HBMの力センサで防波堤が受ける波の衝撃を計測

海面上昇に伴い、防波堤の建設がますます急務となっています。新しい防波堤の開発において、波が構造物に与える衝撃を計測することが重要な要素となっています。ブラジル人のErmano de Almeida氏は、デルフト工科大学の土木工学部流体工学研究所において、オーバーハング構造を持つ堤防が受ける波の衝撃を計測するプロジェクトを2018年の夏に実施しました。このプロジェクトで同氏が使用したのがHBMの力センサでした。このプロジェクトにはオランダ科学研究機構(NWO)やRijkswaterstaat、Witteveen+Bos、PT Structural、Deltares(オランダの水と下層土の研究組織)などの機関も参加しました。その研究成果は、オランダの締め切り大堤防の放水口など水力構造物の新設や更新の役立てられることになります。

課題:  洪水や堤防の決壊が世界各地で多大な問題や被害を発生させています。
解決策:  波の衝撃力に関する情報を収集することで、大型化することなく堅牢性と安全性が確保された構造物を構築できるようになります。
結果:  物理的な実験から得られた生データを処理・分析し、新しい防波堤の設計・建築のための貴重な情報が得られる見込みです。

垂直な構造物に波が与える衝撃の強さを計測

Ermano de Almeida氏は現在、デルフト工科大学の水工学の博士課程の研究の一環として、スチール製の防波堤のモデルに対する波の衝撃に関する研究を行っています。同氏はマドリッドとアーヘンで土木工学を学び、デルフト工科大学で修士号を取得。防波堤に関する研究プロジェクトに参加する機会を得た際には、諸手を挙げてその誘いを受諾しました。それは単にこのプロジェクトが学問的にも実用的にも興味深いと思ったからというだけではなく、水を制御・管理することはこれからの重要な課題であると考えたからです。

De Almeida氏は現在、スチールとコンクリートでできた垂直な水力構造物を主な研究対象としています。これは港や水門、放水口などで見られる構造物で、北海に沿って設けられたオランダの防波堤でも広く利用されています。高潮発生時に放水口や水路を閉鎖するために、他の水力・機械設備と共に使用されています。このタイプの構造物は、水流や通行のために水門を設ける必要がある場所において、荒天の際には閉鎖し、波からの安全を提供する防波堤として機能します。

この研究プロジェクトの目的は、垂直な構造物に対して波が与える衝撃の強さを計測することです。オーバーハングのある垂直な構造物では波の力が上方向に分散しないため、波が与える力は特に大きくなります。また、垂直部分への圧力も増します。さらには、オーバーハング部分にも波による大きな力が加わります。ここでいうオーバーハングは、防波堤の上部に保護のために設けたコンクリートの縁や、隔壁を吊る開口部の天井などです。De Almeida氏によると、そのような負荷条件において、比較的薄い金属板の共振と振動が構造物の寿命や使用されている材料に与える影響を調べることは大変興味深いとのことです。同氏は次のように説明します。

「これらの水理構造物が破壊に至るケースはそれほど多くありません。しかし、負荷特性と構造物の応答に関する明確な知見の欠如が危険な状況を引き起こし、場合によっては、構造物の破壊につながるケースが知られています。波の衝撃力に関する情報をより多く収集することで、大型化することなく堅牢性と安全性が確保された構造物を構築しやすくなります。その結果として、構築にかかる時間、材料、コストが削減されます。また、この研究は、このタイプの防波堤を建設するための新しい手法の開発にも結び付くことでしょう」

水たまりと力センサ

試験はデルフト工科大学の流体力学研究所で行われました。この研究所は、約5,000 m²の広さがあり、そのうち1,700 m²が実験に利用されています。同研究所には、1秒間に2立方メートルの水を流すことができる、8本の水路が設けられています。De Almeida氏の実験は、長さ42 m、幅80 cm、深さ1 mを持つ、この研究所でも最も大きい水路の1つで実施されました。水路の終端には80 x 80 x 100 cmの固いコンクリートのブロックが置かれ、その上に1 cm厚のアルミニウム板がアルミニウムの接合部分を用いて取り付けられました。1.0 kNの測定レンジを持つ9台のHBM U3 力センサがアルミニウムフレームと金属板の間に1列に設置されました。このロードセルはステンレス製で温度の影響を受けにくく特に水を用いた試験に適していることから、HBMではこのU3力センサの使用を推奨しました。また、U3力センサは、高剛性を備え、曲げモーメントを補償し、横力に強いため、計測結果には極めて高い信頼性が確保されます。

センサは、デルフト工科大学で開発された計測アンプに接続され、このアンプが5000/sのサンプリングレートで波の衝撃を記録します。De Almeida氏は、モニター画面に表示される計測データから、波の高さや構造物への衝撃をリアルタイムで確認することができます。実験の環境は、金属板の高さやオーバーハングの大きさ、力センサの位置の調整が行えるなど、柔軟性を備えています。

ここでは、造波装置を使って、規則的あるいは不規則な波が次々と水路の中で作り出されます。計測データに影響を与えないように、反射波を打ち消す反射補正設備が設置されています。波の特性を測定する8個のセンサが、金属板の手前数メートルの水中に約40センチ間隔で設置されています。3台のカメラで試験の画像を記録しており、気になる計測結果があった場合にその画像を確認できるようになっています。

締め切り大堤防の放水門をリファレンスに設定

試験環境の設定にあたっては、この研究が想定している波の種類や衝撃の大きさが観察されるという理由から、締め切り大堤防のアイセル湖の放水門が最初のリファレンスとして採用されました。この放水門では、堤防の水中部分に放水口が設けられており、ここは高潮や荒天時にスチールの門で閉ざされるようになっています。水平の保護柱の下にある放水口の水門にぶつかった波が、荒天時には突然ブロックされることになり、それが構造物に大きな力を及ぼします。この構造物は、80年前に設計されたもので、締め切り大堤防全体と併せて改修が行われています。De Almeida氏は、自身の研究で明らかになった知見を、同様に深刻な洪水被害に悩み、この研究の成果に大きな関心を寄せている米国をはじめ、世界の他の地域にも適用することを考えています(米国では、水力学分野においてデルフト工科大学が高く評価されています)。

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