Zezelj Bridge, Novi Sad.
建設中のザグレブ橋(ノヴィサド、セルビア) 提供:Shutterstock.com

HBMの計測技術による橋の監視

472個のセンサを使用した監視ソリューションによる、橋の長期保全管理

旧ザグレブ橋(ノヴィサド、セルビア)は、ドナウ川にかかる、鉄道・道路併用のアーチ橋でした。有名な土木技術者Branko Žeželj(ブランコ・ザグレブ)氏によって1961年に建設されました。当時としてはユニークなプレストレスコンクリートを使用した構造の橋で、多くの人々が耐久性に疑問を抱いていたので、Branko氏は人々を安心させるために、橋の負荷試験の際に橋の下で自ら船を漕いだというエピソードがあります。

しかし、1999年にNATO軍の12回およぶ爆撃があり、最終的には複数回の直撃を受けて1999年4月24日に破壊されました。ノヴィサド市では最後の橋でしたが、NATO軍の「ノーブル・アンビル作戦」により破壊されました。

人、国、経済を結ぶ新しい橋

現在、新しいザグレブ橋の建設が進行中で、2017年末までには完了する予定です。そのデザインは古いアーチ橋に似ていますが、材料は鋼鉄を使用しています。橋は長さ474 mで、国際列車用の鉄道軌道2本と道路交通用の2車線、および、2つの自転車と歩行者専用レーンを持つことになります。

ここはバルカン諸国とEU間の交通の要衝なので、欧州連合(EU)は、このプロジェクトの資金調達に参加しています。


Mechanical structure of a bridge
新しい橋の機械的構造(TRCグラフィック)

最新設計の橋を効率的に監視

日常的に使用される橋の構造安全性を確保することが最も重要な課題になりますが、鉄道や車両によって大きく変動する様々な種類の負荷を監視・分析するには、非常に複雑な監視システムが必要となります。

ノヴィサド大学の土木工学部門(FTN技術科学部、ノヴィサド)はTRC PRO(テクニカルリサーチセンタ)と協力して、新しい鉄道交通橋建設の安全性を確保するためにHBMの計測技術を採用しました。

構造ヘルスモニタリング は、橋の建設中に長時間にわたり、データの監視、収集、転送および分析を行うことによって実行されます。橋の構造体の構造ヘルスモニタリングの目的は、橋の構造体の動的状態を追跡・記録するデータベースの形成です。これは、橋の安全性と性能(負荷容量、剛性、保守性、耐久性)の潜在的な劣化を防ぐために使用されます。


最重要ブリッジ区画

ブリッジの最重要区画を恒久的に観測するために、分散型のマルチチャネル構成が使用されています。

  • 応力解析試験(耐久性テスト):ミッドスパンゾーン12箇所、サポートゾーン8箇所、建設用ゾーン2箇所
  • ハンガーでの力計測:ハンガー12箇所
  • 縦方向の変位:ミッドスパンゾーン12箇所、サポートゾーン8箇所
  • 長手方向の変位:サポートゾーン4箇所
  • 傾斜:ミッドスパンゾーン12箇所、サポートゾーン9箇所
  • 加速度、周波数、減衰パラメータ:ミッドスパンゾーン12箇所、サポートゾーン9箇所
  • 橋の構造体の温度計測:ミッドスパンゾーン12箇所、サポートゾーン9箇所
Installed strain gauge on a bridge
温度補償付きひずみゲージをブリッジ構造体上に、直接、接着(TRC画像)
Protected strain gauge
保護カバーを付けたひずみゲージの計測点(TRC画像)
PMX Data Acquisition System on the bridge
新しい橋のPMX 計測・制御システムの配置場所
Bridge structure with PMX
ブリッジ構造体上のPMX監視システムの位置(赤色部分)
Construction and monitoring detail
サポートゾーンの建設と監視の詳細

センサ472個を設置

設置されたセンサとトランスジューサの合計数は472個

  • HBM ひずみゲージ (LY41シリーズ)328個を14個のセクションに配置(応力解析試験用)
  • 力センサ80個(ハンガーでの力モニタリング)
  • 4箇所の可動式サポートセクションに変位センサ(水平方向の変位)を12個
  • 2軸加速度計を搭載した2軸傾斜計(2軸傾斜と加速度測定からの垂直変位)を32個
  • 温度センサを構造セクション20箇所と橋のセンターピア・ゾーンの1セクションに1箇所
PMX Data Acquisition System
データ収集システムPMX

信頼性の高いセンサ技術

計測に使用した基本的なセンサはひずみゲージで、ブリッジの構造体に直接ゲージを接着、もしくは、力センサに内蔵した形で使用します。 ひずみゲージを使用したセンサの利点は、長期的安定性が非常に高いことです。これは重要な利点で、新しい橋の供用期間は稼働している必要があり、また、再校正のため監視を停止できないからです。

これに加えて、このアプリケーションで使用されている、HBMのひずみゲージLY 41 シリーズには、高性能な温度補償機能がついています。これは、橋が様々な天候により、大きく変動する外気温にさらされるのでの重要な機能です。

データ収集にはHBMのPMXシステムが使用されています。

センサの取り付け後は、計測ポイントの損傷と電磁干渉(EMI)を防止するために保護カバーを設置します。

調整は計測点に直接、実施可能

計測・データ収集・制御システムの特長:高速で信頼性の高い計測値、簡単な設定、リアルタイム演算、診断情報、追加のソフトウェア設置が不要、高いコストパフォーマンス。 上記のすべてがPMX計測制御システムで実現できます。

