HBMとの協働モニタリングによる橋梁修復 HBMとの協働モニタリングによる橋梁修復 | HBM

複雑な橋梁修復過程における構造の挙動と健全度のモニタリング

1922年に設計され、4年後の1926年に通行が開始されたエルシリオ・ルス橋は、サンタ・カタリーナ州のフロリアノポリス島と本土を結ぶブラジルで最初の道路でした。海上に建設されたこの橋は、90年以上の間、海の浸食作用や構造材の自然劣化のほか、設計当時の想定を大幅に上回る荷重や車両数の増加に耐えてきました。

 

予防保全が細部にわたってしっかりとなされてきたおかげで、ほぼ90年を経た時点でも元の構造が維持されていました。しかし1991年以降、橋の安全性が危うい状況になったことから、完全封鎖を余儀なくされました。通行の遮断に加え、橋に常時かかる負荷を減らすため、中央スパンのアスファルト床を撤去し、構造材への荷重400トンが取り除かれました。

問題

エルシリオ・ルス橋は、開通以来、複数の敵に見舞われてきました。海の浸食作用、構造材の自然劣化に加え、橋が設計された1926年時点の想定を大幅に上回って車両の重量や交通量が増加しました。それでも、予防保全の実施によって、ほぼ90年を経ても建設当時の構造のまま維持されてきました。しかし今、橋を修復する必要性がこれまで以上に高まっています。しかし、この修復作業には、橋の元の姿を維持しながら、構造から接続部品の細部に至るまで修復しなければならないという困難が伴います。

ソリューション

エルシリオ・ルス橋の完全修復には、主塔軸受支持材の交換、基礎の強化と修復、金属製構造材の再建、荷重載せ替え作業を含むアイバー、サドル、主ケーブルの交換、自動車、歩行者、二輪車用新デッキの敷設といった作業が含まれます。ほぼ3年はかかるこの修復プロジェクトに、Teixeira Duarte社が任命されました。Teixeira Duarte社は、このプロジェクトでHBM製品を使用することを決定しました。HBMのセンサとファイバ・ブラッグ・グレーティング (FBG) 技術による光ファイバ式インテロゲータを使って、構造上重要な点におけるひずみを監視するほか、電気式センサで傾き、温度、風や潮流といった各種の信号数値を読み取ろうと考えたのです。これを受けて、HBMでは、センサ設置のためのエンジニアリングサービス、モニタリング、データ記録、アラーム生成用のソフトウェアスクリプトの作成、故障時の遠隔サポートも提供しました。

成果

橋の中央スパンから補助構造材への荷重載せ替えを含む本プロジェクトの最も困難な作業が無事完了しました。修復作業完了後も、継続して構造モニタリングが実施される可能性があります。

システムアーキテクチャ

橋構造の計装には、各種物理量の計測にファイバ・ブラッグ・グレーティングによる光ファイバ式センサと従来の電気式センサの両方を用いるハイブリッド構成が採用されました。変位、温度、風速、海流の計測からグローバルモニタリングを行います。合計で284個の光ファイバ式センサが、HBM FiberSensing製インテロゲータ3台に接続されました。  光ファイバ式センサからの信号送信用に光ネットワークを設置する必要があったことから、電気式センサの信号を読み取るため、HBMデータ収集システムPMXの通信線が橋沿い800 mにわたって渡って敷設された24線マルチコア光ファイバケーブル2本の中に組み込まれました。

センサ接続にとって重要な箇所では、マルチコア光ファイバケーブルを剥きファイバ一本一本をセンサに接続されました。接続箇所はすべて、構造材伝いに専用ボックスで保護しました。

プロジェクトの成功にとって重要な要件である、取付けの簡素化と迅速な作業速度を確保するため、光ファイバ式センサは数珠つなぎにあらかじめ組み立てた状態で現場に納品されました。センサの取付け方法としては、取り付け対象の構造部材によって2通りの方法が選択されました。この橋は金属構造物であるため、最初の選択肢はスポット溶接センサです。中央トラスと補助支持材(プロジェクト全期間にわたり構造に設置されたままの部材)に取り付けるセンサには、この取付け方法が採用されました。アイバー(交換予定部材)への取付けには、接着センサが選択されました。センサチェーンには、ひずみセンサと温度センサを取り付けました。ひずみ計測における温度効果を補償するには2つを組み合わせる必要があるためです。

技術的に非常に困難といえるのは荷重の載せ替え作業です。アイバーにかかるテンションを除去することで、次の交換作業が可能になります。この作業を実施するため、元の金属構造材と臨時構造材の複数箇所にひずみセンサを取り付け、さらに傾斜計や気象観測用に電気式センサを利用し、合計312のセンサを設置することになりました。HBM社の提案は、供給面、設置面でベストなものでした。その提案には、ひずみ計測のための光学技術、コントロールセンターへのデータ送信、そしてその他計測用の電気式センサ技術などの複数の技術の最適な組み合わせと、作業スケジュール上求められるタイムリーな設置工法も含まれていました。Teixeira Duarte社プロジェクトエンジニアRicardo Martins氏

データ収集システム

データ収集用機器はすべて制御室に接続されます。光ファイバ式と電気式の両プラットフォームがイーサネットで通信し、その接続はこの種のネットワークでは一般的な光イーサネットスイッチで行います。

