1. はじめに

洋上風力発電は長い海岸線を有する日本の地形を活かした発電方式であり、近年、実用化に向けた取り組みがされている(1)。洋上風力発電では発電した電力を高効率かつ低コストで陸上まで伝送する必要がある。低コスト化を実現するには変電設備の小型軽量化が求められることからソリッドステートトランスフォーマー(SST)の適用が有効であるとされている。特に、変換器にモジュラーマルチレベル変換器(MMC)を使うことで高効率化、大量生産によるコスト低減、容量増加への柔軟な対応が可能という利点がある(2)。本稿では大阪工業大学にて研究、開発しているMMCについて述べた後、実験におけるHBM・GEN seriesの活用事例を紹介する。

2. 洋上風力発電とSST

洋上風力発電では発電した電力を陸上まで伝送する必要がある。長距離の伝送においては交流送電よりも直流送電にすることでコストを低減できることが知られている。

図1に従来の洋上風力発電における直流送電システム構成を示す(2)。発電機出力は50Hzや60Hzの商用変圧器を使って昇圧および絶縁された後、変換器により直流に変換される。この構成では変圧器および変換器中のリアクトルやキャパシタの重量、体積が大きいという問題がある。変圧器やリアクトルを小型化する方法として、高周波化が挙げられる。高周波化することで磁性材料の大きさを小さくすることができるためである。周波数を10 kHzにすることで体積はおよそ1/10にすることができる(2)。

図2に高周波変圧器を用いた直流送電システム構成を示す(2)。図2のように高周波変圧器を利用する変換システムはソリッドステートトランスフォーマー(SST)と呼ばれる。SSTでは発電機出力を一度直流に変換した後、高周波交流に変換する。そして、高周波変圧器により昇圧絶縁し、再び直流に変換する。従来構成に比べ、変換器が増加するものの、SST全体の体積や重量は商用変圧器よりも小さくすることができる。一方、変換回数の増加により、効率は悪化することから、変換器の高効率化が要求されることになる。

3. モジュラーマルチレベルコンバータの適用

変換器の高効率化を図るには損失の小さいスイッチング素子の利用が効果的である。しかし、洋上風力発電では直流で250 kV ~ 500 kVを扱うことになるため、一般的な変換器ではサイリスタといった高耐圧素子を使用しなければならないが、高耐圧素子は損失が大きいという欠点がある。さらに、スイッチング速度が遅いという欠点を持つため、さらなる高周波化を目指すことも難しくなる。そこで、以上の問題を解決する手法として、モジュラーマルチレベル変換器(MMC)の適用が有効であると考えられている。

図3にMMCの回路図を示す。MMCは複数のモジュールにより構成される。各モジュールに使われるスイッチング素子は低耐圧でよく、多段化することで高電圧に対応することができる。したがって、SSTにMMCを採用することで、高効率化を期待できる。また、大容量化する場合、モジュール数を増やすことで容易に対応できることから拡張性が高く、モジュールを大量生産すれば、コスト低減を図ることができる。なお、図3ではAC/DC変換時の構成を示しているが、MMCでは双方向の電力変換が可能であるため、DC/AC変換器としても利用できる。

図4にモジュールの回路方式を示す。モジュールにハーフブリッジ回路を採用することで素子点数を最小にすることができる。ただし、モジュール単体では負電圧を出力できない。一方、フルブリッジ回路は素子点数が増えるものの、モジュール単体で負電圧を出力できるため、ハーフブリッジ回路MMCに比べ、電圧の制御性が上がり、広範囲で制御が可能である。

4. 開発したMMCの評価

図5に大阪工業大学にて開発したMMCを示す。MMCは各相8モジュール、計24モジュールで構成される。モジュール基板には1枚当たり2モジュールの回路が実装されている。容量は10 kVA、PWMキャリアは最大20 kHzである。

図6に実験時のシステム構成を示す。三相系統に接続される整流器を通じて直流400 Vが生成される。2レベルインバータにより、直流から三相200 V / 400 Hzに変換され、高周波変圧器により絶縁されたのち、MMCへと入力される。MMCにおいて直流400 Vに変換する際の動作を評価する。なお、MMCの出力はそのまま2レベルインバータの入力となるため、三相系統からは変換器の損失分の電力のみ供給される。

図7に実験の様子を示す。MMCの動作を分析するため、モジュールのキャパシタ電圧、スイッチング素子の電圧および電流など、計12チャンネルを同時に測定する必要がある。一般的なオシロスコープではチャンネル数が足りないことから、高速マルチチャンネルレコーダGEN7tAを使用している。なお、GEN7tAのサンプリングは2 MS/sであることから、高調波成分を測定することも可能である。また、ダイナミックパワーアナライズ機能eDriveを使用することで同時にMMCの電力を測定することができる。

図8に各モジュールにおけるキャパシタ電圧の測定結果の一例を示す。MMCの動作によって、キャパシタ電圧が変動していることが明らかとなっている。キャパシタ電圧の基準電位はモジュールごとに異なるため、一般的なオシロスコープを使う場合、測定点数分の差動プローブが必要となる。一方、GEN7tAでは電圧入力部が絶縁(最大入力電圧 ±1000V)されていることから、差動プローブを使用せずに多数のポイントでの電圧測定が可能である。

5. まとめ

MMCでは複数のモジュールを多段に接続するため、評価するためには多数の電圧や電流を測定する必要がある。GEN7tAでは最大42チャンネルの測定が可能であり、MMCの詳細な動作分析が可能となる。大阪工業大学では今後、効率やスイッチング波形の測定にGEN7tAを活用する予定である。

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