鍛造・鍛圧/プレスモニタリング成功事例:プレス機のフェイルセーフ監視と効率化を推進する最新型計測技術 鍛造・鍛圧/プレスモニタリング成功事例:プレス機のフェイルセーフ監視と効率化を推進する最新型計測技術 | HBM

プレス機メーカーは、技術的な課題やコスト増に直面しています。顧客の多くは、プレス機のさらなる高速化と高度化を求めています。プレス機の改良には、検査・計測用機器の活用が鍵になります。例えば、非常にコンパクトで高精度のフォースシャント計測法を使用 したり、高機能の計測用電子機器を適所に導入したりするなどして、力を正確に計測することは極めて重要です。これにより、既存設備を簡単で投資効率の高い方法で改良できます。

プレス機の出力精度が高まるほど、成型部品の品質は向上します。プレス機の精度の向上は、プレス機メーカーにとって最重要課題の一つです。さらに、市場では、より高速高い処理能力を備え、既存システムの生産量を増やすことのできるプレス機が求められています。最先端の検査・計測ソリューションは、プレス機のさらなる高速化、効率化、高性能化を実現します。

検査・計測用機器を効果的に使用するためには、次の3つの要素が重要になります:

  • プレス機内における信頼できる正確な力の計測
  • 各種の産業イーサネット規格に迅速かつ簡単接続できる高機能の計測用電子機器の使用
  • 複合的なプロセスのモニタリングを制御する専門の計測ソフトウェア

近代的な工業生産には、多様な設計のプレス機の存在が不可欠です。プレス機は、例えば硬貨の打刻、自動車部品や日用品の組立プレス、自動車産業における大型金属部品用プレス等の用途に使用されています。

プレス機のサイズと使用条件は多岐に渡りますが、プレス加工中のプレス力、ストローク数、及び製造される製品の品質は、常に主要な特性値(パラメータ)として使用されます。

最新型のプレス機では、プレス用の電子制御システムが、こうした機械パラメータを取得・監視するようになっています。また同時に、不具合のあるコンポーネントを特定して排除し、さらに、プロセス効率の重要な指標である生産時間とダウンタイムを記録します。

信頼できるプレス力計測

一般的には、力や機械的変位量を計測して、プレス工程を監視します。 力のモニタには、2つの方式があります。

  • 力の直接計測  (力のフローを直接計測)
  • 力のシャント計測   (ひずみセンサを使用)

どちらの方式でも、プレス力が迅速かつ正確に計測され、適切な増幅回路を使用してプレス制御システムにフィードバックされることが不可欠です。センサとアンプ部分は特に耐久性とプレス機上での信頼性において、特に高い性能が要求されます。また、計測器の選択に関しては、既存の機器に容易に後付で組込み一体化できるシステムであることが、非常に重要な点になります。

両方式とも特定の長所と短所があります。一般的に、力の変動フローの中で力を直接測る方式は、センサである力変換器(フォース・トランスデューサ)がプレス機の一部になっているので、そのセンサの存在自体がプレス機の特性に大きな影響を与えることに注意しなければなりません。

特に巨大な力の領域に関しては、力センサに十分に高い定格力の物を使用する必要があります。そのようなセンサは非常に重いうえに、高価格になります。HBMの力センサは工場出荷時に検定・調整されているので、顧客の機器に組み込んだ後でキャリブレーションをする必要がありません。組み込み後、力(N)が直接計測できます。

 U5フランジタイプの力センサ。頭上取り付けが可能なフランジタイプなので特に使いやすくなっています。定格力は最大500kNまで可能です。引張力と圧縮力の両方が計測できます。

ひずみセンサが以下の原理に基づき、代替えとして使用されることがあります: すべてのプレス機はプレスをする工程の間、機械的に何らかのストレスを構造体に受けます。これが小さくて、目に見えないぐらいのひずみを起こします。HBM社のひずみセンサSLB700Aは、最終的にはプレス力に比例しているひずみ量を計測します。この方式の長所は、プレス力に関係なく同じセンサが使用できることです。ひずみセンサを使用した計測は、特に高性能プレス機向けには、経済的な代替方式です。力センサで可能な高い計測精度は実現できませんが、HBMのひずみセンサは、通常のプレス機アプリケーションには十分な性能を持っています。このセンサは加えられた力の大きさと出力信号の相関関係を決定するキャリブレーションが必要です。

ひずみゲージと圧電技術: どちらの測定原理が適しているか?

