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ハイブリッド計測で風力発電所を効率監視-これからの発電所を支える統合型のモニタリング手法

風力発電のコスト低減にむけたプレッシャーはますます高まっています。このため、設備のメーカーや管理者にとって、ブレード(回転翼)、エンジン室、タワー、基底部などの負荷を計測し総合的に分析をおこなう構造ヘルスモニタリングシステムは、いまや標準規格になりつつあります。トレンドは明確に発電所全体をモニタする総合システムの採用に向かっています。新型ハイブリッド計測技術システムが、新しいオプションを提供します。これは「光学式」と「電気式」の良いところを組み合せた計測技術です。

いまや世界合計で、450 GWにもなっている風力発電はもはやかけ出しの技術ではありません。しかし風力発電の現在の発電形式は、まだ成長段階にあり技術的・商業的側面で多くの課題が残されています。そのうちの一つが、風力発電所の耐用年数です。この点に関しては、過去の実績データが欠けています。

例えば、海上の風力発電は、強い物理的な力やねじりモーメントなどの影響にさらされます。風力発電所から可能な限り高い利益を生み出す上で、風力発電所の経営者、投資家、開発者が必然的に持つ疑問点は:

  • 風力発電所の耐用年数を見積もる方法
  • 停止時間を減少させて、出力を最大にするために、保守作業と交換部品の管理を最適化する手段
  • 風力発電所の現在の状態をオペレータに確実に連絡する効率的な方法

構造ヘルスモニタリングシステム(SHM:構造健全性監視システム)を使用した現代の計測技術は、これらの疑問点を解析して、以前に比べはるかに意味のあるデータを提供できるようになりました。

このモニタリングシステムは未来について予言できませんが、「計測可能」であれば「予測可能」となります。

構造ヘルスモニタリングシステム(SHM)を風力発電所に設置する際はどんな点に注意すべきか? この点に関しては、技術や製品の選定に関していろいろな対策を考えることができますが、このシステムを設置する際には、副次的な問題であるべきです。より重要な観点は、SHMは風力発電所を最適な効率で運用するために、適切なデータを本当に提供できるのかという点です。

全体的視野から分析

従来型の手法では、構造ヘルスモニタリングシステムは風力発電所の駆動部分で使用されます。これは最初のステップとしては論理的な方法です。しかし、かなりのトルクと負荷が、風力発電所の中心であるこの領域に集中しているので、その解析は非常に慎重に行う必要があります。

したがって、多くの風力発電所の関係者は、このアプローチは、それほど有効ではないことにきづいています。代わりに、発電所の全体像を把握することをめざしています。つまり、安定性の検証、厳しい気象状況(嵐などの)後の状況把握、残存する耐用年数の見積りなどのためにデータ取得を行います。

しかしながら、これらの課題は、ドライブトレインで計測するだけでは解決できません。計測システムの対象範囲を拡大して、風力発電所のタワー、基底部、ブレードなどをモニターする必要があります。

導入コストは、ダウンタイムの減少により早期に償還

発電コストへの強い改善要求を考えると、経済性追求の観点から設備全体を解析することが増々緊急の課題になっています。競争力を保つためには、風力発電所の製造コストを常に下げていく必要があります。これは必然的に使用する資材コストの減少を伴います。しかし、建造コストが最適化されればされるほど、風力発電所の状態に関する最新データがより重要になります。例えば、大惨事につながるタワーや基底部分のひび割れなどを事前に防ぐために必要です。

全体を監視するSHMの導入コストは、問題が初期段階で修復費が低い時に問題を認識できるので、償却が容易です。この導入により、修復を計画的に行い、ダウンタイムを最小化できます。言い換えれば、そんなに大きくないSHMシステムの導入コストは、ダウンタイムの減少により、すぐに元をとることができます。

構造ヘルスモニタリングシステム(SHM)の内容

このシステムの構成を説明します。 他の計測システムのように、構造ヘルスモニタリングシステムは3つの要素からできています:

センサ(風力発電所の監視しなければならない箇所に設置)。例えば、材料の伸びやストレスを監視する ひずみゲージ や、力、傾斜、トルクなどの計測量を測るセンサです。これには、従来の電気計測技術に基づいた革新的なセンサを使用したり、あるいは、革新的な ファイバブラッグ格子センサ(FBG) を使用できます。アプリケーションのタイプにより、センサの種類を決めます。

次に、計測エレクトロニクスがこの計測システムの2番目の要素です。計測データをデジタル化して、連続して記録する計測用アンプとデータレコーダ。光センサの場合は、これらのアンプは 「インテロゲータ」と呼ばれます。

最後の3番目の要素が ソフトウェア: これにより計測データを表示(可視化)し、様々な演算を行い必要なタイミングで報告や警報を発信します。近代的な計測ソフトウェアは、データをただ表示するだけでなく、データ解析を行い重要な判断の基になる情報を提供します。

HBM nCode GlyphWorks などの疲労耐久ソフトウェアにより、複雑な寿命予測の計算を行います。発電所のCADデータに基づいて計算する場合もあります。このソフトウェアは既に、多数の風力アプリケーションで使用されています。