グローバルシステム用にコンピュータが2台使用されました。1台は毎日24時間収集する連続データの監視・記録に使用し、もう1台で記録されたデータの後処理を行います。データの収集、記録、分析には、ソフトウェアcatmanが採用されました。定期的なレポート生成、現場オペレーターとHBMのリモートエンジニアの両方へのアラーム発信などのタスクの一部は、スクリプトを作成して自動化が行われました。

橋修復作業におけるひずみ計測の重要性

前述のエルシリオ・ルス橋の修復作業には、極めて困難を伴うものありました。例えば、工程の最初と最後に行った荷重の載せ替えです。アイバーが支持している荷重を、このプロジェクト用に建てた4つの補助塔(TAs、臨時下部構造材)に移すため、油圧ジャッキを作動させ橋デッキが持ち上げられたところで荷重を載せ替える必要がありました。この規模の構造物、そして今回のように大きな損傷がある構造物では、こうした荷重の載せ替えで橋や臨時構造材に構造欠陥が発生しかねず、計測管理が重要な意味を持つ瞬間といえます。全工程の実施において最大限の安全を確認するため、臨時構造材の複数箇所でひずみを計測して荷重が一様に移されたかを評価し、橋構造にかかる荷重を計測して荷重が想定通り除去されているか推計しました。

荷重載せ替え作業は、一工程終えるごとに本プロジェクトの担当エンジニアによる数値シミュレーションと比較し、構造材の挙動が想定範囲内であるかを確認しながら、一段一段進めていきました。

傾斜計測も、臨時構造材の塔および橋自体で行いました。

もう1つ重要な点は、風や潮流で荷重が発生することでした。海岸地域に位置する橋は島と大陸が近づいて間隔の狭くなった部分にあるため、風は高速で吹き、修復作業が危険にさらされることがあります。そのため、橋沿いに取り付けたすべてのひずみセンサと温度センサで、潮流と風力計測を行いました。


光ファイバ式ひずみ計測技術の選択

光ファイバ式センサには、「疲労限界が大きい」、「多重通信」、「電磁干渉へのイミュニティ」といった大きな強みがあります。HBM FiberSensing社のひずみゲージシリーズやFBG技術を用いた他の光ファイバ式センサは、試験や計測条件が厳しい用途に最適です。HBMの光ファイバ式センサ全ラインナップはこちらをご覧ください。

光ファイバ式センサには、「疲労限界が大きい」、「多重通信」、「電磁干渉へのイミュニティ」といった大きな強みがあります。HBM FiberSensing社のひずみゲージシリーズやFBG技術を用いた他の光ファイバ式センサは、試験や計測条件が厳しい用途に最適です。HBMの光ファイバ式センサ全ラインナップはこちらをご覧ください。


Ricardo Martins氏は次のように述べています。「HBM社は、悪天候続きの中でシステム全体の設置を期日通りに完了させるなど、モニタリングシステムの取付けにおいて、その高度な技術力を発揮してくれました。設置の完了後は、始動直後の1か月間、HBM社から直接サポートの提供を受け、その後、荷重載せ替えが完了するまでの間は、契約に基づき技術面の支援を受けました。システムのメンテナンスを実施するTeixeira Duarteの技術者に対しては、現場に常駐するHBM社のスタッフと、HBMの遠隔サポートチームがトレーニングを実施してくれました。こうした協力関係のおかげで、モニタリングシステムを適切に運用できるようになったのです」

Teixeira Duarte社

1921年創業のTeixeira Duarte社は、ポルトガル最大級の企業グループの中核企業です。

Teixeira Duarte社は、構築する価値、すなわち創意、真実、献身を基盤として、「よりよい世界の構築の実行と貢献」という使命を果たしてきました。

Teixeira Duarteグループは現在、4大陸18か国におよそ10,500人の従業員を抱え、建設、施設運営とサービス、不動産、宿泊業、ケータリング、自動車の6部門で事業を展開しています。

今日、Teixeira Duarte社は、建設業界のパイオニアとして優れた価値を提供するという責務を担っています。チームや体制が複雑に絡み合う大型プロジェクトや大規模事業において、その評価の高い構想力、イノベーション力、建設能力、マネジメント力で確実な実績を残しています。

橋、ダム、病院、道路などの公共の大規模インフラから、歴史に残る巨大ビルディングまで、Teixeira Duarte社の傑出したノウハウは、人々が日々目にするものの中に見て取ることができます。

HBM FiberSensing社

HBMグループの一員であるFiberSensing社は、先進モニタリング向けのファイバ・ブラッグ・グレーティング(FBG)技術を応用した光ファイバシステムの開発と製造を行っています。

光ファイバ技術から光電子工学、デジタルエレクトロニクス、計装まで多岐にわたる専門知識を基盤に持つ同社は、光ファイバセンサ、インテロゲータ、ソフトウェアアプリケーション、さらにモニタリングソリューション一式まで、多様な製品を開発しています。

HBM FiberSensing社は、ポルトガルに拠点を置き、80カ国以上に広がるHBMグループのグローバルネットワークを通じて、国際的な事業展開を行っています。