HBMはピエゾ式ひずみセンサCST/300と通常のストレインゲージ(SG)式を使用したひずみセンサSLB700Aを提供しています。両センサタイプはともに数多くのアプリケーションに使用できます。圧電式(ピエゾ式)は非常に小型で高感度なので、非常に小さなひずみ量計測にも適していて、特に非常に硬い被計測物に適しています。さらに、センサ取付けがネジ1本だけで済む特徴があります。

通常のストレインゲージ(SG)技術をベースにした、ひずみセンサは、アンプ回路を組み込んだ形で提供されています。特にコスト効率が高いソリューションを求める場合は、このタイプがお勧めです。さらにSGセンサはドリフトがないので、監視業務が容易になります。またプレス機の恒久的ひずみの監視も可能です。ひずみセンサ曲げモーメントがスマートワイヤリングにより補正されるので、より良い計測度が小さな工夫で達成できます。

曲げモーメントの補正にひずみセンサを使用

通常のストレインゲージ技術をベースにした、ひずみセンサは、計測部分が対称である場合、曲げモーメントによる誤差を簡単に補正することができます。これは、下図に示すように、被計測物を中心に対称となる位置に2つのセンサを設置して、曲りが1つのセンサには正の負荷になり、反対側のセンサには負の負荷になるようにします。これらの出力を並列に接続すると出力の合計が”ゼロ”になります。このようにして、両センサにかかる同方向のひずみが、誤差なく計測できます。プレス機のアプリケーションに関しては、この補正により、引張と圧縮によるひずみのみが計測できるようになります。

薄型で、一定の感度を持つ複数のセンサが技術的前提条件となります。このため、HBMのひずみセンサは特別な手順で、感度が一定になるように調整されています。 さらに、並列に接続するために、出力抵抗にバランスがとられています。ブリッジ抵抗の700Ωが使用されており、抵抗の合計が低くなるのが原因で、ブリッジ増幅器に過負荷がかからないようしています。4つのセンサが並列に接続されても175Ωになります。新型の増幅器により、力やひずみの信号を単独で使用した場合や、また並列に接続して使用した場合でも共に、正しい計測と処理が行えます。

対称な部分に設置されたひずみセンサSLB700。この図の場合、曲りが生じると、各SLB700には同じ絶対値のひずみが感知されますが、正反対の符号となります。この場合、センサが電気的に並列に接続されると、出力がゼロになります。計測の中の曲りによる影響が補正され、引張や圧縮方向のひずみのみが計測されます。

すでに述べたように、ひずみを力に変換するためには、キャリブレーションが必要になります。キャリブレーションの手順としては、少なくとも2か所の負荷ポイントで、ひずみと力が計測される必要あります。 例えば、力ゼロと最大値の2ヶ所。しかし、力の最大値で測る必要は必ずしもありません。例えば、最大値の半分のポイントで計測することが、特に精度の要求が低い場合は可能です。

手順は以下のようになります:

  • 力がゼロのときのひずみ出力信号を計測。アンプは増幅なしにセットする
  • 出力信号の表示はmV/Vとなる
  • キャリブレーションに使用する負荷を加えたときのひずみ出力信号を計測。この時も計測はmV/V単位で行う

これで計測チェーンの計測感度が簡単に計算できます:

S = (既知の負荷時のひずみ出力 - 力ゼロでの出力) / (既知の負荷 – 力ゼロ)

ピエゾ式センサでは単位にpC/N が使用され、SGタイプのひずみセンサには mV/V/Nが使用されます。

多くの場合、SG計測技術では、特定のひずみでの感度が装置のスケール値として使用できます。つまり、既知の定格力でのセンサ出力信号だけが必要です。この力の値と出力信号のセットを機器に直接入力できます。多くの装置において、上で述べた4つの値をテーブル上に配置するだけになっています:

力 = 0 N       信号= xy mV/V

力 = 計測した力       信号 = AB mV/V

これでアンプ(増幅回路)が設定を実施します。スケーリングは後の段階で行われます。この"ティーチイン" プロセスは自動キャリブレーションが可能な新型アンプに装備されています。

以下の点が重要ポイントです:

  • 必ず検証する事を,お勧めしています。システムに再び負荷をかけ、表示される値を比較してください
  • キャリブレーション前に、最大負荷を3回かけて、センサの安定度を確認してください
  • 最適な精度を達成するためには、キャリブレーションに使用するフォース(力)は、実際の計測に使用する大きさの力を使用するのが理想です

電子機器内蔵型と、計測データの前処理機能付きスマートデータ収集システムのどちらを選ぶべきか?

