プリント回路基板(PCB)のひずみ速度の計測方法

1. PCBひずみ計測を行う理由

私たちの日々の生活は、車、スマートフォン、飛行機など無数の装置に組み込まれた電子部品に依存しています。これらの製品の多くは、プリント回路基板(PCB)が使用されています。複雑な電子機器や電気システムの信頼性が高いのは、経験豊富な設計と徹底した試験の結果です。

PCBは、製造プロセス中だけでなく、輸送や使用中(例えば、変形、誤用、振動、衝撃、熱暴露)に機械的影響や熱影響を受けます。

PCBの製造中に、以下のような不具合や負荷が発生することがあります。

  • コネクタ、電源レール、冷却プレート、コンタクトピン、はんだ接続、またはバッテリホルダなどの取り付けによる曲げ方向のひずみ
  • 表面実装型デバイス(SMD)、表面実装型技術(SMT)、スルーホールデバイス(THD)、スルーホール(THT)、ピンインホール(PIH)などの実装時に起こる破損
  • ボールグリッドアレイ(BGA)のはんだ接続箇所の応力による亀裂および破断
  • 着脱中に起こる過渡的なひずみのピーク(着脱中の臨界ひずみ/せん断ひずみの計測)
  • ハウジングへの挿入、ねじ締め、圧入によって生じる機械的負荷(ひずみ)の増加
  • 製造中の高い曲げ応力によって発生するSMDコンデンサの破壊
  • ICTテスト中に、過剰な力をテストプローブから受けた場合

 

搬送や機器運転の際にも、次のような影響が故障につながる可能性があります:

  • 機械負荷(静的)
  • 振動と衝撃(動的)
  • 熱膨張(ハウジング、ヒートシンク、プリント基板、電子部品のα値が異なるためにおこる)に起因するクラックの原因となる熱影響

これらすべては、コンポーネントの重大な故障につながります。PCBの系統的な故障の検出が遅いと、検出遅延に応じた増加コストは莫大になります。10のルール(rule of 10) によれば、新製品の系統的故障の検出が遅れると、欠陥の単位当たりのコストが10倍になります。

2. PCBテストに関する要件と国際基準の拡張

開発の初期段階でシステム障害を検出することが絶対不可欠であるという認識に基づいて、OEMメーカーは部品供給者にPCBの機械的品質の確認を要求するようになっています。

PCBの利用率は、過去数年間で次のような理由により増加しました:

  • 鉛フリーはんだ(RoHS適合、EUガイドライン)の使用により機械的負荷に対して弱くなり、従来より壊れやすくなったこと(曲げによる損傷)
  • 表面実装型デバイス(SMD)に代えて、ボール・グリッド・アレイ(BGA)など、よりコンパクトな部品を採用したこと
  • 部品配線の電気的接点結合力が強化されたことで、機械的張力が増加したこと

IPC(Association Connecting Electronics Industries)やJEDEC(Joint Electron Device Engineering Council)-9704などの国際協会が設立され、PCBのひずみ計測を、どこでどのように実施する必要があるかを定義するガイドラインが提供されています。

組立におけるすべての手順を確実に実施するため、多くの企業が独自のテスト手順を作成し、関連するすべてのケースをカバーするPCBのテスト手順を開発しています。

3. PCBのひずみを計測する方法

FEAなどのシミュレーションは、数値的モデルに基づいているため、その範囲が限られています。したがって、基板上のひずみ挙動を実測するには、PCBの物理的なテストが必要です。

CTやX線などの試験方法は、機械的衝撃の影響を確認するのに十分ではなく、その上に費用が高くなります。ひずみ値は、PCBの機械的変形を計測する唯一の信頼できる値です。

ひずみゲージは、PCBの変形を極めて正確に計測するように指定できます。しかしPCBは通常寸法が小さく、利用可能な限られたスペースにひずみゲージを設置することが課題となります。

HBMは様々な用途のために、2000種類以上の異なるひずみゲージを提供しており、その中にPCBひずみ計測用の特殊ひずみゲージがあります。

 

例えば 3層グリッドの小型ロゼットRF91 は小型部品のひずみを計測できる優れた製品です。このゲージはさまざまな形式で利用できます。主ひずみの方向が不明であるため、3グリッド式ロゼットがPCBひずみ計測アプリケーションに使用されます。

