正しいひずみゲージの選択法 正しいひずみゲージの選択法 | HBM

正しいひずみゲージの選択法

正しいひずみゲージを選択する前に、計測目標を明確に設定する必要があります。考慮すべき主な点はひずみゲージの使用目的が、試験用もしくはセンサ製造用のどちらであるかです。

試験/耐久性試験

センサ製造

 
  • 応力解析
  • 残留応力解析
  • 荷重分析
  • 寿命分析
  • 熱応力計測
 
 
  • 質量
  • トルク
  • 圧力
  • ひずみ
 
試験用ひずみゲージセンサ製造用ひずみゲージ

試験用ひずみゲージの選定基準

試験用ひずみゲージの選定は次の選定基準に従って行います。

1.幾何学的形状:グリッド(パターン)の数と位置

2. ひずみゲージのシリーズ:

ひずみゲージの構造
3. 接続:形式と位置

4. 温度応答性、適応性:

材料に適合した温度応答
5. 有効グリッド長:単位: mm
6. 電気抵抗:単位: オーム
 

1. ひずみゲージの幾何学的形状

 線形ひずみゲージ(例: LY4)には計測グリッドが1つあり、一方向のひずみのみを計測します。
 T型ロゼット(例: XY3)には、90°オフセットで配置された2つの計測グリッドがあります。標準的アプリケーションは、引張・圧縮棒上での計測と既知の応力方向での2軸応力状態の分析です。
 V字型ひずみゲージ(例: XY4)には、90°オフセットで配置された2つの計測グリッドがあります。標準的アプリケーションは、ねじり棒上での計測と湾曲部のシアービームに起こる剪断応力の決定などです。
 2ゲージ式ひずみゲージ(例: DY4)には、2つの平行な計測グリッドがあり、曲げビームの計測などによく利用されます。
  3ゲージ式ロゼット(例: RY8)は、計測グリッドが0°/45°/90°または0°/60°/120°の角度に配置され、主応力方向が未知である場合の二軸応力状態を解析するのに適しています。
 ひずみゲージ式チェーン(例: KY8)は、同一のキャリア箔上に等間隔に配置された10~15個の非常に小さい計測グリッドと1つの補償ひずみゲージから構成されています。このひずみゲージ式チェーンはひずみグラディアント(勾配)を計測するのに最適です。
 4ゲージ式ひずみゲージ(例: VY4)には、90°の角度に配置された4つの計測グリッドがあります。引張・圧縮棒の計測やせん断ビーム内に発生するせん断応力の決定によく利用されます。

2. ひずみゲージシリーズ

HBMではひずみ測定用にさまざまなひずみゲージをご用意しています。各シリーズは、ひずみゲージのキャリア(ポリイミドなど)計測グリッド箔(コンスタンタンなど)の組み合わせで構成されているため、同一のシリーズのものは全て同じキャリアと計測グリッド箔材料が使用されています。したがって、同じシリーズのひずみゲージの仕様の多くが共通です。

試験用途では、過酷な条件でも使用可能な堅牢で柔軟性のあるひずみゲージが有利です。合成したポリイミドを計測グリッドのキャリア材料として使用している、「Y」シリーズのひずみゲージがこれに当てはまります。このシリーズでは、試験での各種作業に対応できるさまざまなひずみゲージを取り揃えています。また、構造部材の残留応力を計測するホールドリル法やリングコア法に用いられるロゼットひずみゲージや、複雑な構造物の応力分布の計測に利用されるひずみゲージ式チェーンなど特殊な型のひずみゲージも豊富です。

3. 接続

 HBMでは各種の接続方式に対応したひずみゲージをご用意しています。

 

一体型のはんだタブ(例: LY4)

  • ひずみゲージへ直接はんだ付けが可能
 
 

ひずみを解放する大きなはんだタブ(例: LY6)

  • ひずみゲージへ直接はんだ付けが可能であり、はんだタブとひずみゲージのキャリアとを機械的にほぼ完全に分離
 
 

