次に何が来るのだろうかと質問されました。もちろんHBMは自身にも同じ質問をしています」とステファン・シュミットは述べています。さらに、「しかし、HBMは慎重な検討の結果、ひずみゲージ技術はいまだに十分には活用されておらず、また、センサとお客様の製品を大幅に改善できる限りない可能性を提供できると結論しました」

ひずみゲージ技術は、より高精度、より耐久性に優れ、より速く、よりインテリジェントになる必要があります。それゆえ、今後もロードセルの技術開発に終わりはありません。