Aerodyn: 洋上風車試験への導入事例 Aerodyn: 洋上風車試験への導入事例 | HBM

Aerodyn Engineering社、革新的な洋上風車の試験にHBMの高精度力センサS9Mを採用

クリーンエネルギー改革という大きな課題に挑むには、再生可能エネルギーへの取り組みが鍵を握ります。aerodyn engineering社は、空気流の力をよりうまく活用して発電する新しいシステムの開発を行っています。そうした発電システムを過酷な条件で試験するには、信頼できる試験計測装置が必要です。そこで、風力発電のエキスパートである同社は、日本の沿岸に浮かぶ新しいコンセプトの洋上風車の試験に、HBMのセンサを採用することにしました。HBMの力センサS9Mは、海面下で行われる計測でも正確なデータを提供します。

世界のエネルギー需要は急速に増加しています。世界では毎年163,300億キロワット時の電力が消費されており、この数字は上昇する一方です。発電分野では、再生可能エネルギー源が特に重要になってきています。

なぜなら、CO2排出量を抑え気候変動を抑制するには、ガスや石炭による発電といった従来技術よりも、効率に優れ、環境に優しい発電技術が必要だからです。こうしたことを背景として、aerodyn engineering社は、風力をよりうまく利用できる革新的な風車の開発に取り組んでいます。開発したシステムを実用化するにあたっては、過酷な環境条件下における発電システムの耐久性を試験・検証しなければなりません。その難しい試験には、水中でも信頼できるデータが取得可能な堅牢な試験計測装置が必要です。同社は、こうした厳しい要件を満たすものとして、高精度力センサS9MをはじめとするHBMのハイグレードなセンサ技術を用いて、新しい洋上風車の試験を行っています。

問題

aerodyn engineering社は、現在、日本の倉橋島沿岸に浮かぶ新しい洋上風車モデルの試験を実施しています。この風車は、スイベルジョイントによって風向に合わせて独自に向きを変えることができるようになっています。この試験の重要な目的は、風車の強度を確保するための情報として、海底に固定した6本のアンカーケーブルにかかる荷重を確認することにあります。計測は数か月に及ぶため、信頼でき、なおかつ以下の特徴を備えた試験計測装置が必要になります。

  • 高精度であること
  • 長期間にわたり海面下で計測が可能な防水性能を備えていること
  • 過負荷や浸食性の海水内での腐食耐性を備えていること

ソリューション

aerodyn engineering社は、この一連の試験に、S字タイプの高精度力センサS9Mと各種取付けアクセサリを使用しています。また、回転タワーの張り綱の計測には、HBMの小型ロードセルU9Cを使用しています。

  • S9Mの特徴は、その構造により0.02もの優れた精度等級を備えていることです。温度依存性を極力抑え寄生力の影響も受けにくい設計で、極めて過酷な条件でも信頼できるデータが得られます。
  • また、密閉構造により、水中での長期間使用にも適しています。さらに、計測体は堅牢なステンレス鋼製であるため、浸食性の海水に対しても耐腐食性があり、容量の3倍までの過負荷にも耐えることができます。
  • センサに適した取付けアクセサリ(ナックルアイなど)が、最高の計測結果を保証します。

見込まれる成果

  • 高精度力センサS9Mから得られる正確な計測データによって、モデル試験から、実物大の風車を想定した信頼できる値を導き出すことができます。
  • その密閉溶接された取付け部によって、数か月に及ぶ試験期間中、海水の浸入からひずみゲージが確実に保護されます。
  • HBMの2つのセンサS9MとU9Cは、アンカーケーブルや回転タワーの張り綱にかかるダイナミックな荷重データを高精度かつ詳細に収集できる堅牢さを備えています。

浮体式風車の試験運転

広島湾の倉橋島沿岸の平均海水温は10℃です。ここで、aerodyn engineering社は現在、風向に合わせて独自に向きを変える浮体式洋上風車の試験を行っています。総重量3トンにもなるその構造物は、3つの細いフロートによって水上に浮かびます。高さ8 mのタワーに回転ブレードが2枚取り付けられ、翼幅は16 m以上になります。

「風の条件がいいと、この風車で5 kWの出力が出ます。ただし、これはわずか1/10のモデルです。実物大の風車は、重量が約3,000トン、出力は最大で6メガワットになります」と、aerodyn engineering社のシニアチーフエンジニアMartin Bode氏は説明します。風車は、海底の投錨地点6箇所に固定された6本の鋼製ケーブルによって定位置に安定させます。アンカーケーブルが集合するところにスイベルジョイントを設け、それによって風車全体が風向に合わせて自由に向きを変えることができるようになっています。この試験の重要課題は、風車の係留システムにかかる応力を確認することです。「たとえひどい嵐や高波にさらされることがあっても、風車の係留システムはその後も長期にわたって極めて過酷な条件に耐えなければなりません。そのため、数か月間水中で使用できる堅牢な力センサが、この計測には欠かせません」と、Martin Bode氏は述べます。また、モデル試験のデータから実物大の風車における信頼できる値を推定するには、極めて精度が高い、詳細な計測データを収集する必要があります。