塵埃やEMIに対する保護対策として、PMXデータ収集ユニットをキャビネット内に搭載しています。これは、電源を含んでおりコストパフォーマンスの高い設定になっています。

システムの初期設定では、すべての信号が19.2 kHzで計測され、高い帯域幅での計測と評価が保証されています。PMXシステムのすべての調整は、標準のEthernetインターフェイスと内蔵のPMXウェブサーバで処理されます。

このソリューションの大きな利点:システムの調整は設置場所で直接行うことができます。あるいは、Ethernetネットワークを介して制御室から、またはWiFiが利用可能な場合、携帯端末から行えます。これにより、様々な場所からアプリケーションの状態や試験の進行状況をリアルタイムで観察できます。また、使用者管理機能により権限のない人員による誤操作を防止しています。

PMX mounted in a cabinet
橋の構造体に設置されたPMX監視システムの制御盤(TRC画像)
Screenshot of the PMX webserver
PMXウェブサーバの画面に表示された計測信号、演算信号、I/O信号

データストレージ

データトレージに必要な要件:長期的な監視のために、PMXシステムからの全データは、橋に設置されたEthernetネットワークを介して、データサーバに送信され、評価と制御が行われます。しかし、バックアップとして、各PMXは内蔵のデータロガーにタイムスタンプ付きのデータを記録しています。計測データはEthernet ネットワークの中断により失われることはありません。データ送信が中断した場合は、ネットワークの再確立後、データは各PMXからデータサーバに転送することができます。

状態監視ネットワークの構築

PMXの監視システムは橋全体を対象にしており、その配線距離の合計は約500 mに及びます。しかし、真に価値のある計測結果を得るためには、各PMXシステムのサンプルレートと各計測チャネルが同期している必要があります。そのため、各PMXシステムには、同期オプションが提供されています。

しかし、ネットワーク内のすべてのPMXにタイムスタンプを送信するには、NTPサーバが統合されている必要があります。

このプロジェクトで使用されているデータ収集ソフトウェアは、データ画面表示、記録、イベントの監視が行える、強力なHBM catmanです。このソフトウェアには、すべてのPMXシステムを同期化するNTPタイムサーバも含まれています。システム設定後には、同期のタイミングは数ミリ秒の範囲内になります。

PMXスマート機能による強力なリアルタイム演算

次のステップでは、必要に応じて、関連する情報がリアルタイムで計算されます。これは、PMXのスマート機能を使用すれば、高度なソフトウェア技能がなくてもオペレータが簡単に実行できます。スマート機能には、ポケット電卓、論理関数、プロセスの評価からPID制御までの数学的機能が含まれています

PMX監視システムによるリアルタイム診断

より専門的な診断データの詳細は、PMXのログファイルに保存されています。このファイルは、 PMXの内部メモリに記録されています。この記録には、デバイスと計測に関連して発生したすべてのエラーとオペレータが行ったパラメータの変更が記載されており、試験作業の全体と計測プロセスの100 %をカバーしています。

データの収集と評価

エンジニアが指定したシステム要件には、簡単に使用できること、堅牢で強力なDAQ機能、革新的ソフトウェアが要求されています。「HBMのPMXが収集したデータの処理用サブシステム(データ取得、転送、データ処理用の多目的コンピュータシステム)は、HBM catman内のデータ表示用にカスタム開発されたユーザーフレンドリーなHBMソフトウェアを使用しています」とTRC PRO社のHotimir Licen氏は述べています。

catmanにより、完全なデータの記録と画面表示(視覚化)を実現することができます。別の種類のグラフィカル・ユーザ・パネルやデータロガーを設定して監視タスクを実行できます。さらに、イベント監視のシステムがイーメールを発信したり、携帯電話へモバイルプッシュ通知をしたりできます。これにより、監視システムから緊急情報を受け取った橋の管理者は、橋の交通量を調整して橋の負荷を軽減するために、適切に交通信号を制御することができます。

Data logging with PMX
PMXによるデータ収集

「PMXウェブサーバは、パラメータ設定、機器設定、および制御に非常に有用なツールであることがわかりました。PC 、タブレット、スマートフォンでは、標準のWebブラウザを使用することができ、追加のソフトウェアは不要です。さらに、このシステムは橋の全域に対して恒久的にリアルタイムで使用可能です」

TRC PRO社のHotimir Licen氏

予算内で優れた結果を達成

構造ヘルスモニタリング用の予算は限られていましたが、PMXプラットフォームはコストパフォーマンスの高いソリューションとして選択されました。TRC PRO社のHotimir Licen氏によれば、次のような利点があります

  • 高精度と高解像度
  • スタティックおよびダイナミックの両方のデータを計測
  • ひずみゲージと誘導ブリッジセンサの両方が使用できる汎用システム
  • 2ゲージ式構成の各チャンネルに対して、ハードウェアによる温度補償を使用して応力解析
  • Ethernetインターフェイスを使用した分散型システム
  • NTP時間同期による全チャンネルの同期計測
  • PMXシステムのUSBディスクを使用したスタンドアロン操作、および、HBM catmanソフトウェアを使用したPCからのリモートアクセスが可能