静的荷重試験 (1) を実施する場合、ひずみゲージは一方向 (引張または圧縮) のみに使用でき、降伏限界を超えます。それでも塑性変形領域で有効な計測値が得られます。電気式ひずみゲージにおける最大値は、ひずみゲージ製品カタログ(PDF)で絶対ひずみとして規定されます。値は、引張と圧縮のそれぞれについて規定されます。静的試験は、HBMの箔ひずみゲージを使用した場合、1~10%の高いひずみが可能です。
電気式ひずみゲージの疲労寿命
電気式ひずみゲージの疲労寿命は、誤解されることの多いトピックです。「ひずみゲージの最大疲労寿命とは何ですか」「どの最大ひずみ振幅で何回の負荷サイクルが許容されますか」といった質問をお客様から受けることがあります。ますます強い材料 (複合材料) が開発され、その耐久性試験に耐えられるひずみゲージが求められています。
電気式ひずみゲージは、静的荷重試験や、部品およびフルスケールでの疲労試験といった、様々な分野の数多くの試験に利用されている実績あるセンサテクノロジーです。一方で、重量比強度の向上や、将来の新製品のニーズに対応できるように、材料は改良が進み、その強度限界で使用されることを想定した設計が施されるようになっています。
こうした試験では、「部品/完成品として試験装置にかける」、「移動型試験を行う」というように各段階で材料を試験することによって、負荷の状況をシミュレーションし、故障が起きないことを確認する必要があります。
耐久性試験中に予期せずひずみゲージが故障すると、非常に大きな予定外の労力と追加コストが発生します。そのため、ひずみゲージが耐えられる負荷サイクルの回数と得られる精度を把握することが重要です。
限界になる要因の1つは電気式箔ひずみゲージに使われる材料です。箔ひずみゲージの主要部品の1つに金属グリッドがあります。 金属を蛇行させた形状のグリッドは、荷重が加わると変形して電気抵抗の値に変化を生じるように作られています。この電気抵抗における変化は、ホイートストンブリッジ回路における電圧変化として検出することができます。
電気式ひずみゲージによく使われる金属は、コンスタンタンあるいはニッケルクロム (特殊合金MODCO) です。金属材料としてのコンスタンタンとMODCOは、構造材料として最も知られている鉄鋼やアルミニウムなどの材料に似た特性を備えています。金属の変形には、線形な弾性変形領域と塑性変形領域があります。下のグラフは、応力とひずみに関する鉄鋼の挙動を示したものです。
材料が弾性変形領域内で変形しただけであれば、変形した材料は元に戻ります。材料に降伏限界を超える応力が加わると、塑性変形領域に達します。材料に加わる応力がこの領域になると、外力を除去しても元の状態に戻らなくなります。つまり、材料は不可逆的に変形したということです。鉄鋼で知られるこの典型的な材料挙動は、箔ひずみゲージに使われる材料にも見られます。
残念なことに、降伏点(つまり弾性限界)を無限に大きくすることはできません。これが電気式ひずみゲージの疲労強度に限界がある理由の1つです。
この典型的材料挙動を示すグラフから次のことが言えます。箔ひずみゲージがどれだけ試験に耐えうるかは、加わる応力の大きさによるということです。応力振幅が小さければ、ゲージは弾性変形領域内で応力を受け、その変形は可逆的であることから、疲労寿命は大きく伸びます。応力振幅が大きくなればなるほどシビアになり、ひずみゲージの場合、ある限界を超えての動作がたった1回しかできないことを意味します。
下の図は、この挙動が機械的試験においてどのように見えるかを示しています。
静的荷重試験 (1) を実施する場合、ひずみゲージは一方向 (引張または圧縮) のみに使用でき、降伏限界を超えます。それでも塑性変形領域で有効な計測値が得られます。電気式ひずみゲージにおける最大値は、ひずみゲージ製品カタログ(PDF)で絶対ひずみとして規定されます。値は、引張と圧縮のそれぞれについて規定されます。静的試験は、HBMの箔ひずみゲージを使用した場合、1~10%の高いひずみが可能です。