ひずみセンサに電子回路を組み込んだタイプが基本的なプレス監視作業用に使用できます。このタイプは、電流出力信号(4 … 20 mA)や電圧出力信号(0 … 10 V)を非常に高いバンド幅(2 kHz, -3 dB)で出すことができます。この信号を受けて、下流のプレス制御システムが信号のコンディショニングや計測信号の処理を行います。この処理は、実際のプレス制御の前段階で行う追加の業務となります。

増幅処理は上で述べた方式で調整されます: まずゼロフォースで計測し、次に最大フォース値で計測します。この2点での電圧がSLBへの制御入力となります。 増幅量は自動的に調整されて、フォース= 0 が1Vで最大フォースが9Vとなります。フルスケールを1~9V の出力信号とすることが推奨されています。これにより、ゼロポイント以下や"ティーチイン"による最大フォース以上の計測値が生じたときに対応できるようになっています。実際の出力可能範囲は0~10Vなので、センサは計測範囲に10% の余裕度を持つことになります。

電子回路を組み込んだ従来のセンサに比べ、この増幅回路は最大レンジでの出力が、プレス機でのひずみ量に関係なく、常に確保されています。これは計測値が小さい場合でも、精度が落ちないという大きな特徴となっています。

"ティーチイン"は制御パルスにより開始するので、自動化できます。これとは関係なく、計測ポイントはゼロにセットできます。 増幅回路の設定は停電があっても保持されます。

最新のプレス機モニタリングシステムへの要求の増大

プレス機のオペレーターからの要求は、近年、ますます厳しくなってきています。コスト削減だけでなく、品質向上や生産性向上が重視されるようになっています。一方では、機器の寿命延長や保守頻度の減少が求められています。これらの要求を満たす、唯一のソリューションは、力、変位、回転角などのアンプとして使用できる、新型のPMX計測アンプシステムです。 このアンプシステムは業界基準の要求をはるかに上回る、耐ノイズ性能がPMXを象徴する特長となっています。このシステムはデータの前処理を行い、プレス制御システム下流の負荷を軽減して、システム信頼性の向上やダウンタイムの最小化に貢献します。また、PMXには、優れた汎用性があり、プレス機の規模やセンサのタイプや数に応じて、適切な数の計測モジュールを装備できます。さらに、信号出力カードを自由に追加できます。投資額が抑えられるうえ、故障の際などは交換が簡単にできます。工業用アンプPMXシリーズは、これらの要求を完璧に満たす次世代のシステムです。

ノイズ耐性の改善による計測値の信頼性向上

 

このアンプシステムはプレス工程監視の要求の変化に応じて、自由にアップグレードできます。一番簡単で明確な例では、最上級の信頼性をもつPX455搬送波周波数アンプモジュールをひずみの計測に使用します。搬送波周波数計測では、計測信号が19.2 kHzでサンプルされ、搬送波周波数に変調され、増幅後に復調されます。この方式により、計測バンド幅の2kHz が可能になり、同時に、大型電気モーターや周波数変換器からのハムノイズや干渉ノイズなどからの計測信号への悪影響を排除します。これにより、機器の寿命が大きく伸びることになります。

 

データ処理機能はどこまで高度化する必要があるか

PMXアンプの内部計算チャンネルは1chあたり19.2 kHzのサンプリングレートなので、プレス機からのすべての計測信号を迅速に取得し処理することができます。この高速サンプリングレートにより、力のピーク値を最高50µ/sの、高い信頼性で取得することができます。また内部計算チャンネルはマルチコラムのプレス機のトータルフォースやディファレンシャルフォースをリアルタイムで取得できるので、機器制御システムによりダイクッションやプレス機の状態や品質を監視することができます。

プレス機の予防的診断

プレス力のピーク値の取得に加え、警報リミット値を監視できます。これにより、プレス機により加えられている力が許容値を超えつつあるのか、あるいはプレス機の損傷を防ぐためにシステムを停止するレベルなのかを、事前に検知できます。全ての計算処理されたPMXの信号と同様に、これらの値はリアルタイムで(50msec 間隔) で処理されます。緊急のシャットダウンを正しいタイミングで行うためには必須の機能です。さらには、プレス機の予防診断のメソッドがあります。これは振動を計測するために加速度センサをプレス機に設置します。 振動は機械部品を支えているベアリングのクリアランスにより生じます。特定のリミット以内であれば問題ありませんが、振動が過剰に高い場合はベアリングの損傷の可能性があり、検知されます。ここでも高速アンプモジュールが使用できるのでPMXアンプが使用され、リミット値の検出や分析を行います。同様に、プレス機の各部の温度やクーリングシステムの温度に対しても応用できます。

HBMは高品位データ取得向けにcatmanソフトウェアを提供しています。PMXはイーサネットシステムへの接続が可能で、Windows PCなどに接続できます。全ての計測値や装置からの信号を記録するのに使用します。これらの記録は保存されバックアップとして使用されます。可視化ツールにより、広範で詳細なオプションがプレス信号の表示や分析に、設定の段階から使用できます。このソフトはまた障害が検知されたときにのみ計測を開始して保存する機能をもっています。

選択する自動化の形態は?

