電動モータの負荷試験
「VBE(Van Bodegraven Elektromotoren)社 」(オランダのドルトレヒト)は、電動モータの専門会社で、自社製品を含め、様々なブランドの新品モータや再生モータの販売と設置を行なっています。同社は、修理やオーバーホールの工場を保有しており、2016年にHBMの計測機器を使用したトルク、回転数、電圧、温度などのパラメータを計測する電動モータの試験システムを稼働させました。
「これによりモータの状態を判定する「心電図」に相当するものが提供できます」とマネージャーのRichard Renee氏は述べています。
VBE社は、再生モータと新品モータの両方を扱う電動モータの有力サプライヤです。同社の売上高の 60 %は、船舶関連によるもので、残りの約 40 %は一般産業分野によるものです。モータは船舶の推進用などのアプリケーションに加えて、ポンプ、ファン、クレーン、ウィンチ、アンカーウィンチ、ベルトコンベアの運転に使用されます。これには、通常、高いレベルの信頼性が要求される重要設備のアプリケーションが含まれます。
VBE社は独立系のモータ会社で、ABB社、Cantoni社、Siemens社などのモータを販売しています。また、独自ブランドのDormotを中国で生産しています。中国製モータは主にローエンドのアプリケーションに、比較的低価格で販売されています。お客様にどのブランドや種類を推奨するかは、アプリケーションに大きく依存します。
モータのオーバーホールと交換の比較
Renee氏によれば、同社の事業分野の中心は既設のモータを再生品や新品で入れ替える交換市場です。
「残念ながら、近年、大規模な新設プロジェクトはかなり少なく、モータのオーバーホールも減少しています。当社は、モータの修理、オーバーホール、改造を行う大規模な工場を運営しています。この部門は売り上げの約25 %を占めています。モータのオーバーホールは、コスト的に採算が合わない状況です。定格45 kW レベル以下のモータは、格段に安価になり、一般的には新品を買ったほうが安くなります。オーバーホールは、もはや製造されていない特殊なモータか、納期が長いモータの場合にのみ行われるようになっています。この中には、マルチスピードモータ、 DCモータ、または特殊サイズのモータが含まれています」
「モータを交換するときは、同じ定格の同等品を使用します」、これは、特殊なアプリケーションの専用モータを別のモータで置き換えることを意味します。交換市場では、特殊なアプリケーションの要件に一致するモータを迅速に供給することが重要です。例えば、ロッテルダム港の貨物積降船に乗りこんで、特殊なモータを、迅速に納品・設置しなければなりません。これは、何百もの異なるブランドの中から、最も一般的な種類のモータを在庫しなければならないことを意味します。「当社は、シャフトなどのモータの周辺部品も供給しています。お客様の現場でモータを設置していますが、保守サービスの契約も増えています。当社のエンジニアの大部分は、職務に非常に精通しており、音や振動などによりモータがどのように動作しているかを理解できます。また、今後、状態監視と予防保守がますます重要になってきています。我々はモータの運転状態や出力状況を遠隔地から無線で読み取ることができ、この情報をもとに、保守計画を立てることができます。今後は、計測データおよび当社の知識を使用して、問題が発生する時期を予測することもできます。」
テストベンチ
モータの試験は、Van Bodegraven社の作業プロセスの一環として、重要性を増しています。Renee氏によれば、
「モータが実用性に関する要件を満たしているかどうか事前に判定する必要があります。この場合、性能だけではなく、例えば、エネルギー効率も重要です。したがって、当社は1年前に新たに100 %無振動のテストベンチを導入しました。これにより、モータは垂直または水平の状態で負荷をかけてテストできます」
Van Bodegraven 社はHBM のトルクセンサと計測機器をテストベンチに使用しています。Renee氏によれば、
「様々な機器メーカーを比べたうえで、最終的にHBM を選択しました。興味深いのは、 2004年に当社はすでに、 HBMのトルクセンサT10Fを購入していました。いまだに問題なく稼働しています。定格 5000 Nm のトルクセンサです。また計測アンプPMXも購入しています。これらを組み合わせれば、トルク、回転数、温度に加え、電流、電圧、消費電力など、全ての電気パラメータを同時に計測できます。計測データは、アナログ形式でPMXに読み取られ、HBMのcatman Easy ソフトウェアで画面表示され、モータの状態を把握しやすくなります。当社は、関連するすべてのグラフを含む正確なテストレポートを生成して、お客様に提供しています。新しい試験設備では、低トルクでも信頼性の高い計測を行えるため、速度制御システムをもつ定格容量500 Nmのトルクメータ T40B を購入しました。この装置は、トルクと速度だけでなく、温度、電圧、電流も計測し、エネルギー消費量も計算できます。当社のテスト設備には、データ収集システムであるPMX に、HBMのcatmanソフトウェアを組み合わせるソリューションを採用しました。さまざまな計測アンプが用意されたモジュール構造の計測システムとして、システム内のすべての信号が同期して計測されます」
計測値は、 PMX計測システムで読み取りデジタル化されます。このシステムは、catman ソフトウェア搭載のコンピュータに接続されています。計測されたデータは、チャート形式でリアルタイムに表示され、計測室の画面上で観察できます。これにより、立ち合い試験では、非常にわかりやすい形式で情報を提供できます。情報の表示以外に、catmanソフトウェアは記録された計測データに基づいて、モータ効率を計算し評価できます。同じデータをソフトウェアによりトレンド分析できるため、関連するすべてのデータを比較した、包括的なテストレポートを提供できます。
余裕のある大規模設備
Van Bodegraven社のテストスベンチは 、ABBグループに多く使用されています。ABBはモータに関しては非常に厳しい要求事項をもっているShellの主要なサプライヤになっています。そのモータのコントローラはShell社のソフトウェアのみを使用しており、このコントローラとソフトウェアの組み合わせをテストすることは、シェル社のプラント用モータにとって非常に重要です。ABB社のテストエンジニアは、Van Bodegravenでパフォーマンステストだけでなく、シミュレーションおよびロータ固定テストを実行しています。ヒートラン・テストと耐久テストを最大出力で実行することもできます。これらのテストは、駆動系(モータと周波数コントローラ ) が、お客様の要件を満たしていることを確認することを目的としています。
同社は、このテストスベンチに莫大な投資をしています。重量級のモータを100 %負荷でテストすると、激しい振動が発生します。したがって、建設予定地の地盤調査を行い、適切な対策が実施されています。ここでは、振動を吸収するために、テストスベンチの設置面から深さ12メートルに達する12本のパイルが打ち込まれています。テストベンチの床は独立しており、工場の床に接続されていないのでベンチの振動は他の建築部分には伝播しません。さらに、Van Bodegraven社は、現場に出力600 kWの自家発電(調整すれば増強可能)設備を持っているので、停電時でも試験を続行できます。
この試験設備を運用するために新たにテストエンジニアを募集し、ソフトウェアとテスト機器に関してHBMの訓練を受けさせました。HBMは、毎年トルクセンサと PMXシステムのチェーン校正を行っています。
この新たなテストベンチは、その地域でテスト設備をも持たない競合他社に対して差別化要因となっています。このテストベンチは、まだフル稼働はしておらず他のサプライヤが利用できるようにもなっています。