産業アプリケーションのための迅速な計測データ取得 産業アプリケーションのための迅速な計測データ取得 | HBM

生産オートメーションに対する要求は常に増大しています。高品質に加えてサイクル時間の短縮も要求されるため、オートメーションソリューションでは、数が増える一方の計測値をこれまでにないほどの高速で処理しなければなりません。こうした場合、中央コントローラへの負担を減らすため、いわゆる分散型インテリジェンスを備えたソリューションが使用される機会が大幅に増えています。これは、産業用計測技術の分野でも同様です。

産業環境での計測データ取得に関わるこうした要件を満たすため、計測技術のスペシャリストであるHBMは、 その新型PMXシステムを市場に登場させました。計測データの取得、その後のデータ処理、そして高レベルのコントローラへのデータ転送が、ここではすべて高速で実行されます。例えばサンプリングレートは最大で19.2 kHzまで可能です。また、24ビットの分解能を持つ計測用アンプを通して非常に高精度の計測データが保証されます。

オートメーション環境を使用した通信

このシステムは、最大5枚までのプラグインカードを保持する基本デバイスから構成されています。第1スロットは、高レベル自動化システム内での統合を可能にする通信カード用にリザーブされています。他の4スロットは、それぞれ4個のチャンネルを備えたアンプ用として、また組み合わせ型の入力/出力カード用として使用可能となっています。

現時点では、ひずみゲージ (ストレインゲージ、SG)アナログの入力/出力用、デジタル出力用として、計測アンプを装備した3種類のモジュールが利用可能になっています。これにより、最も頻繁に必要となる物理量(力、トルク、圧力、歪み、温度など)の測定が可能となります。各モジュールへの電圧は、すべて基本デバイスから供給されます。

設定や視覚化に使用するPCまたはオペレーティングユニットによる通信は、Fast Ethernet経由で実行します。これに加えて、基本デバイスにはUSBインターフェースが装備されており、これを例えば、USBスティック上に設定を保存したり、それを再び読み出すといった用途に使用することができます(デバイスバックアップ)。また、ハードディスクドライブやバーコードスキャナなどの周辺機器を接続して、品質データを保存したり、コンポーネントの識別番号をこうしたデータ書き込むことも可能です。

 

バーチャルチャンネル

産業アプリケーションにおける計測技術は、オートメーションシステムの通信プロトコルに対して、シームレスに統合する必要があります。データ量とデータの転送速度に対する要求が過去数年でかなり増大してきたため、オートメーション技術における通信プロトコルとしての、工業用Ethernetの人気が次第に高まっています。

こうした理由により、PMXシステムではリアルタイムのEthernetプロトコルであるEthercatおよびProfinetをサポートしています。これらのプロトコルでは、大量のデータの高速転送が可能です。アンプを使用してシステム内で計測信号を処理し、さらにリアルタイムで評価することが可能です。つまりPMXシステムは、本来は高レベルのコントローラが引き継ぐはずだったタスクの一部を、直接アンプ内で実行することができます。

こうしたタスクには、例えば平均値の決定、ピーク値の取得、その他の算術計算、PIDコントローラなどがあります。PMXシステムがサポートしている最大16個の計測チャンネルに加えて、ユーザーはいわゆるバーチャル計算チャンネルも32個まで使用することができます。この目的のため、システムには強力な信号プロセッサが装備されており、必要な速度で計算を実行することが可能です。PMXは、このリアルタイムコアにより、すべての信号を厳しいリアルタイム条件に確実に適合させます。

計測値およびバーチャル計算チャンネル上の計算で求められた値は、すべてEthernetを経由し、最大10 kHzの速度で機械やプラントのコントローラにリアルタイム転送されます。非常に高レベルのオートメーションを使用したアプリケーションでは、故障頻度やコントローラへのシステム負荷を低減させるため、この分散型の計測技術インテリジェントが特に重要となります。

 

制御タスクの一部を引き継ぐことが可能な、こうした分散型計測システムの典型的なアプリケーションは、例えばプレス機のモニタリングなど、生産分野に見られます。具体的には、タブレットプレスやパワープレスから、自動車産業で使用されるシートメタルプレスまで、幅広い用途が考えられます。

こうしたシステムは、組み立て部門や結合部門のモニタリング用としても使用が可能です。大規模で複雑な機械やプラントでは、重要な機械パラメータを頻繁にモニタリングする必要があります。こうしたいわゆる状態監視(condition monitoring)は停止時間を最小限に抑えるために有効で、生産停止によるコストを削減させることができます。

新型のPMXのような計測システムのもう一つの従来型アプリケーションケースは、工業用テストペンチ設備のセットアップです。この用途では、複雑なコンポーネントを対象として、その最大負荷容量と実用性をテストします。この分野では、ここ数年の間に工業用Ethernetが通信媒体として注目されるようになってきました。こうした状況は、生産ラインの最終テストベンチとして最終製品の品質をチェックするための品質テストベンチでも同じです。

取得した品質データをデータベースとして保存するための記憶媒体においても、計測技術システムの通信アーキテクチャに対する要求が高まっています。

 

結 論

高レベルのオートメーションソリューションを高負荷から解放するためには、高いサンプリングレート、迅速なデータ転送、そして統合されたインテリジェンス(デジタル信号プロセッサDSPおよびCPU)が必要となります。最新の産業環境の下で使用される計測技術システムは、こうした要求に直面しています。

リアルタイム処理に対応し、データ転送量の大きな工業用Ethernetプロトコルによる通信も、ますます重要な役割を担うようになってきました。計測技術のスペシャリスト、HBMは、ここで新しいシステムPMXを市場で売り出します。このシステムは、上述したすべての要件を満たしているため、産業用計測テクノロジー分野における多種多様なタスクへの適合が可能です。