RF91には2種類のバージョンがあります:

  • リード線付き
  • はんだパッド付き(リード線なし)

直径がわずか5mmなので、PCBに簡単に取り付けることができます。RY31-3/120(直径6.9mm)などもPCBテストに使用できます。

HBMの小型ロゼットRF91の主な特長

  • 計測対象が小さいアプリケーションでは直径5 mmのゲージを使用
  • 抵抗値120Ω
  • 常時在庫
  • 主応力方向が不明の場合、2軸応力状態を計測
  • 3層構造の計測グリッド
  • オーステナイト鋼、フェライト鋼、アルミニウムに対して温度補償
  • 配線(0.5 m)付き、または、はんだパッド付き
  • ひずみゲージへのはんだ付け不用
  • 2、3、および4線構成で使用可能
  • 絶縁塗装された銅線(色分あり)

4. PCBのひずみ計測箇所

PCBの応力状態は、ほとんど知られておらず機械的に複雑です。ひずみはPCB基板の変形をもたらします。基板の変形は、正確な解析が可能なシャフトの変形やねじれといった旧来のモデルには従いません。

さらに、組み立てられたPCBには、はんだ付けなどの方法で接続された部品も多く含んでいます。これは、PCBがその材料特性において異成る要素から構成されていることを意味します。

PCBのひずみ特性や挙動に従って、PCBの各部をチェックすることは、コスト・時間の面から現実的でなく有効でもありません。

したがって、PCBの計測は、次のような障害の危険性が特に高いと推定される領域で行われます。

  • 端部

   基板の固定に使用される基板端部は、機械的に重要な箇所になります。

  • 基板の堅い領域 (例えば、コンデンサに近い領域 )

   大きな部品はPCBの剛性を高めます。

  • 相互接続に近い領域(はんだ接合不良)

   はんだ接続箇所は降伏強度の点で弱点となります。

5. PCBに小型ロゼットRF91を設置する方法(簡単ステップガイド)

  • 最初のステップは、箔ひずみゲージの設置のためにPCB表面を加工する必要があります。まず、均一な表面が必要です。箔ひずみゲージの設置場所を作るために、PCBの部品の一部を外す必要があります。電子部品を外し、フライスカッターを使用することにより、表面を加工できます。PCBのペイント層を取り除くには、表面のフライス加工が必要です。 (注意:部品の取り外しは、PCBの剛性に影響を与えます。)
  • 次のステップでは、PCBの表面を清掃する必要があります。ひずみゲージを接着する前に必ず接着面を清掃してください!
  • 強力な溶剤は使用しないでください。そのような溶媒は、PCB材に負荷を生じさせる可能性があります。
  • ひずみゲージを設置する場所に、HBMのZ70低温硬化型コールドキュアリング接着剤を1滴滴下してください。
  • 指定された場所にRF91を取り付けます。
  • テフロンシートを使用して、ひずみゲージとPCBのみが接着されていることを確認します。
  • ロゼットに小さい均一な圧力を加えて約1分間PCBに密着させます。
  • その後、テフロンシートを取り外します。
  • ひずみリリーフを計測ワイヤに取り付けます。ひずみゲージがケーブル自体から力を受けないように分離されていることを確認してください。ひずみリリーフの設定には、さまざまなオプションを使用できます。
    1. 計測ケーブルによるひずみリリーフ

    2. はんだパッドによるひずみリリーフ

       
  • 最後に、ひずみゲージの取り付け(抵抗と絶縁)の品質を確認します。   

小型ロゼットRF91をQuantumX MX1615Bに接続する方法

  • QuantumX MX1615BはHBMの標準DAQシステムで、ひずみゲージアプリケーションに特化しています。

  • プッシュイン端子により、DAQに簡単に接続できます。

  • RF91は、3層グリッドのロゼットです。各グリッドに対して、1ゲージ式ブリッジチャンネルが1個必要です。RF91による計測を行うには合計3チャンネルが必要です。

