力およびトルク計測におけるトレーサビリティ 力およびトルク計測におけるトレーサビリティ | HBM

比較計測の時間を短縮する方法

特に意識していない人が多いと思いますが、計測のトレーサビリティは日常生活にとって重要です。例えば、自動車のフレームは正しい機械的な寸法をもと設計しなければ制作不可能です。トレーサビリティにより、計測結果を基準に対し参照して、精度を確認できます。トレーサブルな計測値とは、不確かさがすべて表記された切れ目のない比較の連鎖によって、決められた基準に結びつけられ得る測定結果です。ただし、これらのトレーサビリティのための連続的な比較計測では、比較の結果が「下位の値」になります。慎重に選択した計測機器を使用すると、この影響を軽減できます。このため、「CIPMキーの比較」や「RMOキーの比較」などの国際的な比較計測、認定機関による多国間または二国間の比較計測などの移管を問わず、比較計測は最大限の注意を払って実施する必要があります。

比較計測に際しては、通常、数年の経験を持つパイロットラボでは、「技術プロトコル」を開発し、使用する計測システムの仕様を定義しています。最後に、計測不確かさのバジェットを各参加ラボで利用できる必要があります。このバジェットは、使用される計測機器によって異なります。このような比較計測は、タイプによっては非常に長い時間がかかり、2か月から1年になる場合があります。そのため、所要時間を短縮することをお勧めします。

ひずみゲージ(SG)に基づくセンサによる、力およびトルクの計測不確かさが最も低いことが明らかになりました。したがって、これらは比較計測のための参照センサおよびトランスファー規格として使用されます。

トップトランスファ力センサ

HBMは、計測技術ソリューションのメーカーとして、数十年以上にわたり、参照計測チェーンを提供するために必要な高度なノウハウを蓄積してきました。TOP-Z30Aシリーズの参照用力センサは、国際比較計測用に特別に設計されたTOPトランスファー力センサの代表として広く認められています。 TOP-Z30Aは、引張力と圧縮力の両方に極めて高い精度を提供し、国際規格 ISO 376:2011の最高精度クラス00の要件を上回る性能を発揮します。その一部は最大10倍の精度を提供します。同時に、このセンサは特に高い再現性を備えています。TO-Z30Aは、センサに内蔵のTEDS(電子データシート)を標準装備しています。TEDS(トランスデューサ電子データシート)を使用すると、計測アンプにデータを直接読み取ることができます。センサをラボ間の比較用にラボからラボに搬送する事により、各ラボで計測チェーンを設定する時間が大幅に短縮されます。

トルクトランスファ変換器TN

HBMの 参照用トルクセンサTN も、国際的な比較計測用に最適化されています。この場合、特に重要なのは、シャフト形状のモノリシック設計が比較計測に必要であることです。ただし、シャフトセンサは、ひずみゲージベースセンサの優れた特性を備えているため、「オープン」センサとしてのみ設計でき、密閉されていません。これにより、センサが相対湿度の変動に影響を受けないようにするという課題が生じます。これは、センサをラボからラボに移動する必要があるため、ラボが空調されていても必要になります。

参照用トルク変換器TNは、湿度への依存度が非常に低いため、「環境調整」を行う時間を非情に短くできます。これにより、特定の計測条件を満たしたうえで、移動時間を含むすべてのラボでのテスト時間の合計を短縮できます。

高精度アンプ

ひずみゲージベースのセンサで使用されているホイートストンブリッジからの信号は非常に小さいので、信号を適切に処理し表示するためにはアンプが必ず必要になります。参照用センサと精密計測アンプを組み合わせることで、精密計測チェーンが形成できます。この高精度計測アンプのスペックは、関連する参照用センサよりも高くなります。

HBMの DMP41 precision amplifier は、ひずみゲージベースの計測用として、世界で最も正確なアンプなので、国際間の比較計測に最適です。これは、40年以上前から継続しているDMPシリーズの開発の結果です。これは、優れた長期安定性と、タッチスクリーン操作などの使いやすさを兼ね備えています。前述の湿度が感度に与える影響は、高精度アンプにも関連します。計測の不確かさのバジェットが減少し続けているので、湿度の影響を無視することはできなくなっています。このことはデバイスの開発に組み込まれているため、DMP41の湿度に対する感度は、従来のデバイスである DMP40と比較して、約10分の1まで減少しています。

精密計測におけるHBMの実績

1992/1993年まで、HBMの20kN·mのトルクデッドウェイトマシン(このページの最上段の画像)は、ドイツにおいて「国家基準」として使用されていました。