ひずみゲージの基礎知識

ひずみゲージの構造

従来型のひずみゲージは一般的に、箔と電導体で構成されています。最近では、動作原理が全く異なる光ファイバセンサ(FBG)などの新たなひずみゲージ計測技術も開発されています。ここでの「従来型」とは、電導体の箔を使用するひずみゲージを意味します。

ひずみゲージの構造を理解しやすくするために、標準的なひずみゲージを例に、ひずみゲージの製造工程を説明します。ゲージを構築するベースプレート(キャリア箔)にはポリイミドフィルムを使用します。その上に、ゲージの電気回路となるコンスタンタン層を形成し、テンプレートを使用して回路以外の部分を全てエッチングで除去します。すると非常に微細なコンスタンタン製の計測グリッドだけが残り、キャリア箔に永久固定しています。

計測グリッドは、曲線部分を含む格子状の線の集合体で、蛇行した巻線形状になっています。

標準的なひずみゲージの構造

基本原理

ひずみゲージはひずみを計測しますが、実際に重要なのは機械的応力です。機械的応力は、材料にかかる内的/外的な力の程度を表します。重要なファクターは力の作用点と強さです。この研究分野を応力解析(ESA)と呼んでいます。

Strain gauge working principle
ひずみゲージは収縮した場合、その電気抵抗値(Ω)が低下し、引き伸ばされると抵抗値が増加

ひずみゲージは、計測体の様々な場所に固定され、リード線で計測アンプに接続されています。ひずみゲージが伸びたり縮んだりすると、計測グリッドの電気抵抗値が変化します。なぜなら、計測グリッドが引き伸ばされると、電流がより長い距離を移動しなければならず、また、それが通過する導線もより細くなり抵抗値が増加するからです。この抵抗値の変化から、ひずみゲージのひずみの大きさがわかります。その単位は、μm/m を使用します。逆に、圧縮の結果生ずるひずみ(負のひずみ)もあります。この場合、抵抗値は圧縮度に応じて低下します。

しかしながら、ひずみの原因は機械的応力だけではありません。最初に考慮すべき重要な点は、以下の2点です。

材料の温度係数α

環境温度が変化した場合、材料にも影響します。この変化の度合いは、温度係数αであらわされます。例えばスチール製のシリンダは加熱されると膨張し、それに接着されたひずみゲージも同程度延ばされます。この温度に依存する材料のひずみは、計測対象ではありません。この効果を補正するためには、特定の材質に対して、ひずみゲージの特性を、全く逆の温度効果を持つように設定します。結果として、2つの効果が打ち消しあって材料のひずみを補償します。これにより、本来計測したい外部からの機械的負荷によるひずみだけを計測できます。これは、自己補償型ひずみゲージ、または適正な温度応答性を持つひずみゲージと呼ばれます。

弾性係数(ヤング率)

材料が荷重を受けると、機械的応力を生じます。機械的応力は、単位面積当たりの力の大きさです。しかし、ひずみゲージによって記録されるひずみとどのように関連しているでしょうか。機械的応力とひずみの相関関係は、制御された条件下で材料サンプルに負荷をかけることによって得られる特性曲線として定義できます。一般的に、機械的応力の増加はひずみ量と一致します。この相関関係は、ひずみ量が比較的小さい範囲では線形で弾性限界と呼ばれる範囲内にあり、弾性係数によって表現できます。

しかし、力がある限界点を超えると、材料は強い外的応力によって変形し、元の状態に戻ることができなくなります。この塑性変形域は材料が壊れるまで続きます。応力解析では、塑性変形が生じない線形範囲のみが対象です。

材料の弾性係数が既知である場合、機械的応力はひずみ量により決定できます。これがひずみゲージによる計測の目標です。

Strain gauge geometry explanations
この形状( T型ロゼット)のひずみゲージは、応力方向が既知である2軸応力計測に適している

ひずみゲージの種類

「ひずみゲージの分類では、形状、計測グリッド長、温度範囲による分類が適応が特に重要です」

HBM は単独で 2500種類以上のひずみゲージを提供しています。アプリケーションに応じてひずみゲージを選択できます。

次の重要な要素をはじめとし、様々な特徴で分類できます。

  • 幾何学的形状
  • 計測グリッド長
  • 温度範囲

幾何学的形状

ひずみゲージの形状は、計測グリッドの数とその配置によって決まります。材料に対する負荷の状態に応じて、計測される応力が変化します。一軸方向の負荷の場合、負荷方向は一つだけです。このケースは明確です。計測グリッド1つで十分です。主応力の方向に対して設定されます。

二軸に負荷がかかる場合、例えば、張力、圧力、曲げ、ねじれなどでは、複数方向の応力が同時に発生します。主応力の方向が不明の場合もあります。この場合、異なる方向に配置された3つの計測グリッドを持つひずみゲージが使用されます。これにより、主応力と2次応力の大きさと方向を判断できます。