PMX演算カーネルではすべての信号がリアルタイムで使用できます。ここからプレス機の制御システムへ出力されます。たとえば、アナログ出力では、PX787出力モジュールが +/- 10V 電圧出力を出します。PX878出力モジュールは高速デジタル出力の機能を持ち、1ミリ秒以内で信号を送ったり、リミット値を転送したりできます。しかしながら、近代的なプレス機制御システムはプログラマブルロジックコントローラ(PLC)を装備していることが多く、信号は標準化されたフィールドバスにより送信されます。PLCは2つの大きな長所があります。

まず、バスケーブル1本だけなので、配線が大きく簡略化する。次には、診断データが計測信号に加えて、PMXアンプからプレス機制御システムに送信できるので、迅速で、予防的な装置の管理が可能になります。さらなる利点としては、パラメータが1000個までPMX内に保存でき随時使用できる点です。これにより、プレス機は品種替えを、全く時間のロスなく行えます。

インテリジェントサービスとメンテナンスのコンセプト

PMXは診断や保守管理に関して、マルチな機能を持っています。第一に、すべてのセンサの信号と装置の内部部品は常に信頼性チェックを行っています。これにより、センサの故障、断線、プレス制御システム内のデバイス障害に関し直接検知し警報を流すことができます。 リミット値や許容バンド値をPMX内に設定することにより、以前に機器が損傷したり破損したりしたトレンド値と比較して、余裕度を確認したり報告したりできます。故障の場合は、まず正常にPMXが生きているか(Live-Bit)を確認できるので、迅速に機器の故障診断が開始できます。また、PMXはいくつかのアナログ出力経由で力の信号を同時に出力できます。現場の修理担当者は手持ちの計測器で信号が正しく来ているか判定できます。これを利用して、制御システムにリミット値を追加できます。

さらに、PMXはインテリジェントな保守機能を持っています。内部のウエブサーバー経由で装置のパラメータ表示や可視化にくわえて、標準のイーサネットTCP-IPプロトコルを送信に使用しているので、機器や社内のネットワーク経由でデータを送信できます。また、ファイヤウオールやSNMPプロトコルによるアクセスなどの、安全対策ができている場合は、海外からのリモートメインテナンスですら可能です。
3階層のユーザー認証管理により、PMXでは、それぞれの階層に適した権限の範囲内でデータを見たり設定を変更したりできます。問題が起きた場合、システム運用者は、本部からの費用のかかるサービスが必要なのか、現場レベルで処置できるのかを判断できます。

既存のプラントをプレス機の制御システムで改良できるか?

一般的には、すべてのプレス機に、後付でHBMの新型監視システムが取り付けられます。特に、アップグレードや改造は経済環境が悪い時には意味のある選択です。これにより、生産する製品の品質が向上するだけでなく、プレス機の寿命が大きく伸びます。設置場所はプレス機の設計により異なります、また使用する計測データの重要性により決定します。HBMのサービスエンジニアは、プレス機にひずみゲージや高規格のひずみセンサをシステムとして設置することに熟練しています。

まとめ

検査・計測機器を使用した最新のモニタリングシステムのプレス機への導入は、プレス機の精度ならびに生産能力の向上に大きく貢献します。例えば、力のフロー内に直接設置する力センサや、間接的なフォースシャント計測用のひずみセンサなどにより、プレス機の力を正確に計測することが極めて重要です。

また、最新のプレス機モニタリングシステムにおいては、最先端の計測データ収集システムの使用により、一般的な産業イーサネット規格や機械制御システムに簡単に接続できる便利な機能を搭載することも重要です。HBMは、プレス機モニタリングで使用するセンサならびに電子機器のソリューションを提供します。世界中のトップメーカーがHBMの検査・計測用機器に信頼を置き、プレス機の性能と運用上の即用性を向上させています。

著者
Michael Guckes / Thomas Kleckers