「この斬新な洋上風車の試験はとても複雑なので、信頼できる試験計測装置が必要です。力センサS9Mなら、海上の酷く荒れた条件でも、係留システムにかかる引張荷重について実に精度の高い信頼できるデータが得られます」と、同氏は語ります。

力センサS9M: 計測範囲の下側でも極めて高精度

この試験において、HBMのスタッフが、aerodyn engineering社に対して、さまざまな助言やセンサの提示を行っています。

「当社の密閉型力センサS9Mは、数か月に及ぶ海面下での計測に最適なソリューションです。当社製品には徹底的な検査が実施されています。いずれのセンサも、お客様が要求する品質に完全に適合することが保証されています」と、HBMのセールスエンジニアのChristoph Miksは言います。

力センサS9Mは、風力発電のエキスパートが求める品質を確実に満たすものです。このS字タイプの力センサには、計測範囲0.5 kN~50 kNで7種の容量がラインナップされています。引張・圧縮力を高精度に計測でき、静的・動的いずれの計測用途にも幅広く使用できます。例えば、テストベンチ、レバーアームを用いたトルク計測、製造モニタリングなどさまざまに利用できます。「S9Mは温度依存性が最小で寄生力による影響もごくわずかなため、計測範囲の下側においても、また極めて過酷な環境においても、産業用途での計測であろうと海面下での計測であろうと、極めて高精度な計測が行えます」と、Christoph Miksは続けます。

S9Mはその構造により、HBM精度等級0.02という他に類を見ない精度を備えている上に、極めて堅牢です。密閉構造で保護等級IP68のS9Mは、水面下での使用に適しています。「ひずみゲージ取付け部は密閉溶接されており、aerodyn engineering社が実施する長期計測においても、海水の浸入から感度の高いひずみゲージが確実に保護されます。当社の製品には徹底的な検査を実施し、どのセンサも、お客様が要求する品質に完全に適合することを保証します」と、Christoph Miksは語ります。

 

鋼製計測体により、大波にも耐える堅牢さ

「風車は、最大25 m/sという強風にさらされます。これはもう暴風です。アンカーケーブルも、最大17 mの大波に耐えなければなりません」と、Martin Bode氏は言います。

倉橋島沿岸でも大波は起こりやすく、アンカーケーブルには時折、非常に強い引張荷重がかかります。S9Mは極めて正確で、しかも高容量です。S9Mだからこそ、高容量のセンサを過負荷が起こりやすい用途に使用することができます。センサの優れたパフォーマンスが、極めて高精度な計測結果を保証します。

「当社の革新的な風車は、クリーンエネルギー革命を推進します。これを成功させるには、新たな地平を共に切り開いて行くパートナーが必要です。HBMのスタッフは、試験で最適な計測結果が得られるように貴重な助言を与えてくれました。HBMは、グローバル企業の強みを生かして、世界各地で私たちのプロジェクトを常に迅速にサポートしてくれています」と、aerodyn engineering社のシニアチーフエンジニアのMartin Bode氏は語ります。

計測には、力センサS9Mのほか、このセンサの容量に最も合うように作られたナックルアイなどの追加アクセサリも利用します。さらに小型ロードセルU9Cを使って、回転タワーの張り綱3本にかかる引張荷重も計測します。計測体はステンレス鋼製で動特性が高く堅牢なため、張り綱における荷重変化を長期にわたって正確に収集することができます。「HBMは、それぞれの要求に合わせて、さまざまなセンサと計測機器を提供することが可能です。当社がお客様に提供するのは、センサから計測機器、そして専用の取付けアクセサリに至るまで、すべて1社の製品で完全な計測チェーンが構築できる技術です」と、Christoph Miksは述べています。

センサと試験・計測技術を中心として、aerodyn engineering社とHBMの信頼関係は既に数年来続いています。aerodyn engineering社のMartin Bode氏は次のように述べています。「当社には、新たな地平を拓き、私たちの革新的なコンセプトの風力発電を共に推進してくれるパートナーが必要です。HBMは、貴重な助言と高品質で信頼できる技術を提供してくれています。そのおかげで、試作機の試験運転が効率よく、しかも高い信頼性をもって行えているのです。世界中で試験を実施している当社にとって、HBMのグローバルプレゼンスが大きなメリットになっています。例えば、世界のどこかで急に計測の必要性が生じたときなど、迅速に機器を設置する必要があるからです」


Aerodyn Engineering社について:

Aerodyn Engineering社は、沿岸や遠洋で運転される、革新的な風力発電施設とその構成部品(タービン、回転翼など)の開発・試験を行っています。同社が開発した風車は5つの大陸すべてで稼働しています。同社は、発電をより環境に優しいものにし、風力等再生可能エネルギー源をより有効に活用するための取り組みを行っています。ドイツ(シュレースヴィヒ=ホルシュタイン州ビュデルスドルフ)に拠点を置く同社は、定格出力6,500 kWまでのさまざまなシステムを開発しています。