動的荷重試験 (2) にゲージを使用する場合、すなわち交番する (引張と圧縮が入れ替わる) ひずみの場合、グリッド材料の降伏限界を超えることはできません。この最大許容値も、ひずみゲージ製品カタログで疲労寿命として規定されます。疲労寿命の規定には、負荷サイクルとゼロ点ドリフトの公差に依存する最大許容振幅も含まれます。HBMで実施するひずみゲージの疲労寿命試験は、両方向 (引張と圧縮) で行います。
1往復の負荷サイクルは、規定された振幅での引張1回と圧縮1回に相当します。
静的ひずみとは、その規定されたひずみでゲージに負荷をかけられるのは、その寿命時間内に1方向に1度だけであることを意味します。規定された限度を超えると、ひずみゲージは高確率で損傷します。
次のグラフは、Yシリーズは±5%、Mシリーズは最大1%、Yシリーズ配線済みひずみゲージは+2.5%~-2%のひずみで負荷した場合の、各種ゲージに期待できる最大静的ひずみを示しています。
疲労試験で何度も負荷をかけられた箔ひずみゲージは、負荷サイクルの回数と負荷振幅の間に強い関係性を示します。計測グリッド材料に与えるひずみ振幅が大きいと塑性変形が生じることがありますが、これは、信号にゼロ点ドリフトが現れるか、信号が完全に消失することで確認できます。この場合、負荷サイクル数は劇的に減少します。次のグラフは、疲労寿命がいくつかのパラメーターに依存することを示しています。負荷振幅と負荷サイクルの関係は線形ではありません。
各箔ひずみゲージの疲労寿命は、ひずみゲージ製品カタログ (PDF) に規定されています。
ゲージ率の永久的な変化も、ひずみゲージが破損したことを示す明らかな指標です。
グリッドにクラックが入ったことは正弦波形信号が途切れることで検知できます。小さなクラックが負荷の周期的増減により開閉することで、信号が消失します。つまり、電気信号はほんの部分的にしか接続していません。
また、ひずみゲージやはんだに目視確認できるクラックや不規則状態を手掛かりとして、ゲージが破損していることが確認できます。
電気式ひずみゲージを使った大きい振幅 (>4000 μm/m) での計測では、信号が著しいゼロ点ドリフトを示すより先に、許容負荷サイクル数に一層の低下が見られます。非常に大きい振幅でのひずみ試験から、負荷サイクル数は極端に低下することが示されています。例えば、Mシリーズのゲージを振幅+5200 μm/mの膨張負荷試験にのみ使用する場合、試験サイクルは1000回にまで低下します。振幅+7000 μm/mで試験する場合、試験サイクルは100回にまで低下します。
負荷振幅が大きくサイクル数も多い試験には、光学式ひずみゲージの使用もお勧めします。
1. はんだ端子に載せるはんだの量を最小限にする
堅い材料領域は、静的または動的な負荷をかけたときに最も破損しやすい箇所です。高度な接合技術を駆使してはんだ端子に載せるはんだの量をできるだけ少なくすると、堅さが低減し、疲労寿命が増加します。
2. ケーブルは、ひずみ方向に対して直角にはんだ付けする
はんだ端子との接触面積を最小にすることで疲労寿命が増加します。
3. 柔軟性の高い電線材料やリード線を使用する
はんだ端子に接続するケーブルはメカニカルシステムの一部です。直径が大きく剛性の大きいケーブルを使用すると局部剛性が増大します。剛性は、直径が小さく柔軟性が高い電線を使用することで小さくすることができます。
4. ひずみゲージを別付けはんだ端子と共に使用する
別付けはんだ端子を使用することでリード線付きのひずみゲージが使用できます。リード線付きひずみゲージは柔軟性に優れます。ゲージ本体にはんだ材料の盛り上がりがありません。はんだは、別付けはんだ端子の方に載ります。
9. 特定の疲労寿命に適したひずみゲージを使用する
HBMのMシリーズひずみゲージは、特に疲労寿命が長い材料の試験用に開発されました。耐久性の高いグリッド材料 (MODCO) と特殊なキャリア (フェノール樹脂) を使用しています。さらに、計測グリッドからはんだタブを分離するひずみ緩衝機能が付いています。
HBMのMシリーズ
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