電気と光学の計測技術: 2つの強力な技術の比較

前に説明したように、2つの異なる技術が構造ヘルスモニタリングシステムのセンサとして利用可能です: 光学と電気の計測技術です。

特に、ファイバブラッグ技術に基づいた光学計測技術は、風力発電所用の監視システムにとって、ここ数年間で増々重用になっています。その理由は:

名前が示すように、光センサは光を使用して計測します。このセンサは、光学ファイバのコアに作成された特別な回折格子「ファイバ・ブラッグ・グリッド」(FBG)を使用します。 光の波長が伝送されるときの変化により、物理量の特定が可能になります。

この特性をうまく使用すると、風力発電所においてファイバブラッグセンサの特長を活用できます。光センサは電気的な影響を受けないので、落雷に耐性があります。また非常に劣化しづらく、負荷サイクルが高頻度、変化が激しい計測に適しています。多重化(光回路1本とアンプモジュールとしてのインテロゲータ1台の構成で数個のセンサを使用)が可能なので、ケーブル量が大きく減少します。その上、長距離ケーブルでも光センサはほとんど情報のロスがなく、安全なデータ伝送が可能です。

これらの特長は風力発電所に利用できます。それは、高頻度の負荷サイクルと非常に大きい伸びが起こる風力タービンの計測点に計画的に配置して、ケーブル量を最小化できます。例えば、風力発電所のブレードのひずみ計測では、多数の光学ひずみセンサをわずか1本の光ケーブルに設置できます(多重化が可能)。

HBM Test&Measurement社は、ひずみ、傾斜、温度など様々な物性を計測する広範な光学FBGセンサとインテロゲータを提供します。“FiberSensing WindMETER” のフルシステムを風力発電所のオペレータ向けに推奨します。これは、特別に風力発電所でブレード(回転翼)を監視するために開発された信頼できる総合的ソリューションです。このシステムには、1セットのFBGベースのひずみセンサと温度センサ、および、耐環境型低消費電力の光・電子式インテロゲータが含まれています。

この革新的システムは永久的な電源を持ち、組み込まれた計測標準で全計測データの自動自己校正を10 ms毎に行えます。

WindMETERは多くの異なったアプリケーションに統合可能で、傾き、状態監視、荷重評価、ブレード工事の認証、振動監視、氷結検出などのソリューションをサポートします。WindMETERはカスタム設計の要望にもフレキシブルに対応できます。

ハイブリッドシステム: ベストの組合わせ

すでに述べたように、重用なのは風力発電所のブレードを監視するだけではなく、全体のパフォーマンスを考えることです。この例では、光学式計測技術で多くの計測を行うことができますが、ひずみゲージに基づいた古典的な電気センサも使用するハイブリッドシステムの使用は意味ある方式です。これには、高い信頼性、設置の容易さ、低コストなどの利点があるからです。

したがって、ベストな組み合わせができるハイブリッド方式の構造ヘルスモニタリングシステムが使用されています。例えば、電気式は塔や基礎への設置に適しています。この箇所に対しては、通常、HBMはSLBひずみゲージとKRM力センサを使用する電気ツールキットを提供しています。

これらのセンサは野外での使用に適していて、非常に容易に風力発電所の監視対象に設置できます。

さびないステンレスで作られたSLBひずみゲージは、通常のひずみゲージより、さらに設置が簡単です。SLB-700Aは、静的・動的両方の負荷の下で、負荷をモニタするのに使用されます。

KMR力ワッシャは、静的・動的な圧縮力を計測でき、特に、生産工程やネジ式接続方式に適しています。保護等級IP67であるため、屋外での計測も可能です。

また、風力発電所でよく使用されるこれらの2種類のセンサに加えて、HBMは多種多様なセンサを提供しています。何百種類ものひずみゲージに加え、様々なの精度クラスと保護等級のアンプとデータレコーダがあります。

適切なソリューションが選べるモジュールシステム

構造ヘルスモニタリングソリューションを風力発電所全体に適用するのは、複雑な作業ですが不可能ではありません。特に、計測チェーン全体に対して、計測テクノロジーをトータルソリューションとして提供するHBMのような供給者があれば、劇的に簡単になります。これは、様々なセンサのモジュールシステムと計測アンプ及びソフトウェアパッケージを、各計測課題に対して総合的に最適化できるからです。結局、ここでは、監視の目的を達成できる技術を選択することが重要で、その逆ではありません。

特に風力分野では、多くの顧客がHBMの技術専門家の設置サービスを利用しています(沖合での作業も行います)。また、全体の風力発電所の重さを計ることなどの付加サービスを提供します。この様にして、風力発電所のオペレータはHBMの包括的な計測技術に加え風力分野での豊富な実績を利用できます。結局、HBMセンサは1976年には最初のドイツの風力発電所、"GROWIAN"の開発で既に採用されていました。その当時は、だれも、風力がここまで進歩するとは予測できませんでしたが、それでも、「HBM製」がもたらした計測の結果は、この分野で信頼のあかしとなっています。

PES - Power and Energy Solutions

この記事は、PES-Power and Energy Solutionsで発表されました。

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