ゲージ率の誤差 ゲージ率の誤差 | HBM

電気式ひずみゲージによるひずみ計測において、なぜ正確なパラメータ化が重要なのか

ゲージ率は、ホイートストンブリッジ対応の適切なデバイス(HBMのひずみゲージブリッジアンプQuantumX MX1615Bなど)で計測することができるブリッジの相対変化と、計測したひずみとの間の比例係数です。

一般に、電気式ひずみゲージのゲージ率は計測格子材料に依存し、約2.0(HBMのひずみゲージYシリーズに使われているコンスタンタンの場合)および2.2(HBMのひずみゲージMシリーズに使われているニッケルクロムの特殊合金MODCOの場合)付近で変動します。

ゲージ率が大きいと、ホイートストンブリッジにおける出力信号が大きくなり、ゲージ率が小さいと、信号は小さくなります。

誤ったゲージ率がソフトウェアによって設定されると、ひずみ計測の結果は正確になりません。そのために、HBM製ひずみゲージのバッチやパッケージには個々のゲージ率が表記されています。

図: ひずみゲージの仕様

次の実験は、誤ったゲージ率が原因で誤差が生じることを示しています。

この実験では、電気式リニアひずみゲージLY41-3/120、ブリッジアンプモジュールMX1615Bとの3線式接続、HBM製データ収集ソフトウェアcatmanで計測チェーンを構築し、室温で、以下の試験を実施しました。

 

1回目は、ゲージ率を2.0に設定しました。

ひずみゲージを曲げビーム上に設置し、次の信号が得られました。

先に述べたとおり、ひずみゲージのゲージ率はバッチごとにわずかに異なります。ゲージ率を含めて、使用するひずみゲージの仕様を保存することが重要です。あるいは、データをすべて(デジタルデータのまま、あるいはPDFファイル形式で)使用するセンサのデータベースに保存することもできます。一見すると、2.0と2.06では大きな違いは生じないように思われますが、次の実験は、正しいゲージ率を考慮しないことで大きな計測誤差が生じてしまうことを示しています。

 

このテストでは、同じロットの2つのひずみゲージを設置し、ホイートストンブリッジチャネルを1つは「ゲージ率2.0」で、もう1つは「ゲージ率2.06」で設定しました。ひずみが小さい場所では、多少なりとも2つのグラフが重なることが確認できます。ひずみが大きくなると、明らかに計測結果にずれが生じていることが確認できます。

計測信号をよく見てみると、このずれは無視できないことが直ちに見てとれます。

 

ゲージ率2.0では、ひずみは5784μm/m(約0.578%のひずみ)、ゲージ率2.06では、ひずみは5618μm/m(約0.562%)となっています。その差は、166μm/mになります。

 

相対計測誤差で表せば、2.8%です。

この実験から、正確な計測を行うには正しくパラメータ化することが必要であることが分かります。このことは、計測点の温度、接触抵抗、電線と機器周辺の周囲温度、ひずみゲージと電線への総電磁干渉など、周囲や設置の影響についても当てはまります。