QuantumX MX1615Bについての重要ポイント

  • ブリッジ入力、PT100/RTD、電圧、ポテンショメータを16個の独立24ビットADCに配置可能
  • 最大ノイズ抑制用のDCまたは搬送周波数(CF)
  • 内部抵抗120Ωおよび1ゲージ式ブリッジの完了抵抗350Ω
  • 4ゲージ式ブリッジ用6線式技術
  • 2ゲージ式ブリッジ用5線式技術
  • 1ゲージ式ひずみゲージ用の3線式および4線式技術
  • データレート 20kS/秒、帯域幅 3kHz
  • 電気的に絶縁(チャンネル/チャンネル、チャンネル/電源、チャンネル/ネットワーク間)

6. catmanを使用した、ひずみ(速度)計測の設定方法

  • HBMデータ収集ソフトウェアcatman APを使用すると、PCBボードのひずみ計測を簡単に設定できます。データを迅速かつ容易に画面表示できる点が、catmanの特長の1つです。データの記録は、トリガまたは特別な時点を使用して実行できます。
  • 小型ロゼットRF91の3つの計測グリッドは、最大および最小主ひずみ(速度)および対応する角度の計算を行えます。
  • catmanの最新バージョンは、ひずみ速度計測もサポートしています(時間軸に対して変化するひずみの計測)。
  • 次のステップでは、catmanでのひずみ速度計測の設定方法を示します。

catman AP DAQソフトウェアの重要ポイント

  • データ収集および解析ソフトウェア
  • 簡単で迅速な計測結果
  • 自動テスト手順
  • 耐久性試験(レインフロー解析)
  • チャンネルは、モジュール式、フリー設定、スケーラブル
  • リアルタイム処理およびポスト処理
  • ロゼット計算の演算
  • レポート生成
  • データのエクスポート
  • ひずみ速度計測
  • catmanソフトウェアを開き、ひずみゲージの関連チャンネルを確認します。緑のランプは、チャンネルが検出され、計測の準備ができていることを示します。この例では、ロゼットの3つのグリッドがチャンネル1、2、3に接続されています。
  • センサデータベースを使用して、チャンネルをセンサに割り当てます。この場合、3本の120Ωひずみゲージを3つのアクティブな、各ひずみチャンネルにドラッグアンドドロップします。

ここで、センサの仕様を設定する必要があります。各HBMひずみゲージパッケージのデータシートに表示されているkファクタを使用して、正しいパラメータを設定してください。印加電圧、ブリッジ係数、計測レンジを入力します。また、温度変動による材質プロパティの影響を正しく処理するには、温度補償演算式を使用してください。

  • 計測を開始する前にサンプリングレートとフィルタを正しく設定してください。
  • [Create new sensor(新しいセンサを作成)]をクリックし、[Update in sensor data base(センサデータベースで更新)]を有効にして、データベースにパラメータを保存します。
  • すべてのチャンネルを選択し、ロゼットゲージのチャンネルオフセットをゼロにします。
  • ゼロに設定されたひずみチャンネルが現れます。

  • ここで、ロゼット計算チャンネルをセットアップします。新しいチャンネルを作成する必要があり、catmanによりロゼットの任意の演算式を容易に作成できます。
  • a、b、cに3つのチャンネルをすべて追加し、ゲージの材料特性と横感度を定義します。適切なロゼットタイプ(3グリッドロゼットの場合は0/45または60/120)を選択します。
  • 関連するひずみ(主ひずみ、せん断ひずみ)を選択します。
  • 最後に[Create calculation(計算を作成)]をクリックします。演算チャンネルがチャンネルリストに表示されます。
  • 名前を設定して[Apply changes(変更を適用)]をクリックします。
  • ひずみ速度のチャンネルは、「computation channel(演算チャンネル)」リストの最後に表示されます。
  • 「Visualization(可視化)」に行き、独自のGUIを構成します。

7. 用語説明

  • BGA :ボール・グリッド・アレイ
  • FEA :有限要素解析
  • ICT :インサーキットテスト
  • JEDEC :Joint Electron Device Engineering Council
  • PCB :プリント回路基板
  • SMT :表面実装技術

法的免責事項:このテックノートは関連課題の概要を提供するもので、改良のため頻繁に変更されます。HBMは説明の正確性および/または完全性について一切の責任を負わず、当社はいつでも予告なしに機能や説明を変更する権利を有します。

HBMへのお問合せ HBMやHBMの製品について「もっと詳しく知りたい」、「わからないことがある」、「こんな製品を探している」などございましたら、お気軽に下記お問合せフォームでご連絡ください。