計測グリッド長

材料と計測アプリケーションに応じて、最適な計測グリッド長は異なります。例えば、部材の応力曲線(応力分布)を極めて正確に計測する場合です。この場合は、短い計測グリッドを重要な箇所に網の目のように多数並べます。逆に、一般的な負荷の平均値(算術平均)が重要な場合は、 1つの長い計測グリッドで十分です。

材料の表面状態に対しても似たような配慮が必要です。例えば、コンクリート面は平らでなく小石が表面に出ている場合などがあります。計測グリッドが短すぎる場合、小石が埋め込まれた箇所は計測結果がおかしくなる場合があります。その部分に独立した特別な負荷がかかるからです。これを防ぐには、長い計測グリッドを選択する必要があります。計測された応力は長いグリッドがカバーしているエリアの平均値になります。

対象温度範囲

特定の材料に対して、ひずみゲージを温度適応させた場合、温度変化によって引き起こされる材料ひずみが補償されます。そのためには、計測対象の材料に対応したひずみゲージを選択することが重要です

その他の選択基準

前述の特徴以外の選択基準について簡単にふれます。ひずみゲージには、一般に様々な抵抗体(120 Ω、350 Ω、1000 Ω など)が使われます。適切な抵抗体の選択は、アンプの完成抵抗や干渉パルスの可能性など、しばしば計測の制約につながります。キャリアの材料、電導体の材料、または接続タイプによってひずみゲージが異なることもあります。また配線済みひずみゲージや購入後にはんだ付けするタイプもあります。配線済みひずみゲージは、設置時間にかかるコストを削減します。

ひずみゲージの使用法

ひずみゲージを正しく機能させるためには、いくつかの基本要件を満たす必要があります。最も重要なのは、ひずみゲージが計測対象の材料に非常にしっかりと装着されており、材料ひずみが全てひずみゲージに伝わるようになっていることです。このため、ひずみゲージは通常、適切な強度の接着剤で接着されるか、場合によっては溶接されることもあります。接着剤を選択する際には、接着剤の粘度が温度によって変化するため、いくつかの点を考慮する必要があります。材料にひずみゲージを取り付けることは、それ自体が小さな科学です。例えば、ひずみゲージと材料との間、またはひずみゲージと接着剤との間に気泡が入らないようにします。

また、ひずみゲージは単独では機能しません。抵抗の変化が非常に小さいため、計測値として使用するには増幅が必要です。このために計測アンプを使用します。さまざまなアプリケーション用にいろいろなタイプの計測アンプが開発されています。

応用分野

ひずみゲージのアプリケーションには、2つの主要フィールドがあります。それは、センサの構築と疲労試験です。センサの構築は、独自の目的を持った独立した課題です。例えば、センサの材料は、できるだけ疲労しない材料であることが重要です。ひずみゲージの目的は、力やトルクなどの計測対象の物理量を計測することです。

対照的に、疲労(センサの構築には可能な限り影響を及ぼさない)は、応力解析の主要テーマです。課題は、材料に一定の負荷をかけ続けた場合、いつ破損が開始するかを予測する必要があります」。 疲労に対する耐久試験は、材料に荷重を繰返しかけるサイクルテストによってシミュレートします。荷重は通常非常に小さいので、材料はすぐには破断しません。上述のように、ひずみと機械的応力の相関性が線形となる弾性範囲内で負荷を変化させます。

材料強度の問題は、多くの分野で重要視されています。例えば、航空機部品、橋梁や鉄道などのインフラ設備、またはマザーボードや電気回路用のプリント基板などの分野です。長期にわたり各部品が十分な耐久性を提供できるか徹底的にテストされます。

Aircraft in hangar with strain gauge measuring points.
アプリケーション例 1 : 航空機の疲労試験
Schematic image of a load cell.
アプリケーション例 2 : センサ製造テスト(この場合はベンディングビーム型ロードセル)
A bridge spanning water.
アプリケーション例 3 : 橋梁などのインフラ設備のテスト

使用する材料のS-N曲線は、テストラボであらかじめ判明しています。そのため、どの程度の負荷と積算サイクル数で材料の劣化が始まるか予測できます。疲労寿命は、負荷がかかるたびに徐々に短くなります。例えば、橋を通過する車が増えれば増えるほど、橋の構成部品のどれかが損傷するポイントに近づきます。負荷が大きいほど、材料が耐えられる積算サイクル数は減少します。大型トラックは小型車よりも、はるかに大きな負荷を材料に与えます。

どのような負荷が材料にダメージを与えるのかという問いは非常に興味深いテーマです。あるアプリケーションで鉄道の橋梁がどれくらいの期間負荷に耐えられるかをテストするものがありました。このテストの前にすでに何十年間も利用されていた橋梁です。過去の記録を精査して、その期間何台の車両がどれくらいの積載荷重で橋梁を通過したかを調査することにより残りの寿命を推定できます。これは非常に興味深いケースです。

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