ニッケルメッキ銅リード線、無絶縁、長さ約30 mm(1.18 inch)(例: LY1)

  • ひずみゲージへ直接はんだ付けは不可
  • ケーブルとひずみゲージとの完全な機械的分離
  • 別途はんだ付け用端子をひずみゲージに直接つける必要あり
 
 

フッ素樹脂絶縁の接続ケーブル、長さ約50 mm(1.97 inch)(例:K-C LY4)

  • ひずみゲージへ直接のはんだ付けは不可
  • フッ素樹脂絶縁が、取付時にケーブルが張り付くのを防止
  • 別途はんだ付け用端子をひずみゲージの近傍につける必要あり
 
 

フッ素樹脂絶縁の接続ケーブル、長さ約50 mm(1.97 inch)(例:K-C LY4)

  • ケーブル長は必要に応じて0.5 mから10 m(1.64 ftから32.81 ft)の間で調整可能。2線、3線、4線のオプションあり
  • 計測ポイントでの直接のはんだ付けは一切不要
  • フッ素樹脂絶縁が、取付時にケーブルが張り付くのを防止
 

4. 温度応答性、適応性

ホィートストンブリッジ回路に単体で接続されたひずみゲージは温度が変わると出力信号が発生します。この信号は「見かけひずみ」または「熱出力」と呼ばれており、試験サンプルの機械的負荷とは関係がありません。

温度変動が原因の場合、出力信号は極めて小さいため、特定の材料の熱膨張係数に対してひずみゲージを調整することは可能です。そのようなひずみゲージは、「温度応答に合わせた」または「自己補償型」ひずみゲージと呼ばれます。

このような温度応答の調整を利用する場合は、試験する材料の熱膨張係数aに合わせたひずみゲージを選択してください。

コード材料熱膨張係数∝
1フェライト鋼10.8 ⋅ 10-6/K (6 ⋅ 10-6/°F)
3アルミニウム23 ⋅ 10-6/K (12.8 ⋅ 10-6/°F)
5オーステナイト鋼16 ⋅ 10-6/K (8.9 ⋅ 10-6/°F)
6クオーツガラス/複合材0.5 ⋅ 10-6/K (0.3 ⋅ 10-6/°F)
7チタン/ねずみ鋳鉄9 ⋅ 10-6/K (5 ⋅ 10-6/°F)
8プラスチック65 ⋅ 10-6/K (36.1 ⋅ 10-6/°F)
9モリブデン5.4 ⋅ 10-6/K (3 ⋅ 10-6/°F)

5. 有効グリッド長

計測グリッド長は、計測の目的によって決まります。なぜなら、ひずみゲージを用いた計測の結果が、計測グリッドの下の部分のひずみの平均となるからです。一般的には、計測グリッド長を3または6 mm(0.118または0.236 in)とすることで十分な分解能を得ることができます。

コンクリートや木などの不均一な材料の場合は、計測グリッド長を長くとることが推奨されます。長いひずみゲージは、サンプルの不均一な部分全体を計測することが可能で、その部分全体のひずみを得ることができます。

短い計測グリッドは、部分的なひずみの状態を検出するのに適しているため、ひずみグラディアントや、ノッチ応力などの最大点の計測に有効です。

6. 電気抵抗

HBMのひずみゲージには、抵抗値120、350、700、1,000オームのものが用意されています。抵抗値は、計測作業の制約に応じて選択してください。これ以外の抵抗値を持つひずみゲージも、ご要望に応じてご用意いたします。

低抵抗ひずみゲージ

高抵抗ひずみゲージ

+ 電磁波干渉が小さい+ 接続経路(スリップリングやケーブルなど)への電気抵抗の影響が小さい
+ 絶縁抵抗の変化による影響が小さい- 干渉がある場合、「良好な」アンテナとして機能することで影響がより大きくなる
- より大きな電力が必要になる- 絶縁抵抗の変化による影響が大きい
- 高抵抗のひずみゲージと比較して流れる電流が大きいため、発熱量が大きくなる 

試験用ひずみゲージの選定ガイド